デジタル一眼カメラで撮影した画像を拡大すると鮮明でない現象の原因と対策 (最終更新日:2023, Jul.20)


1. はじめに

デジタル一眼カメラで撮影した写真を拡大表示すると、なんだか荒れている、鮮明でない、といった場合がある。
この記事は、そんな問題がどのような原因で起きるか、そしてどのようにすれば解決あるいは軽減できるかを記述することを目的とする。

2.4つの原因とその対策

デジタル一眼カメラで撮影した画像 (主にJPG画像とする) をスマホやPCの上で拡大表示したに、「なんだか荒い」「鮮明じゃない」「ボヤけている」と感じることがある。
その原因は4つほど考えられる。

原因①ピンボケ

写真にはピントが合っている場所と合っていない場所があるのが通常である 。ピントが合っている箇所を拡大しても画像は鮮明であるが、合っていない場所を拡大すると画像はぼやけている。

背景と前景がボケた写真の例

ここに論点が3つある。

  1. ピントが合っている場所はどこか?
    現在のオートフォーカス(AF)技術で撮影した写真では、ピントが合っている (あるいはカメラがピントを合わせたつもりの) 場所が記録されている。
    例えば、Canonのカメラであれば「AFフレーム表示」という設定により、画像を再生した時にピントを合わせた位置が赤い四角(□マーク)で表示される。
    それ以外の場所は、程度の差こそあれピントがずれている。拡大表示しないとピントずれに気づかない場合がある。

  2. ピントが合っている範囲は広いか?
    撮影した際に使用したレンズの絞り値・焦点距離・カメラから被写体までの距離、によりピントが合う範囲 (前後範囲) が異なる。これを「被写界深度」と呼ぶ。前後の広い範囲にピントが合っている/合わせている場合は「被写体深度が深い」と言い、狭い範囲にあっている場合を「被写界深度が浅い」と言う。
    被写界深度が浅い写真の場合は、写真内の多くの場所でピントはずれているように見える。
    被写界深度が非常に深い撮り方 (パンフォーカス) も存在するが、絞りをかなり絞り込んで、短い焦点距離のレンズで撮影した場合である。

  3. 本当にピントがあっているか?
    近年のカメラのAF機能はかなり進化しているが完璧ではない。
    合わせたい位置にピントを合わせることが難しい場合、あるいは合わせているつもりでも合っていない場合もある。
    詳細は長くなるので割愛する (この話だけで記事が一つ書けるぐらいである) が、これは実は永遠の課題である。

ピントが合っていない場所を拡大表示するとボケるのは現在のレンズを使った写真の原理上、やむを得ない。また写真の主要被写体以外を敢えてボカすことによって、写真の主題を浮かび上がらせることは積極的に利用される表現手法である。つまり写真の中でピントが合っていない場所があることは悪いことではないと言える。

主要被写体のピンボケの対策は、ともかくピントを正確に合わせることである。ただし、これは実はそれほど簡単ではない。特に入門機レベルでは、この機能が弱い場合が散見される。入門機レベルの一眼レフはAFフレームの数が少なく、意図した場所にピントを合わせることが難しい場合がある。

原因② ブレ

拡大すると画像が粗い・鮮明でない場合の原因として、ブレている場合は少なくない。ブレとは、シャッターが開いて光を撮像素子に取り込む際に、1点に取り込まれるべき像が横流れして記録される現象である。
ブレは画像全体 (あるいは特定の被写体) で同じような不鮮明さが発生する。画像の部分によって不鮮明さの度合いが異なるピンボケとは見分けることが出来る。
ブレには2種類有り、それぞれ対策も多少異なる。

  1. 手ブレ (カメラブレ)
    撮影する時にカメラが微少に動く事によって画像が「流れる」ことを「手ブレ」や「カメラブレ」と呼ぶ。手ブレ/カメラブレは画像全体で同じような不鮮明さが発生する。
    この対策は大きく二つある。
    カメラを止める
     - 手持ち撮影ならカメラをしっかり構える (背面モニターを使用するよりファインダーを使用する方がブレにくい)
     - 手ブレ補正機能の付いたカメラやレンズを使用する
     - 三脚を使用する
    速いシャッタースピードで撮影する
     TvモードやMモード(Canonの場合のモード名称)であればシャッタースピードを任意に設定できる (他社ではSモードやMモードと呼ぶことが多い)
     一般的にレンズの焦点距離分の1秒より速いシャッタースピードの場合、ブレガ起きにくいと言われている。例えばレンズの焦点距離が 50mm であれば、1/50秒より速いシャッタースピードであれば手ブレしにくいと言われている
     ただし速いシャッタースピードを使うことは、実は他の不鮮明さを引き起こす恐れがある (③) ため、バランスが重要である

  2. 被写体ブレ
    撮影の瞬間、被写体が動いている場合は、被写体の動いている箇所全体が同じように不鮮明になる。
    この対策は
    被写体を止める
     人物撮影なのであれば、撮影の瞬間に止まって貰う
    速いシャッタースピードで撮影する
     これは手ブレの防止とも共通する

原因③ 高ISO感度ノイズ

高いISO感度で撮影すると、画像にノイズ (意図しない斑点) が生じることがある。これを「高ISO感度ノイズ」などと呼ぶ。
高いISO感度を使うことで、暗い場所でも明るく撮影する事が出来たり、シャッタースピードを速くしたりする (ブレ対策) ことが出来るが、高ISO感度ノイズが発生することが多い。
どの程度のISO感度まで鮮明に撮影出来るかはカメラごとに異なり、また鑑賞者によっても感じ方が異なる。一般的にはISO=1600程度が許容上限であると言われることが多い。

ISO=100の画像例
ISO=1600の画像例
ISO=の画像例
ISO=100, 1600, 6400の写真の一部分を拡大しての比較

またアプリでノイズを低減する(消す)事も出来るが完璧とは言いがたい。(ノイズを消すことの弊害もある。例えば色の階調が失われたりする)

撮影時の対策はなるべくISO感度を低くすることに尽きる。
高ISO感度を使ってもノイズ発生が少ないカメラも存在するが、それは概ね高価格である。
気をつけないと行けないのは、簡単撮影モードやオートモードで撮影するとISO感度が意図せず高くなってしまうことがあることである。

ISO感度を低くするためには「被写体を十分明るくする」ことが重要である。
光が十分被写体に当たる撮影場所を選んだり、ストロボやレフ板を適切に使うことが必要である。

原因④ JPG圧縮ノイズ

一般的にデジタルカメラで撮られた写真はJPG形式の画像ファイルとして保存される。
デジタルカメラの撮像素子から取り出されるデータ (RAWなどと呼ぶことが多い) は、非常にデータサイズが大きい。20MB (メガバイト) 以上あることも少なくない。(被写体およびカメラによってこの値は異なる)
しかし6000画素x4000画素ぐらいの写真の画像データ (JPGファイル) のサイズは2~3MB程度が一般的である。

JPGは「不可逆圧縮」と言われる方式でデータサイズを小さくしている。
この圧縮を行う際に一部のデータを省略している。
詳細は割愛するが、この圧縮の際にデータをどの程度省略するかにより画像データファイルのサイズが異なり、当然ではあるが小さなサイズの画像データは画質が落ちる。
画質が落ちた写真を拡大表示すると荒く・不鮮明に見えることがある。
どの程度のデータサイズにするかはカメラで設定できる。
Canonのカメラであれば「記録画質の設定」でL/M/S1/S2といった選択肢が選べる。L/M/S1/S2は画素数の違いである。

Kiss X9の記録画素数

L/M/S1は、圧縮程度が2種類選べる。(▲の絵で表されている)

記録画質ごとのデータサイズ

圧縮程度が大きい(記録画素数が同じならデータサイズが小さい) ほど、画像が荒くなる。

ただしカメラ内で生成されるJPGファイルでは極端な画質低下が起きることはほとんどない。
例えば以下の画像ファイルは圧縮率を極端に大きく (ファイルサイズを小さく) するようにPCで加工した場合の画像である。

圧縮率は極めて小さい=画質は良い (ファイルサイズ 1.7MB)
圧縮率は極めて大きい=画質は悪い (ファイルサイズ 0.04MB)

繰り返すが、カメラの設定でこれほど画質の悪いファイルが生成されることはないと言える。
この現象はカメラで撮影したJPGファイルをソフトで加工し、保存した場合などに大きな画質劣化が起きる可能性がある。

この現象の対策はJPGファイルをなるべく加工しないことである。
多くのカメラマンがRAWで撮影するのはRAWで加工すると画質劣化が抑えられる傾向にあることが大きな理由である。
RAWファイルを取り扱う環境がない場合、TIFFファイルという画像形式で加工する方が画質劣化を抑えられる可能性がある。

更新履歴

2023/07/20 新規作成