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【人怖話】窓ガラスを割った酔っ払い
これは20年近く前に勤めていたコンビニで聞いたとんでもない話である。
多少フェイクは入れてある。
それでは以下から書いていく。
当時の私は遅番勤務だったことで、午後2時にお店に出勤したのだが、入り口を見た瞬間にその光景に驚いてしまった。
入口の窓ガラスが割れていたのだ。
ガラスの下半分が見事なくらい真っ二つに割れており、段ボールとガムテープで塞がれた状態になっていた。
細かい破片と無くなっている部分はおそらくはゴミ庫で眠っていることだろう。
急いでバックルームに入るとオーナーがかなり不機嫌で話しかけにくかったのだが、表の惨状が気になったので恐る恐る質問する・・・。
私「お疲れ様です、オーナー・・・表はどうしたんですか?何か事故があったんですか?」
オーナー「ああ・・・あれね・・・事故みたいなものだね」
私「誰かが転倒して割れたとかですか?」
オーナー「違う」
私(うわぁ・・・かなり機嫌悪いな)
オーナー「酔っ払いにやられた」
私「酔っ払いのお客さんですか?」
オーナー「そう、昨夜の23時あたりに酔っ払いが数名来店してきた」
私「ひとりだけじゃなかったんですか!?」
オーナー「酔っ払いのうちの1人がレジに居た従業員に絡んだ」
私「怖いですね」
オーナー「絡まれた店員に直接的な被害はなかったんだけど」
私(夜勤のM君が無事でよかったよ)
オーナー「M君が相手にしてくれないからって物に八つ当たりしたそうだ」
私「それで、窓が割られたんですか?」
オーナー「らしいよ、M君は揉めるのが嫌だから適当に何か話をしてそそくさとレジを離れたんだけどね、M君に構ってもらえなかったことで腹が立ったらしい」
私「ずいぶん身勝手な酔っ払いですね」
オーナー「思いっきり入口の窓を蹴飛ばした結果、ああなってしまったんだって」
私「酔っ払いの癖に窓を割れるほどの力が出たんですね」
オーナー「窓割ったのは20歳の会社員で、一緒に居た他の酔っ払いは仕事仲間らしい」
・・・オーナーからさらに詳しく状況を聞かされる。
昨夜の23時頃、酔っ払い数名がお店に来店してくるが、そのうちの1人がレジに立っていた夜勤のM君に絡んできた。
絡んだ理由は来ていた服が気に入らない、というものだった。
その時のM君はオレンジ色のTシャツを着ていたのだが、目立つ色のせいで酔っ払いの目に留まってしまった。
M君は揉めることを恐れて酔っ払いを適当にあしらっていたのだが、相手にされなかった酔っ払いはM君に掴みかかろうとしていた。
一緒にいた仲間の酔っ払いは必死になって止めていたのだが、それでも絡むことは辞めなかった。
M君は隙を見てバックルームに逃げ込んで難を逃れた。
だが、逃げられたことで余計に腹が立ったようで、入り口の窓を「むかつく!」と暴言を吐きながら蹴り飛ばしたではないか。
ドンッ! ドンッ! ガシャーン!!!
ガラスは大きな音を立てて割れてしまい、蹴った本人は固まり、酔っ払い仲間は真っ青になり、店内にいた他のお客さんはそそくさと逃げ帰って行った。
ガラスの割れる音を聞いたM君は血相を変えて現場に飛んできた。
割れたガラスを見てショックから体の力が抜けてしまったとのことだった。
問題が起きてしまった以上はオーナーに連絡しなければならない。
M君が電話の受話器を持ち上げた瞬間に仲間の酔っ払いのひとりが大慌てでこんなことを言ったそうだ。
酔っ払い仲間「お願いです!警察には連絡しないでください!」
M君「何言ってるんですか、これじゃあ営業出来ませんから、まずはオーナーに連絡します」
酔っ払い仲間「あいつ(窓割った酔っ払い)は本当は根はいい奴なんです!」
M君「いや、そんなこと言われてもお店には関係ないことです」
酔っ払い仲間「普段は凄く大人しい奴なんです、たまたま今日は仕事のミスで上司に怒られたショックで飲みすぎて、ああなってしまったんです!」
M君「だからといって、このまま放ってはおけませんよ、だからオーナーに連絡しますから、オーナーが来たら直接相談してください」
酔っ払い仲間「・・・分かりました、ご迷惑おかけしました」
M君(本当にいい迷惑だよ、オーナーもこれ見たらカンカンだろうね)
・・・30分後、オーナーがお店に到着、現場を見て頭が真っ白になった。
酔っ払い仲間はオーナーに何度も何度も「警察にだけは連絡しないでください!!」と懇願していたが、事故が起きた以上は連絡しないわけにはいかないと突っぱねようとする。
では、何故警察沙汰になると困るのか。
酔っ払い仲間が言うには会社に知られたらクビになるかもしれないし、親に知られたら勘当されるかもしれないから、言わないで欲しいとのことだった。
肝心のガラスを割った酔っ払いは放心状態でずっとうつむいたままだった。
会社や親に知られると困るということで、近くに住んでいる祖父母にすぐに連絡をして助けを求めることにしたようだ。
連絡を受けた祖父母はお店の惨状を目の当たりにしてがっくりと肩を落とし、泣きながらオーナーに土下座で謝罪したらしい。
全額弁償します、この子の両親はこの子には厳しすぎるんです、もし知られたら縁を切られてしまいますから、私達が代わりに弁償しますと必死に訴えてきた。
その酔っ払いは普段はひとり暮らししており、もし会社をクビになったら生活していけない、だから穏便に済ませて欲しい、今回は大目に見て欲しい。
ガラスを元通りにしてもらえるならば・・・とオーナーは警察には連絡しないことに決めたという。
オーナー「本当に困った人だった、いくら精神的に辛いからって物に八つ当たりするなよって思うよ」
私「たまたま近くにおじいさんとおばあさんが住んでいたからよかったものの、もし近くに頼れる人が居なかったらどうしていたんでしょうね?」
オーナー「さぁ?その人がどうなろうとこちらには関係のない話だし、そもそも誰かに迷惑をかけるような行動をしなければいいんだよ」
私「お酒なんて飲まなければこんなことにはならなかったですよね」
オーナー「まぁ、お酒飲むなとは言わないけど、周囲に迷惑かけない程度で抑えて欲しいもんだね」
数日後、ガラスを割った酔っ払いとその祖父母が再びお店にやってきて頭を下げてきちんと謝罪はしたようだが、オーナーとしては本当は許したくはなかったが、祖父母が可哀想だからと謝罪を受け入れたとのことだった。
これで、窓ガラス事件は終わりを迎えたのだが・・・。
ガラスを割った酔っ払いに言いたいことがある。
色々な事情を抱えているかもしれないけれど、世の中の人々がその事情を考慮してくれる人ばかりではないということは頭に入れておいて欲しい。
たまたま近くに祖父母が住んでいて助けられたかもしれないが、それは当たり前のことではなくて、とても恵まれたことであり、ありがたいことなのだと。
オーナーもいい人だったから、警察に連絡しないでいてくれたけれど、みんながみんなこんないい人ばかりではない。
やらかした内容と相手と場所によってはどんなに謝っても許してもらえないことだってある。
一生恨まれるかもしれない。
いや、恨まれるだけならまだマシだ。
中には報復する人だっているだろう。
何十年も恨みを抱えながら・・・。
だから、人から恨まれるような言動を取ってはいけない。
いくらお酒に飲まれたと言えど、そんな事情は他人には関係のないことだから。
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