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レコードレーベルあれこれ~個人研究のまとめと疑問点~第13回

日本コロムビア発売の洋楽(クラシック、ジャズ含む)LP 盤レーベル変遷(その2)

アナログ・レコードの中心部にある丸いレーベル。
そこにはいろいろな情報が詰め込まれている。

前回では日本で初めてのLP盤以降のMasterworksのZL品番、本国アメリカでのMasterworks盤の色違いなどを見て参りました。
今回はLP盤登場初期の日本コロムビアMasterworks盤以外のレーベルデザインから始めてみたいと思います。

現在手元にあるのはXL品番。入手した時点でジャケも盤もボロボロ状態。

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Herbert Von Karajan Conducting The Vienna Philharmonic Orchestra『Beethoven Symphony No.5 in C Minor』(XL 5011)

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サイズは12インチ仕様。レーベルは、ブルー地にシルバー文字と言う点ではWL品番のMasterworksと変わらないが、地色は少しダークなブルー。内側の円は溝として存在しているもののデザインとしての色は入れられていません。この溝はDG(Deep Groove)というもので、スタンパーの技術的な原因でプレス時についた深い溝らしいです。よく中古レコード屋さんの値札に「DGあり」というコメントを見掛けることがあります。
センターより上段の平行線枠内にまっすぐに「COLUMBIA」の文字と筆記体での「Long Playing Microgroove」の表記、上部にツインノールのロゴマークも大きめに配置というデザインになっています。このレーベルデザインは米本国で使われていたのでしょうか。

いろいろと探ってみたところ、このレーベルデザインは米コロムビアではなく、英コロムビアのものではないかと思います。

Beethoven『Trio No. 5 In D Major Op. 70, No. 1 / Fantasia In G Minor, Op. 77 / Sonata No. 24 In F Sharp Major, Op. 78』(33CX1043)(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs

参考のリンクを見ていただければ一目瞭然のように、ジャケットのデザインも、レーベルデザインも同じです。英コロムビアはこの参考の盤が発売された1954年には既に英グラモフォン(HMV)と合併(1931年)してEMI(Electric and Musical Industries Ltd)になっていました。つまり、日本コロムビアはこの時点で、英EMIの配給も行っていたということになります。

次に、少し年代が飛びますが、1961年に国内発売された盤を見てみましょう。

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The Brothers Four『B.M.O.C. (Best Music On/Off Campus)』(YS 155)

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1960年に「Greenfields」が全米2位のヒットを持つ米フォークグループ。本国と同年の1961年に日本国内でも発売され、邦題は『魅力のグループ』。サイズは12インチ。レーベルデザインは通称 “6eyes(六つ目)” と言われるもので、本国とほぼ同じ仕様(レーベル面参考:Discogs)。ところが、気になるのは翌1962年に発売された同グループの国内盤です。

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The Brothers Four『Song Book』(SL 1083)

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本国では1961年に発売(参考:Discogs)だが、日本コロムビアが国内配給をしたのは翌62年。サイズは12インチ。レーベルもオリジナルの赤地 “6eyes” (レーベル面参考:Discogs)ではなく、一世代前の赤茶地のものが使用されています。Masterworksの文字がないだけで前回紹介したBenny Goodman『The Great Benny Goodman』とほぼ同じようなデザインです。
何故 “6eyes” ではなく、先祖返りのデザインが用いられているのでしょうか?不思議です。

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畠山みどり『畠山みどりは言いました』(AL 416)

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同じ1962年の発売ですが、国内アーティストのレーベルは微妙に異なっています。サイズも10インチ。赤茶地にシルバー文字、DGにもシルバーが入っている。 LPマーク, 2連16分音符マークが「LONG PLAYING」の間から抜け出て、上部の「COLUMBIA」の下、DG内の位置に移動している。センターホール付近も盛り上がりがあり、権利文も短いので雰囲気が違って見えます。

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Mitch Miller『The Best Of Mitch Miller』(YS 293)

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こちらは更に翌年の1963年の盤。もはや “6eyes” デザインでも赤茶地のデザインでもなく、オレンジ地にCBSのロゴがセンターに位置する新デザインが採用されています。“Columbia” のロゴではなく、“CBS” のロゴというのがミソです。米本国ではこのレーベルデザインは使われていないようで、イギリスを始めとするヨーロッパ各地やオーストラリアではこのデザインがつかわれているのを確認しました。

Bob Dylan『Bob Dylan』(BPG 62022)(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs

1962年のBob Dylanのデビュー、英国盤。レーベル面参考のリンクを見ていただければ一目瞭然。

英コロンビアがいつ頃からこのデザインを使い始めたのか探ってみたところ、1955年に米Capitolの買収が完了した際に米Columbiaとの業務提携を打ち切っており、蘭Philips経由で英国で配給されていたようです。つまりしばらくの間、英国では “Columbia” のロゴを冠したレーベルでの発売はなかったのかもしれません。

Leonard Bernstein『Shostakovich : Piano Concerto No.2 / Ravel : Piano Concerto In G Major』(BRG 72170)(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs

このLeonard Bernsteinの英国盤のレーベル面参考リンクからすると1959年には “CBS” のロゴを冠したレーベルデザインを確認できます(ちょっと写真がボケてて字がよく見えませんけど…)。そして、クラシックのジャンルはオレンジ地ではなく、ブルー(というよりはシアン)地だと言うことがわかります。

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Leonard Bernstein『Beethoven Symphony No. 6 In F Major, Op. 68 “Pastoral”』(OS 320)

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1964年発売された日本コロムビアの盤でもクラシックはブルー地でした。この後、米CBSが日本の家電メーカであるソニーとの合弁会社であるCBSソニーレコード株式会社を登場させるまで、洋楽やクラシックの部門ではこのデザインは継続されます。

今回 “6eyes” については深く掘り下げずにサラリと流しましたが、別項にてじっくりと見ていきたいと思います。また、CBSソニーについては日本コロムビアの章が済んだ後に見ていきたいと考えています。

今回はこれにて!

(第13回完)