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レコードレーベルあれこれ~個人研究のまとめと疑問点~第12回

日本コロムビア発売の洋楽(クラシック、ジャズ含む)LP 盤レーベル変遷

アナログ・レコードの中心部にある丸いレーベル。
そこにはいろいろな情報が詰め込まれている。

前回は、1951年に国産初の洋盤LPが発売された同時期のレーベルデザインについての確認までを論考させていただきました。今回はそれ以降の日本コロムビアにおける洋盤LPのレーベルデザインを探っていきたいと思います。

前回のWL5004品盤のマスターワークはブルー地にシルバー文字のものでしたが、今回紹介するのはZL品盤。

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The Philadelphia Orchestra, Eugene Ormandy, Conductor『Beethoven Symphony No.5 in  C Minor Op.67』(ZL26)

LPのサイズは10インチ。12インチ盤が出る前のUS盤カタログを年数遅れで国内流通させる関係なのだろうか?
この盤の発売年を調べているのですが、どこにもクレジットがなく、資料も当たれていません。また、分かり次第お知らせしたいと思います。

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クリーム色の地にエンジの文字。最下段のリム沿いの記述は“Licensed By Columbia Records U.S.A. All Right Reserved. Made By Nippon Columbia Co., LTD, Japan”とWL品番の頃より長くなっています。

また、“Columbia”, “Masterwaorks”, LPマーク, 2連16分音符マークは商標登録されている旨の記述も内リム沿いに記述されています。これが後々、ややこしいことになるのですが、それはまた別の項で取り上げたいと思います。

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Benny Goodman『The Great Benny Goodman』(ZL1027)

続いてこちらは1959年に発売された8曲入り10インチ編集盤。米国で1956年に発売された同名アルバム(CL820)は11曲構成でジャケも選曲も異なる内容でした(参考:Discogs)。

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ジャンルがジャズになるとエンジ色にシルバーの文字なのでしょうか。色が異なるだけでクリーム地とほぼ同じ仕様で、品番下のサイド番号に「Side」表記が付いたくらいですね。
先程紹介しました米国の同名アルバム(CL820)のレーベルを見てみると赤地の6eyesと呼ばれるデザインです(レーベル参考:Discogs)。この日本盤より3年前の時点で既に本国ではデザイン変更が行われているということです。しかもMasterworksの文字は入っていません。では、それ以前の時期のジャズのレコードで本国アメリカにおいてもエンジ色のMasterworksは存在していたのでしょうか?
ネットで調べてみると、この同じデザインでは青地、緑地、クリーム地のMasterworksは確認できましたが、このエンジ色のMasterworksは見つけられませんでしたので、日本でのみではないかと推測されます。

米盤ですが緑地のMasterworksのレーベルのものを入手しましたので、見てみましょう。

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Jane Powell『Date With Jane Powell』(ML2045)

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1949年発売の10インチLP盤。ジェーン・パウエルは1940年代の半ば頃から人気があったミュージカル女優で、ジャンルで言えば、ポップスかジャズ。この緑地はSPレコード時代のカラーリングをLPレコードでも継承したと考えられます。前回に紹介した世界で最初のLPレコードはクラシックだったので、青地という区別でしょうか(追記:どちらが表面かを示すSide表記がありません)。

その後も調査を続けていると、なんと米盤に黒地のMasterworksのレーベルがあることを発見。入手してみたところ、これまた悩ましい問題が浮上しました。

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Benny Goodman『Benny Goodman Combos』(GL500)

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発売は1951年。品番が「ML」ではなく「GL」になっています。Masterworksの文字も確認でできます。しかし、この『Benny Goodman Combos』にはMasterworksの文字が入っていない同じGL500の品番を冠した黒地のレーベルも存在しているのです(一度ヤフオクで見かけました)。一体どういうことなのか?

参考までに周辺品番を調べてみました。

Benny Goodman And His Orchestra『The Golden Era Series Presents Benny Goodman And His Orchestra』(GL501)(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs

John Kirby And His Orchestra『John Kirby And His Orchestra』(GL502)(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs

Bessie Smith With Louis Armstrong『The Bessie Smith Story Volume 1』(GL503)(参考:Discogs、レーベル面参考:Discogs

GL499の盤は存在せず、どうやら500番から始まるものが12インチ盤の品番始めで、10インチ盤の品番始めは100番からのようです(参考サイト:Columbia Label Overview)。そして、黒地のGL品番のレーベルにMasterworksの文字が入っているのは500盤だけではないのか、という推論に達しました。

しかし、悩ましいことはこれだけではなく、『Benny Goodman Combos』にはジャケの色違いが存在し(参考:Discogs)レーベルは赤地(参考:Discogs)。さらには品番がCL500盤(レーベル面参考:Discogs)までもが存在しています。先程の推論でGL品番はMasterworks専用品番ではないと考えましたが、では一般レーベルのCL品番との区別は何なのか?
どうして同じ内容のレコードが品盤違い、ジャケ色違いで発売されているのか?
疑問が尽きない。

今回、日本で最初のLPレコードを調べた際、その盤がMasterworksシリーズであったため、その流れで追っていますが、このMasterworksシリーズは1924年に米コロムビア内のレーベルのひとつとしてスタートしました。時代的にもSPレコードの時代ですね。普通のコロムビアレーベルとの差別化は何だったのでしょうか?
英語版Wikipediaをうまく訳しきれないのですが、当初は録音技術が違っていたようだと解釈しました。
当初、Masterworksシリーズで扱っていたジャンルはクラシック音楽だけのようで、メインストリーム(ポピュラーミュージック)のレーベルではなかったようです。しかし、後年にはクラシック音楽だけに留まらず、サウンドトラックやジャズなどのジャンルにまでMasterworksを冠する盤が広がっていったようです。1980年にはCBS Masterworks Recordsに改名し、Columbiaのレーベルから切り離されました。 その後、1990年にCBS Recordsをソニー株式会社に売却し、Sony Masterworksへと改名されています。

さて、長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。今回はここまで。次回は日本コロムビアでのMasterworksの続きと、Masterworks以外の日本コロムビアLP初期の頃のレーベルを確認していきたいと思います。

(第12回完)