ストップ・クラッシュ・クロック

 この前雨の日にエスカレーターに乗った。私はエスカレーターでは歩かない方である。例に漏れずこの日も直立不動で真っ直ぐ立っていた。青の祓魔師第103話(22巻収録)の叙任式のシーンでの聖騎士アベル・フランケンの体勢を思い出していただけるといいと思います。思い出していただけると、と言ったって皆さん全員がご存知なはずはないのだが、まぁその辺りは仕方ないですねということでお許しいただきたい。

 エスカレーターでは立ち止まるべきなのか歩いた方がいいのかという論争は長年繰り広げられてきたものであり、インターネット上にもたくさんの蓄積がある。

 私個人の考えとしては歩かない方がいいとは思っている。危ないし。幅にゆとりがあるところならいいのだが、たまに狭いエスカレータで人を追い抜こうとする人がいる。非常に危ないと思う。あと上野駅とか東京駅みたいな長距離を移動する人が一定数利用している駅だと大きなキャリーバックを引っ張っている人がいるわけで(これ自体は全く悪いことではない)、そこに歩く人が登場すると危なさが増してくる。あれを引っ掛けたら大変なことになりそうな気がする。皆さんの空間認知能力と身体配置能力によって、平和が保たれていると考えると私は非常に嬉しいとも言えますが。
 ただまぁ急ぐ気もわからないでもないし、その気持ちは理解できる。例えば「あの電車を逃すと次に来る特別快速は目的地に止まらないので乗り換えの回数が一回増えてしまう」とか「自分は乗り換えの時間に余裕を持って家を出たのに遅延でギリギリになってしまった」とかの状況だと急ぐのも仕方ないなぁとは思う。非常に理解はできるのだ。でも危ない。
 そんなところで私としての妥協点は「できれば止まって欲しい。しかし急いでいるのならば歩くのは仕方がないもしれないが、できれば止まって欲しい」といったところである。別に私がどう思おうと関係のない話ではあるのだが。

 そんなことを思いながら考えていたら、こんな論文を見つけた。
https://doi.org/10.11361/journalcpij.52.263
 内容をざっくりまとめちゃうと全員が止まっていた方が全体の効率は良いという話である。抄録があるので全部読む時間がない人も読んでおいて欲しい。
 新御茶ノ水みたいな長いエレベーターだと歩く人が少ないだとか、山手線渋谷駅出歩く人が多いのは駅の構造に原因があるのではとかいう話があり、非常に興味深いと感じた。またp.269では歩いている人が多い状況に対してエスカレーター・階段を増設したり、駅構造を見直すとの対策を取るべきだとの提案があり、なるほどなと感じた。「エスカレーターでは止まりましょう」といった掲示を見るが、人に変わらせるより、環境を変える方が効果が高い感じはする。アフォーダンス、みたいな。もちろん人が変わるのにこしたことはないのだが。

 論文があって研究が進められてるんならお前の感想はいらないだろと言われたらもちろんそうだとしか言いようがないのだが、もともと私のnote自体そんなに意義があって書いてるものでもないので勘弁して欲しい。そういうことです。あと、青エクを読んでください。今かなりいいところなので。

参考文献:大竹哲士、岸本達也「鉄道駅におけるエスカレータ上の歩行行動に関する研究」、『都市計画論文集』52巻3号、p. 263-269。
注:本記事では「エスカレータ」ではなく「エスカレーター」の表記を一貫して用いておりますが、紹介した論文中では「エスカレータ」の表記が用いられているということにご留意ください。


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