(小説)未定②

(前に投稿したのを消してしまいました。読んでくださっている方がいたら申し訳ありません)

第二章 少年少女よ、鳴き叫べ。


思えば、夢とかそういうものに無関心になったのは、初恋を経験してからだった。

帰ってからもなんだか落ち着かなかった私は、無意識にあの頃の思い出の、その重い蓋を開けていた。

毎日のように書いたラブレター。諦めの言葉を並べながらも、願っていれば叶わない恋なんてないんだと、心のどこかで信じていた。
…痛い、痛すぎる。黒歴史のオンパレードに苦笑いを浮かべながら、また次の手紙を読み始める。


「…ほう。それでその初恋の彼とは?」
「まさか。盛大に振られて終わりましたよ」
「誰にでもあるんですね、そういう青春、黒歴史」
「先輩もですか?」
「聞きます?長いよー」
「…遠慮します」

青春。
黒歴史。
最近は縁のないような言葉達に懐かしさを覚えながら、話を続ける。


振られた日に書いた手紙。それが最後の手紙だった。
恋の終止符を打つように、最後に一言、こう書かれていた。

「あなたが、私の青春でした」

その恋はあの頃の私にとって、紛れもなく青春だった。
黒くも痛くもなく、鮮やかな現実だったんだ。

覚えているようで、忘れていた。

初めて、大人になったことが、諦めを覚えたことが
哀しいと思った。

今、ソラにとって音楽が”青春“だとしたら。
いつか忘れてしまっても、いつか諦めてしまっても。
鮮やかなうちに、それを思い切り追わせてあげないと

正体不明の使命感があった。


その日布団に入ってから、考えることは沢山あった。

明日から、ソラは塾に来ないのだろうか。
もう、諦めてしまったのだろうか。
だとしたら…それは私のせいだ。

一つ深いため息をついた。

夏。静寂の夜。
その中に響く蝉の声。
短い命を、無意味と思われる人生を、懸命に鳴き続ける。
そして、確かな何かを手に入れる。
他の物とは替え難い何かを。他の者には得られない何かを。

…ソラは明日もきっと来る。
私はそう確信した。