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私の小さな冷たい湖

私は右足首に、小さな湖を持っている。

夏でもいつでも、ひんやりとしている。

真夏の炎天下、エアコンの冷風で快適な空間を味わいながら

小さい湖は、悲しみを一滴、一滴 貯めていた。

小さい湖は、どこかでシベリアにつながっているのかもしれない。

シベリアで過酷な青年時代を過ごした老人は、熱く、熱く語っていた。

凍土に眠る友たちを、絶対に迎えに行くのだと、温かい毛布でくるであげると。

彼らをねぎらうどころか、私のほうが勇気つけられている気がした。

私の小さな湖は、少し温度を持った。


【あとがき】
もう、何年も友人に、シベリア抑留者の体験談を聞きに行こう。と誘われていたのですが、ずーっと、頑なに断っていました。なぜかというと、寒い、飢え、暴力、死など、おおよそ悲惨な体験であることは、うっすらと知っているわけで、それ以上、生々しい苦しみを知ってどうなるか。という思いがありました。

 でも、今回、友人と行ってきて良かったと思いました。
一つは、講師の有光健氏の講演があり、シベリア抑留の歴史的背景、なぜ日本人が大量にシベリアで捕虜になって、長期間、苦役につかされたのかなど、知ることができました。

 戦争に負けたのは、仕方ないとしても、国の、政策や対応で、18歳の少年ともいえる子が、極寒の地で家族と離れ、死地に追いやられるのは理不尽だなと。

 受忍論。我慢は美徳。
いまだに、多くの日本女性に洗脳されている、呪いの言葉は、連綿と受け継がれていて、大なり小なり苦しんでいる。シベリアは遠くて近い気がした。

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