「壁ドン」の心理学

今回は、「壁ドン」の心理学ということで、
「壁ドン」という行為が何故、流行語になったのかを
行動と心理の両方から、ひもといていきましょう。

「壁ドン」とは何か?まず、確認です。


「壁ドン」とは、何を指すか。
ウィキペディアによると、

●集合住宅における壁ドン
●恋愛における壁ドン


大きくこの2つに分類されるようです。
集合住宅における壁ドンというのは、
隣の人の声やTVの音などががうるさいときに、警告する意味で
「壁をドンと叩く」ことですね。
で、今回テーマにするのは、恋愛の方です。

告白するときに相手を壁へ追いやり、腕もしくは足で囲い込む行為ですね。

こちらについて、分析していきましょう。

「壁ドン」が流行語になったのは?

実は、この恋愛における「壁ドン」と言う言葉、意外と古いのです。
2014年に、少女マンガ「L・DK」という作品の映像化によって、
市民権を得た「壁ドン」という言葉。

私も、時々セッション中に「壁ドン」という行為を行いますが、
意図的に心理的な威嚇やプレッシャーを与えるためです。
サスペンスモノのドラマや映画で、刑事役の俳優が、取り調べ中に机やいすを蹴ったり、叩いたりするアレと同じです。

心理的な揺さぶりという意味では、
壁に追いやると言う事は相手に強いプレッシャーを与えられる行為です。
逃げ場を封じる。追いつめる。
その上に、耳元で実際に大きな音が出れば、
相手に与えるプレッシャーは、より大きなものになります。


どうして「壁ドン」は流行ったのか?


ここでは、原作の少女マンガというメディアにちなんで、ヘテロセクシャル目線で分析をします。
「壁ドン」が何故、女子高生からブームとなったのか?

ここには、まず少女マンガという世界ならではのルールが一つ存在します。

「自分の好きな人に私を見てほしい」という承認欲求です。

自分が好きな相手から好かれたいというのは、片思い中に限らず、全人類共通とも言える承認欲ですが、世の中そうそう甘くはないというのも、事実です。

生物学上、♀は本来、「より優秀な♂を選ぶ」ことが生きる理由だったりします。
♂は「自分の遺伝子を一つでも多く残す」ことが最重要課題です。

そうすると、本来、「壁ドン」をするべきは「選ぶ側」の♀、つまり女性側なのですが、ブームの火付け役「L・DK」では、学校の王子的存在が主人公に「壁ドン」する描写、シーンが原作の漫画、そして実写化した映画作品で、多くの女性ファンに共感され、流行語大賞受賞する単語となりました。

他人に認められたい願望

はい、ここで重要なポイントがあります。

他人が「壁ドン」されているのを見て、喜んだ女性が多く居たからこそ、「壁ドン」というシチュエーションが注目されたわけです。

少女マンガの王道ルールをご存知でしょうか?

「主人公は、結局イケメンと結ばれる」

これは、ある一定数の女性が持つ願望でもあります。
「より優秀な♂を選ぶ」ために生きているのが♀ですから、
当然と言えば当然です。

顔面偏差値、頭脳、運動神経、そしてコミュニケーション力。

全てを兼ね備えた優秀な遺伝子を持つイケメンを選び、ハッピーエンドに持ち込むのが、少女マンガの王道ルールです。

しかし、ちょっと待ってください。
今、ココの時点で、重要なすり替えが起きています。

「より優秀な♂を選ぶ」ことが♀の人生最優先項目ですが、
自分がイケメンに「壁ドン」されたのではないのに、画面やスクリーン越しで他人が「壁ドン」されているのを見て憧れ、テンションを上げるのは何故かというと、

「相手に求められる私」だと実感したいからなのです。

好きな相手の興味関心を一身に受けているという状況。
それが「壁に追いつめられて、手足で動きを封じ込められようとされている」状況です。


お前が良い。
お前じゃないと嫌だ。
お前しかいらない。

相手から必要とされていると、目で肌で耳で強く実感したい。
それも、自分が「より優秀な理想の♂」と認定した相手に。

たとえそれが、映画のワンシーンでも、漫画の中の出来事であっても、
自分を主人公に投影することが出来るシチュエーションだから、
流行語大賞にまでなるほど支持されたわけです。
類似行為として「顎クイ」も、同じですね。

「顎をクイっと下から掬い上げられて、見つめられる」
あたかも、唇をそのまま奪われてしまうかのようなシチュエーション。

「壁ドン」にしろ、「顎クイ」にしろ、随分恋愛モノにおいての王道シチュエーションとして、定着してしましましたが、そこには「自己投影」という心理現象がからんでいたのです。

条件付きだから安心して投影できる欲

「壁ドン」という言葉が流行って、その奥に女性の自己投影現象があると気が付いたのは、以下の言葉が同時期に流行ったからです。

「ただしイケメンに限る」

つまり、「壁ドン」「顎クイ」などの行為を喜べるのは、
相手がイケメン、もしくは好きな人だったときに限る。
という条件が見えたのです。

嫌いな相手からされたなら、セクハラやパワハラとなる行為だという事。

つまり結局。

みんな、自分の理想の相手から、「お前だけだ」と自分を承認されたくて仕方がないと言う事。

それが、多くの人が持つ恋愛ファンタジーでの欲を、
とても印象的でわかりやすく再現したのが

「壁にドンと手を着かれて、逃げられないように囲い込まれる」

というシチュエーションだったわけです。

「選ばれる=魅力的」というヘンな方程式

途中でもかきましたが、
「理想の♂を選ぶ」のが、本来、生物学上の♀の本能なのに、
何故「相手に選ばれたい」のでしょうか?
自分から選んではダメなのでしょうか?

少女マンガが刷り込んでる「女性らしさ」の弊害はいくつもあるとおもうのですが、好きな男性が居る女性にとって、自分を惚れさせるように仕向けて、相手に選ばせるというのは、なかなかに腹黒い高度なテクニックだと思うのです。
多分、世の多くの女性は、そういう計算高い女性を否定するでしょう。

「あの人、ぶりっ子だし」「男の前だと態度が変わる」

でも、その一方で。自分の恋愛に関しては、心の中ではそうあって欲しいと望んでる。矛盾してますが、思い当たるでしょう?

自分から売り込む必死さよりも、想われ求められる方が幸せ。
それが、童話や少女漫画による刷り込みだと思うのです。

でも、シンデレラだって、「お城の舞踏会に行きたい!」とゴールセッティングしたから、魔法使いの手助けを受けられたわけです。

少女漫画では、ごく普通の女の子が、王子的なイケメンに何故か好かれるというストーリー展開が王道です。
この時点で、読者の恋愛ファンタジーを投影させようという作者の思惑が組み込まれている訳ですが、今のご時世、「イケメンに好かれる」努力すらしないで、棚ボタ式に好かれるには、よほどの魅力がある人です。
そして、そういう人は自然と「愛される能力」を産まれつき兼ね備えています。いかなる時も「私なんか」とかは1ミリも思わない人です。

もちろん、少女漫画の主人公もその特殊能力だけは、与えられていますので、ドジでフツーな私なくせに、「気が付くと目で追っていた」とか「なんだかほっとけない」と言う理由で、求愛されるのです。
だって、ファンタジーですから。

実は、男性の方が選ばれたい生き物

私は、すべての人は受けも攻めもできると思っています。だから、異性愛だとしても、女性が性的な主導権を持つことが起きても良いと思うし、愛されるなら、誰でもいい、という他者主体な恋愛よりも、自分が心から愛しいと思える相手との関係を深めることが重要だと思っています。

だから、王子様からの「壁ドン」を待つよりも、自ら「壁ドン」しに行くくらいの姫がいてもいいと思うのです。

男性の方が、たぶん、「壁ドン」されてキュンと来ると思いますよ。
もちろん、それまでの関係性によりますが、堕ちる確率は高いと思います。

何故なら、女性よりも男性はロマンティストで、
「自分を必要とされたい」生き物だからです。

それは、生物として「自分を遺す」という使命があるからです。

男性に選ばせる風潮というのは、責任を負わせるところもあるのかもしれませんが、それは不自然だと思うのです。

自分の遺伝子をたくさん遺すには、回数と分母を大きくしないといけません。一人に何人も子どもを産んでもらうのと、数人に一人づつ産んでもらうのは、どちらが効率良いでしょうか?

男性は必要とされたいけど、臆病で繊細さも持っています。
草食系男子と言う言葉もありますが、主導権を握りに出れない男性も増えています。

だから、どうしても深い関係になりたい相手がいるのなら、徐々に距離感を詰めて、女性から「壁ドン」や「顎クイ」してみると良いと思います。

「でも、やっぱり、向こうから来て欲しい!」
そういう姫思考なひとは、裾クイをして上目使いしてください。

もし、相手に「恋愛の勘」が備わっていたら、Goサインだと受け止めてくれるはずです。
でもうまく通じなくても、責任は取りませんので、あしからず。


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