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レコードレーベルあれこれ~個人研究のまとめと疑問点~第11回

LPレコード登場までの歴史

アナログ・レコードの中心部にある丸いレーベル。
そこにはいろいろな情報が詰め込まれている。

1877年にトーマス・エジソンが錫箔円筒蓄音機を発明し、フォノグラフ(Phonograph)と命名しました。これがレコードの歴史の始まりとなります(参考:トヨタ産業技術記念館)。

当初は円筒式蓄音機であったが、1887年にエミール・ベルリナーにより円盤式蓄音機へと改良され、グラモフォン(Grammophon)と命名。

1895年にはグラモフォンの製造・販売のためにベルリーナ・グラモフォン社が設立される。この会社を母体にビクタートーキングマシン社が出来る。後にRCAビクターとなり、統廃合の末、現在はソニー・ミュージックエンタテインメント傘下になっています。

また、1897年にヨーロッパ進出のために英グラモフォンを設立。こちらも統廃合の末にEMIという大きなレコード会社に成長。現在、レコード部門はユニバーサルが買収したのちに一部をワーナーへ売却されています。

戦前における欧米の三大メジャーレコード会社はビクター、コロムビア、ポリドール(ドイツグラモフォン)であった(生明俊雄「昭和初期における欧米メジャーの本格的攻勢と日本のレコード産業の発展」)。ちなみに2020年現在の欧米の三大メジャーレーベルは、EMIを吸収したユニバーサルミュージック(世界の音楽市場の売上高41%)、ソニー・ミュージックエンタテインメント(28%)、ワーナー・ミュージック・グループ(16%)となる。戦前のビクター、コロムビアがソニーに、ポリドールがユニバーサルに、ワーナーは戦後参入で、各々が吸収や分裂を繰り返して発展し、巨大化グループ化した。

当初、円盤レコードは製品により回転数が異なったようだが、定速回転できる電気式の蓄音機が登場して、1分間に78回転するものが主流となっていった。日本では後にSP(Standard PlayingまたはStandard Play)レコードと呼ばれる盤のことです。日本でそのSPレコードが発売されはじめたのは1910(明治43)年。当初は片面録音が主流であったが、オデオン社が1904年にに両面盤を発売したのを機に、両面盤に取って代わられる(三浦敬吾「SPレコードと録音」 早稲田大学図書館紀要)。しかし、片面の収録時間が3分程度であったため、クラシックの交響曲などは何枚にも跨いでの収録となったようです。出来るだけ片面に長時間の収録が可能な盤の登場背景にはこうしたことも理由のひとつにはあったのでしょう。

LP(Long Playing Record)レコードの登場は、1948年に米CBSレコードによって初めて商品化されました。

世界で最初に商品化されたLPは、ルーノ・ワルター指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック演奏によるメンデルスゾーン作曲「バイオリン協奏曲ホ短調」(ML4001)。(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs)

CBSレコードの元は、コロムビア・レコードで、1888 年 ノース・アメリカン・フォノグラフの子会社「コロムビア・フォノグラフ」として創立された。しかし、1894 年には親会社であるノース・アメリカン・フォノグラフが破産して独立。
1897年 にはイギリス法人「英コロムビア(後のEMI)」を設立し、1906年 には社名をコロムビア・グラフォフォンと改称した。1927年 放送局「CBS(Columbia Broadcasting System)」を設立するも、1938年には子会社であったCBSに買収され、社名もCBSレコードとなりました。その後も「コロムビア」という名前はレーベル名としては存続します。

日本国内で「コロムビア」のレーベルが配給されたのは、1927年の日本蓄音器商会(1910年設立)と提携した時からだとされる。日本で最初のレコード会社である日本蓄音器商会が日本コロムビアへと改称したのは1946年、戦後間もない頃のこと。

1951年3月に国産初の洋盤LP(ベートーベンの交響曲第9 番、品番がWL 5001、参考:日本コロムビアサイト)を発売したのも日本コロムビアであり、1953年には国産初の邦盤LP(芳村伊十郎『越後獅子』、BL5001 )も発売しています。

日本コロムビアのホームページにある国産初のLPの写真(前掲参考:日本コロムビアサイト)を見ると、ブルーのレーベルであることが判ります。なかなか現物を入手出来ないので、近い品番のものを入手してみました(やっと自給の画像で紹介できる…)。

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Ezio Pinza, Basso and Chorus Of The Metropolian Opera Association with orchestra condacted by  Emil Cooper『Ezio Pinza In Scenes From Boris Godounov(Mussorgsky)』(WL5004)

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ジャケ裏の解説はまだ翻訳されずにオリジナル(US盤ML4115、1949年発売)同様に英文のまま(参考:Discogs)。品番だけが国内で割り振られた番号に入れ替わっています。

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後年では裏ジャケに日本語で解説文が掲載されるようになりますが、当初は解説用の冊子が差し込まれていたようです。

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恐らく国内初の盤のレーベルもこれと同じデザインでしょう。地はブルーでシルバ―の文字、内側の円の中に“Masterworks”の文字があります。俗に「マスターワークスシリーズ」と呼ばれ、SPレコード時代から続いていたようです。US盤にある品番のMLは、"Masterworks Long play"から来ているのではという推測もされているようです。(参考:Columbia Masterworks Analog Discs)そして、最下段のリム沿いに“Made By Nippon Columbia Co., Kawasaki, Japan”の記述。間違いなく国内盤です。

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驚いたことは、この当時のLP盤は10インチ(25センチ)だと思い込んでいましたが、入手した盤が12インチ(30センチ)だったということ。日本コロムビアサイトに載っている盤もサイズ感からすれば12インチのように見受けられます。

さらに日本コロムビアサイトでは “1951年3月に4作品発売されたうちの2作品が現存” との記述があり、WL5001~5004番がそれに該当するのであれば、私が入手したこの盤は日本コロムビアサイトに載っていない残り2作品のうちのひとつということになります(あくまでも推測ですけど)。

次回も日本コロムビアのLPに使われたレーベルを確認していきたいと思います。

(第11回完)