レコードレーベルあれこれ~個人研究のまとめと疑問点~第16回
ちょっと変わった“6eyes” レーベルデザイン
アナログ・レコードの中心部にある丸いレーベル。
そこにはいろいろな情報が詰め込まれている。
前回は“6eyes” のレーベルデザインについて、ステレオ仕様、モノラル仕様のデザイン違い、ポップスジャンルの赤地、クラシックジャンルのグレー地で見て参りました。今回はちょっと変わった“6eyes” のレーベルデザインを見ていきましょう。
『Stereophonic Recording - Demonstration Test Record』 (TD-5001)
まずは日本コロムビアのステレオ普及に伴う試聴盤に見られた青地(シアンブルー)の“6eyes”です。この試聴盤のサイズは12インチ。このカラーリングはこの試聴盤以外では見かけたことがありません。上部には“Masterworks”の文字も入っています。米国でのステレオ試聴盤も同じなのか探ってみた。
『Columbia Stereophonic Phonograph Demonstration Record』(CPSF-1)(参考:Discogs、レーベル面参考:表-Discogs、裏-Discogs)
上記のレーベル面参考のリンク画像によれば、表面は通常のステレオ仕様と同じ黒赤地のものなのですが、何故か裏面がモノラル仕様の赤地のものが使われています。疑問ばかりでもう悩ましい限りです。
ステレオ普及に伴う視聴盤ということで、ステレオ盤の発売時期についても少し調べてみました。
日本で最初にステレオ盤の発売をしたのは日本ビクターで、1958年8月のこと。日本コロムビアはそれより1ヶ月半遅い9月にステレオ盤の第1回目の販売を行っています。(参考:Twice Told Records)
プロコフィエフ交響曲第5番 オーマンディ/フィラデルフィ(RS-101)
グローフェ「グランドキャニオン」 オーマンディ/フィラデルフィア(RS-102)
レスピーギ「ローマの泉、ローマの松」オーマンディ/フィラデルフィア(RS-103)
Wikipediaの“日本コロムビア”注釈項には「この時から、米コロムビア原盤を発売する時は、同原盤の発売レーベル名がCBSに変わるまで、12インチ (30 cm) 及び10インチ (25 cm) のステレオ盤のみ、米コロムビアと同様に、6つ目デザインのレーベルが使用される。」と記述があります。この文章が何をもとに記載されているのかは不明ですが、ステレオ盤のみに“6eyes”が使われたとすると、前回(第15回)モノラル盤デザインを米盤で紹介した理由がここにつながります(参考:Wikipedia、注釈9)。
第13回では、The Brothers Fourのレーベルデザインが“6eyes”から先祖返りする疑問が生じましたが、あれはモノラル盤だったからだと言う考え方が出来ます。
そして品番の「RS」や「YS」、「ZS」に付く「S」の字はステレオ盤に振られるものなのかもしれません。
『Stereophonic Recording - Demonstration Test Record』 (TD-3001)
こちらも日本コロムビアの試聴盤。デザインの基本形は“6eyes”のモノラル仕様に近い感じがしますが、ステレオの音響テストをする盤です。何故か肝心のCBSeyeが配置されていません。サイズは10インチ。私の手元にあるのは、黄地仕様ですが、白地仕様のものも出回っています。
余談ですが、12インチ、10インチとテスト盤を見てきましたので、7インチも一応見てみましょう。
『Stereophonic Recording - Demonstration Test Record』 (TD-105)
ジャケットは上記2点とほぼ同じデザインで、TD品番であることも同じ。同時期のものであると推測しています。
もはや“6eyes”とは関係なく、赤地にシルバーの文字のデザインはドーナツ盤のものから横線2本を取った感じです。察するに、米本国においても7インチ盤に“6eyes”が用いられることはなかったのではないでしょうか。
ここまで“6eyes”を見るといいつつも、ステレオ試聴盤の検証にスペースを費やしてしまいました。
では、次に米本国でのデモ盤での“6eyes”を見ていきましょう。
Bruno Walter, The Philharmonic-Symphony Orchestra Of New York『Brahms : Symphony No. 3 In F Major, Op. 90 / Academic Festival Overture, Op. 80 / Hungarian Dances』 (ML-5126)
1956年に発売されたMasterworksのアルバムのデモ盤(プロモ盤、見本盤、試聴盤、サンプル盤など呼び方は様々)で、白地にグレー文字という仕様。アルバムタイトルの上部分に「DEMONSTRATION」の文字、中央右には「NOT FOR SALE(非売品)」の文字が確認出来ます。不思議なことにSIDE表示がなく、どちらが表面なのか分かりにくいです。実売の盤のレーベル(レーベル面参考:Discogs)と比べてみると文字配列が異なるので、別の印刷版を作成していることがわかります。この盤はモノなので全面白地がベースなのはうなずけます。では、ステレオのデモ盤のレーベルはどうなのでしょうか。
1959年発売のRudolf Serkin, The Marlboro Festival Orchestra* Conducted By Alexander Schneider『Mozart : Piano Concerto No. 20 In D Minor / Piano Concerto No. 11 In F Major』(MS-6049)のデモ盤(レーベル面参考:Discogs)を見ると実売同様のカラーリングになっていることがわかります。
Otto Cesana His Chorus And Sextet『Voices Of Venus』(CL-971)
1957年に発売されたポップスジャンルのアルバムを見てみると、デモ盤のカラーリングが白地に赤文字という仕様になっています。「DEMONSTRATION」、「NOT FOR SALE(非売品)」の文字の位置はMasterworksのデモ盤とほぼ同じだということが確認出来ます。これもモノなのですが、ステレオのカラーリングの参考レーベルを見つけることが出来ませんでした。また、見つけた際にはリンクを貼っておきます(出来れば入手したいものですが…)。
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(追記)
『Columbia Retailer: Volume 1, Number 3』(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs)
これはおそらく販促品の盤なのだと思いますが、6eyesレーベルの別種をみつけましたので、ご紹介。レーベル面参考のリンクを見てください。こんなのも見つかったりするからレーベルデザイン探索も奥深く面白い。
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次にカナダのColumbiaから発売された盤を見てみましょう。
The Philadelphia Orchestra, Eugen Ormandy, conductor『Tchaikovsky:Symphony No.6 in B minor “Pathetique”』(MS-6160)
まずはステレオ盤。カナダのクラシックジャンルは青地にシルバー文字というカラーリング。上部両サイドに伸びる矢印の真ん中には「CBS」の文字が確認でき、これは米盤にはないものです。
Masterworksの文字は下部「COLUMBIA」ロゴの下に配置。米盤でもこの位置にMasterworksの文字があるものを見かけたことがあります(レーベル面参考:Discogs)。
Ivan Davis『Playing Piano Works Of Liszt』(ML-5622)
1961年に発売されましたカナダColumbiaのモノ盤を入手いたしました。青地にシルバー文字でほとんど米盤と同様のデザインです。
Anita Bryant『Kisses Sweeter Than Wine』(CL-1719)
1961年、カナダのポップスジャンルはえんじ色の地にシルバー文字で、こちらはモノ盤のデザイン。そしてこのジャンルのステレオ盤が入手出来なかったので、参考資料として下記サイトをあげておきます。
Anita Bryant『Kisses Sweeter Than Wine』(CS-8519)(レーベル面参考:Discogs)
同じアーティストの同じ品名でモノ盤とステレオ盤が存在しているんですね。この参考のレーベルの上部矢印部分には「CBS」の文字が見当たりません。なにが正解なのかはわからなくなります。
そしてここからは余談ですが、せっかくカナダColumbiaのLPのレーベルデザインを見てきましたので、シングル盤のレーベルデザインの参考をあげておきます。
Doris Day「Lover Come Back / Falling」(4-42295)(レーベル面参考:Discogs)
ポップスジャンルのえんじ色の地にシルバー文字のレーベルデザインです。リンクの画像を見ていただくとお分かりの通り、“4eyes” です。米盤シングルのデザインは「COLUMBIA」ロゴの横にCBSeyeが1つだけです(レーベル面参考:Discogs)。この“4eyes” はカナダだけのデザインだったのかもしれません。引き続き調べていくことといたします。
では次にスウェーデンの“6eyes” デザインを見てみましょう。
Duke Ellington's Spacemen『The Cosmic Scene』(CL-1198)
Duke Ellingtonが1958年に米Columbiaから発売されたこの名義唯一のアルバムです。Samsonはスウェーデンのレコード会社で、配給に伴い「COLUMBIA」のロゴ使用が許諾されずに6eysレーベルデザインのままロゴ差し替え(米盤のロゴの上に重ねて刷っていると推察)で販売することなったようです。故にレーベル下部のクレジットにある「Columbia」の文字やジャケにあったもロゴまでもが黒塗りされています。
(※日本における「COLUMBIA」の使用における権利も複雑で、後日CBSソニーの回でお話ししたいと思っています。)
まだまだ他にもこうしたバリーションが存在しそうですが、“6eyes” 絡みのお話は一旦ここまで。
次回の資料集めも苦労しそうですが、頑張って更新いたしますのでお付き合いください。
では、ばいばーい👋
(第16回完)