消えた課長

英会話学校へ戻り、課長に責められるのを覚悟の上、カナダ行きの一部始終を話した。

その課長は言ってくれた。「君にとってはとても良い話だね、頑張っておいで」と。彼は北九州支部の営業と教務全ての責任者だった。営業にはいつも怖い顔をしていたが、私たちには優しかった。あの凍り付くような朝礼を統括していたのも、課長だった。引き継ぎを済ませ、日本の友人にはまた行ってくると告げ、少ない荷物をまとめた。

両親は安心して送り出してくれた。空港へ行く途中に広島に寄り、会社で手続きを済ませ、カナダ大使館で就労ビザの面接を受けた後、再びカナダへバタバタと旅立った。

それから間もなく、元同僚からの知らせで、例の熱血課長の事を聞き耳を疑った。彼はある日を境に、無断で会社に行かなくなっていた。連絡もとれなかった。本部の人が慌てて探し、数日後にやっと発見できたそうだ。
課長不在の北九州支部は、混乱に包まれたらしい。どうやら、燃え尽き症候群で二度と会社には戻らなかったようだ。働き過ぎも考えものだ。

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