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レコードレーベルあれこれ~個人研究のまとめと疑問点~第17回

日本コロムビアでは使用されなかった “2eyes” レーベルデザインとその周辺

アナログ・レコードの中心部にある丸いレーベル。
そこにはいろいろな情報が詰め込まれている。

米本国のCBSは “6eyes”の後にレーベルの左右にCBS Eyeを配置する “2eyes”デザインへ移行しています。登場時期は1962年6月と言われ、品番のCL-1820/CS-8620以降だともまで調べがついているようです。(参考:Columbia Main Series, Part 14:CL 1800-1899/CS 8600-8699 (1962)

CBS Eyeそのものも“6eyes” と “2eyes” ではデザインが変わっています。

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目の部分にあたる同心円がどんどん増えています。

では、私の手持ちの盤でレーベルデザインを確認してみましょう。

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Ray Conniff & Billy Butterfield『Just Kiddin’ Around』(CS-8822)

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ちなみに品番のCLとCSの違いは裏ジャケの上部に説明がありました。

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ポップスジャンルは“6eyes”時代同様に赤地がベースで、モノラル盤もステレオ盤も「COLUMBIA」の文字は白抜き文字で上部に位置します。そして、CBS Eyeも白抜き、正向きで正方形枠に納められて左右に置かれています。
品番以外に下部に書かれた内容でモノラル盤とステレオ盤の違いがわかります。上掲の画像見ればわかりますよね。「STEREO」の文字の左右に「“360 SOUND”」と矢印が配置されています。

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The Philadelphia Orchestra, Eugene Ormandy, Conductor『Rachmaninoff : The Bells / Isle Of The Dead』(ML-5043)

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クラシックジャンルのグレー地は“6eyes”時代を踏襲しており、上段、中段のデザインはポップスジャンルと同じ。ただし、Masterworksの文字は「COLUMBIA」ロゴの下に配置。
下段にある「GUARANTEED HIGH FIDELITY」の文言が入ったものがモノラル盤ということになります。
他にも上掲ステレオ盤レーベルデザインの「STEREO」の文字が「MONO」に差し替わっただけで左右には「“360 SOUND”」と矢印があるパターンもあります(レーベル面参考:Discogs)。

この盤は1955年に米Columbiaで発売されたものの再発された盤で、原盤がモノラルだから必然的にモノラルでの発売になるのだが、この頃にはステレオ再生機の普及もあってかモノラル盤の数が少ないように思えます。

そして、この “2eyes” のレーベルデザインは日本コロムビアでは使われなかったようで、 “6eyes” のあとは、拙稿第13回で紹介させていただいたオレンジ地(ポップスジャンル、クラシックは青地)にCBSのロゴがセンターに位置する新デザインが採用されています。そしてCBSソニーレコード株式会社が登場する1968年3月まで、洋楽やクラシックの部門ではこのレーベルデザインが使われ続けます。

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しかし、その期間中に幾つか矢印をモチーフにしたレーベルデザインが登場します。

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Richard Kraus conducting The Orchestra of the Municipal Opera, Berlin,Hildegard Hillebrecht, sop. Hans Beirer, ten. Theo Zilliken, bar.『Wagner : Tannhauser Highlight』(OS-3361)

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特徴のひとつは「CBS」のマークを配さずに「COLUMBIA」の名称を使っていることが挙げられます。
この左右に広がる矢印はステレオを意味していると思われるので、多分モノ盤には存在しないと推測しています。
ジャケットの上部にある「STEREO」の文字のところにも矢印がコラージュされていますよね。線が細いですが色分けもレーベル同様に赤と青の矢印になっています。
主流デザインではなく、この矢印デザインが使われたのは何故なのでしょうか?
CBSのロゴがセンターに位置するレーベルデザインが登場したと推測される1962年に、この矢印デザインも登場しているのが確認できました。

Debussy*, Gyorgy Sebok『Images (Première Serie) / Suite Bergamasque / Estampes(OS-3303)(レーベル面参考:Discogs)。

OS品番の3000番台にはみかけないが3300~3400番台で登場か?
(OS-3471)でも確認できたが、(OS-702-N)(OS-823-R)(OS-835-R)(OS-836-S)(OS-980-N)も黒地の矢印レーベルでした。

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Jean-Pierre Rampal, Flute/Trio Pasquier『Mozart ; Four Quartets For Flute And Strings』(OS-562-AM)

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そしてクラシックジャンルでも黒地と青地が存在しており、この区別の基準はなんだろうか?
青地に矢印のデザインは文字、矢印がシルバー単色でやや味気ない。「COLUMBIA」の下に「disqucs BAM」のマークがあるが、これはフランスのBAMレコードの音源を日本コロムビアが配給したという意味なのだろうか?それについての権利文は見つからない。
また、品番末尾の「AM」「N」「R」「S」は何を差しているのでしょう?

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Armando Pontier Y Su Orquesta Tipica『Pontier En Japon』(YS-742-N)

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こちらはポップスジャンルと判断していいのかタンゴのレコードで、YS品番で末尾には「N」が付いている。
赤地というよりは朱色地のような感じ。矢印やロゴ、権利文は黒地と同じですが、タイトルや曲名、品番などは黒文字が使われています。
タイトルからも想像できる通り、日本独自の企画編集盤のようです。推測すれば、この矢印デザインが用いられるのは“日本企画の洋盤コンピもの”、“CBS以外の海外レコード会社の原盤配給”と考えられないでしょうかか。

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Jean-Francois Paillard conducting Jean-Francois Paillard Chamber Orchestra『W. A. Mozart, Concerto in C Major For Flute. Harp And Orchestra. K.299 / Concerto in A Major For Clarinet And Orchestra. K.622』(DX-1-R)

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そして、1964年6月に発売された“コロムビア・デラックス・シリーズ”と銘打って出された第1弾作品がこちら。豪華な箱入りで、布張りのゲートフォールド、44ページの別冊解説と楽譜、ゴールド地のレコードレーベルという仕様。“COLUMBIA”ロゴの下に“Erato”のロゴがあります。フランスのレコード会社のようです(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs)。
翌年にはOS-420-Rの品番でリイシューされているようです(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs)。
また、1971年にはビクター音楽産業にEratoレコード配給権が移った(品番:ERA-2006、参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs)ようでが、翌72年には再び日本コロムビアからOS-2725-REの品番でリイシューされています(参考:DiscogsSnow Record)。怒涛のリンク提示で申しわけありません(笑)

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Eugene Ormandy conducting The Philadelphia Orchestra『Beethoven, Symphony No.9 In D Minor, Op.125』(DX-9-C)

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同シリーズでもCBSのロゴをセンターに配置する通常デザインのゴールド地仕様も存在し、ロゴが青になっている。この盤の発売は1967年11月で私が入手したものには箱は付属していませんでしたが、ジャケットの装丁は同じ作りでした。

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Various Artists『Latin De Luxe』(XS-2-C)

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さて、こちらは“コロムビア・デラックス・シリーズ”ではなく、1966年に発売された“カラー・デラックス・シリーズ”でセンターのCBSロゴは赤になっています。ジャケットの作りはしっかりしていますが、クラシックのシリーズのような厳かさはありません。
上の2つのCBSロゴをセンターに配した青、赤のパターン共に品番の末尾は「C」なので、これは「CBS」の「C」なのかもしれないですね。
となると、「N」は日本企画のもの、「AM」はdisqucs BAMの後ろの2文字、「R」はEratoの2文字目なんて推測したりもしましたが何の確証もないですね(汗)

話がゴールド地レーベルや番号の末尾アルファベットの方に逸れてしまいましたね。先に紹介した矢印デザインもCBSとの契約が切れた1968年以降には登場するのだろうか?CBS以外の海外レーベルとは引き続き契約が続いていれば存在した可能性もありますね。引き続き調べてみる価値はありそうです。

そしてOS品番の3000番台を調べていたらこんなのも見つけちゃいました。

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Otto Klemperer conducting Philharmonia Orchestra『Richard Strauss Death And Transfiguration / Metamorphosen』(OS-3317)

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イギリス、オーストラリアのColumbiaも同じデザインのレーベルを使用しているので日本独自のものではなさそうです。そして、このレーベルデザインは米国では使用されていません。第13回でも述べましたが、英コロムビアは1954年に英グラモフォン(HMV)と合併(1931年)してEMI(Electric and Musical Industries Ltd)になっており、米CBSの子会社ではありませんでした。CBSのカタログはPhilips経由で英国で配給というややこしい状況なのです。
この網目デザインのレーベルは英columbia SAX-2200番台、1957年頃近辺に存在していたことが確認できています。この英columbiaがEMI配下なのかCBS配下なのか、いまいちまだ理解が追いついていないのが情けないです。

Rossini, Alceo Galliera Conducting The Philharmonia Orchestra『The Barber Of Seville』(SAX 2266-2268)(レーベル面参考:Discogs

Moussorgsky - Ravel, Herbert Von Karajan, Philharmonia Orchestra 『Pictures At An Exhibition』(SAX 2261)(レーベル面参考:Discogs
Richard Strauss - Elisabeth Schwarzkopf, Otto Edelmann, Christa Ludwig, Teresa Stich Randall, Eberhard Waechter • Philharmonia Orchestra, Herbert Von Karajan –『Der Rosenkavalier』(SAX 2269/2272)(レーベル面参考:Discogs

また話が逸れてしまいました。
次回は日本コロムビアにおける邦楽盤レーベルデザインを見ていきたいと思います。

(第17回完)