AIとリレー小説したら死神が生えてきた(21/08/31)

今日あったこと

・労働。
・昼過ぎからすごい雨。これで一気に秋の気温になってくれたりすれば良いんですが。

本文

・一部で「AI Dungeon」というのがちょっと流行っているので早速遊んだ。

https://play.aidungeon.io/main/home

・技術的なバックグラウンドはあんまりちゃんと調べていませんが、膨大なテキストデータを元に学習したGPT-3という自然言語処理モデルを使って「文章の連なりから次に来る文章を予測・生成する」みたいな処理をやっているっぽい。一般人がマルコフ連鎖で遊んでいる間に文明はどんどん発展していく……

・ざっくり内容を説明すると、AIが生成してきた文章に対してプレイヤーは主人公(You)の行動を「Do ○○」「Say ○○」という形式で指定したり、「Story」という形で地の文を書いて送信。AIはその文章を受けてさらに何らかの文章を生成……という繰り返しで進行する仕組み。
・一例としては以下。英文の出来とか訳の精度には目を瞑っていただきたい。

画像1

自分:あなたは王国空軍に航空支援を要請した。
AI:「王国で唯一活動中の飛行隊に連絡した。彼らは戦闘機と爆撃機を持っている」

自分:あなた「我々は今すぐに爆撃機が必要だ」
AI:あなたの要求はすぐに受理された。8機のB-17フライングフォートレスがオークの野営地を更地にするため送り込まれた。

自分:あなたは爆撃目標の指定のためにスモークグレネードを投擲した。
AI:オークはスモークに視界を奪われ、低空飛行で接近してくるB-17に気づかなかった。
 :梢のすぐ上を高速で飛行するB-17から投下された爆弾は凄まじい勢いで爆発し、地上を地獄に変えてしまった。
 :攻撃が終わった後、あなたは爆撃の成果を確認する。

自分:あなた「おお、オークは全滅した! しかし爆撃目標が近すぎた……」
AI:町の中心は全て更地になり、周囲の森は激しく炎上した。何機かの航空機は目標から外れた上でその攻撃を成功させた。

・チュートリアルで出てくる「オークの軍団から城を守れ!」というファンタジー風シナリオでの一幕なんですが、あえて想定される設定をガン無視して航空支援を呼んでみたら妙にアグレッシブな飛行でとんでもない爆撃を行うB-17が生えてきた次第。もう面白い。

・とにかく自分が書いたものは基本的に「あるもの」として扱った上で文章を打ち返してくれるので、とんでもない無茶振りを打ちあうリレー小説を作っているみたいな感触があって面白い。

・で、ここでようやくタイトルの話なんですが、別のスペオペ風世界観のシナリオで試していた時のが傑作だった。
・元の英文が長いのと自分の投げている英文が汚くて恥ずかしいので概略だけ書きますが、まず前提としては
主人公の宇宙船は未知の惑星の探査中、地表に奇妙な物体を発見する。調査を行おうとしたところ謎の敵から攻撃を受け、艦は大ダメージを受けた。脱出しようにもエンジンダメージは重大
・……というような状況。以下、太字部分だけ自分で書いたところ。

~~~前略

防御を続けても状況はどんどん悪くなるばかりだぞ」 
「我々は厳しい状況の中でベストを尽くしています……」
軍曹が頷き、通信をはじめようとした時、バチバチと音がした後、声が聞こえた。
「ああ、人間の到着だ……お前は何を……」
 声が突然止まり、近くにいた兵士があなたを見る。

待て、今のを聞いたか?
「ジャミングシステムが起動する直前になにか聞こえましたが……。何だったと思います?」

いや、忘れてくれ。どうやら死神の声でも聞こえてしまったらしい
 あなたがブリッジに向かおうとすると、あなたの背後から声が聞こえた。
「おれは死神だ。おまえがおれを召喚したんだろう?」
 あなたは振り向いた。男は2メートルほど離れた位置に男が立っている。彼は痩せぎすで、長い黒髪と青白い肌をしている。
「お前、どうやって……」あなたは夢を見ているのだろうか?「お前は誰だ?」
「おれは死神。おれは死を集める。」彼は理解し難い奇妙な声でそう言った。

~~~(グダグダしているのでカット)

「ふむ。対艦砲がおまえの船の前半分を吹き飛ばしている。良い状況ではないな」
「どれだけ悪い?」
「酸素と生命維持装置、指揮機能はまだ機能している。だが外殻に穴が開く前に脱出する必要があるだろう」

死神は随分宇宙船に詳しいようだな? お前は何が出来るんだ? お前は何を求めている?
「おお艦長、おまえのスタイルは好みだ。いつものように交渉しようじゃないか」
「交渉? 何のために?」
「おまえはおれを召喚した。おれはおまえの船の中にいる。だからおれはおまえの要望に答えるつもりがある」
「何?」
「お前は生き残りたいんだろう?」
「……」

そうだ。乗員とともにな。それが艦長の責務だ
「ああ、わかった。つまり自分の命が大事だってことはな」
「……」

分かった。それは認めよう。それでお前はこの状況をどうにかする力はあるのか? ただの幽霊と話している時間はない」
「……」
 男は奇妙そうな表情であなたを見ている。
「分からん。おまえは人間なのか?」
 あなたは頷いた。

・冒頭の謎の声で「あ! 敵エイリアンが精神的に発達していて脳内に念波で直接コミュニケーション仕掛けてくるやつだ!」と思ったので、「一度聞き違いとして処理しようとしたがすぐにまた声が聞こえる」みたいな展開を想起して台詞を書いてみたところ、本当に死神が出てきてしまった。
・自分の頭では本物の死神を出そう/この先出るような展開になる、という想定は一切なかったので、まさに嬉しい驚き。セレンディピティ。

・しかもこの死神氏、凄くそれっぽく痺れる台詞回しをしてくれて、打ち合っていてかなりテンションが上がった。
・おそらく「死神/Reaper」というワードを受けて関係度の高い(?)ファンタジー系の文章の台詞文体に寄せたものが出てきているのだろう。ミリタリー風の語彙を使ったらファンタジー内にB-17が出てきてしまったのと同様。


・ただ、こう見ていくとAI超万能! 今後全ての文章はAIが書いて人類全員失業ディストピア! みたいな話に見えるものの、上に書いたようなものは相当回数のリトライ(一度書いた文章に変なレスポンスが帰ってきたので再生成させたり、文章を手直ししたり)を重ねた上で「良かった部分」だけ切り取っているので、トータルでは今一つな反応の方が多い。体感的には「いい反応」が帰ってくるのは3割ぐらいでしょうか。

・加えて、個々の文章に関してはリトライするうちマシなものが出てくるとしても、お話としての全体構成みたいな所を見るとほぼ確実に支離滅裂になってしまう。上に載せたスペオペ風のやつも前後は散々にグダグダしていてあまり単体で読んでおもしろいものにはなっていない。

・おそらく文章のストーリー展開を考えているのではなく、「そこまでの状況と文章を踏まえてそれっぽい文章を生成している」に過ぎないため。
・人間感覚だと「ここ盛り上がりどころだぞ!」と思うような熱いタイミングで細かいワードに引っ張られて脱線を始めるケースも多い。例えば「ドアを叩く激しく音が響いている。あなた達は武器を構え敵の突入を待つ」→「あなたはドアを開けて次の部屋に突撃する……」というような。ドアがバーンと空いた瞬間に一斉射撃するところだろそこは!!!!

・そういうわけで、自然言語処理の猛烈な進化を感じた一方、「物語を作る」という用途に関しては、やはり「意味や文脈を理解した上でフル活用する」という点でまだAIには壁があるのだな……と感じられ、技術的な意味でも非常に興味深い体験だった。
・また、お話を0から作るというのは厳しくても、シーン単位・台詞単位では「おお」と思わせるものが出てくるので、展開予想・推薦みたいなものは将来的に創作者支援の文脈でなにかツールやサービスが出てきたりするのかもしれないなと思う。

・ちなみに月額10ドルとかの有料会員になると更に1ランク上のAIがアンロックされ、生成される文章の質が上がるようなので、ちょっと試してみたいな……と魔が差しているところ。
・色々書きましたが、「自分で書いた文章にサラサラとレスポンスが帰ってきた瞬間の衝撃」がとにかく大きい体験だったので、記事を読むだけでなく一度試してみることをオススメします。英語厳しくてもDeeplとかGoogle翻訳に突っ込みまくれば何とかなるので。

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