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【不思議な夢】ループが終わる時

ある夜に見た不思議で寂しい夢の話。

4月に入ったばかりのある夜のことだった。
いつもより早めに布団に入ったものの、いつまで経っても眠りにつくことが出来なかった。

気候はどちらかというと布団を横に動かすくらいだから少し暑かったのかもしれない。
眠れないとなると頭の中に次々と考えが浮かんできてしまう。

今日は休みの日だったけど、明日から出勤だから疲れるなぁ・・・。
レジ係の時に厄介なこと起きなければいいんだけどなぁ・・・。
品出しする体力あるかなぁ・・・。


誰しも考えてしまうであろう出勤後の働き方についてあれこれと少しネガティブな方に意識が向いてしまっていた。

休みが終わるのは嫌だなぁ・・・とも考える。

しばらくすると何となく嫌な予感がした。
キーンという金縛りをイメージするような音は聞こえてくることはなかったが、そういう感触というか感覚のようなものを感じ取った。

じわじわと迫って来る妙な感覚。
徐々にピリピリした何かが体を支配していく。

これは間違いない。
金縛りだ。

体が固まりつつある状態で私は条件反射のように拒絶反応をしてみることにした。

「私は、それを受け付けない!」

瞬時に金縛りのような感覚は解けた。
ここで意識がはっきりとしてきた。
先程の体験は悪夢だったのか?
それとも心霊現象の一環だったのか?

どっちか判断できないまま少し視線を上にやる。

シュワシュワと黒い粒のようなものが集まっている。
粒の周囲には白とグレーが入り混じった背景が少しだけ見えた。

何かが集まっているのか?

その粒の集合体は一瞬で消え失せてしまった。
見間違いだと思うことにして、視線を部屋の入口へ向ける。

透明の何かがすーっと外から中に入ってくるような歪みを感じ取る。
姿は見えなかったが、明らかにこの世の者ではない誰かだった。
その部分だけ空間に異常が起きたような感じだろうか。

透明の少し歪みのある存在が私の部屋に入ってきたのだが、それ以降は特に異変は起きなかった。

疲れていたのかもしれない。
気のせいかもしれない。
目の錯覚かもしれない。

そう思っているうちにやっと眠りにつくことが出来た・・・。

夢の中の私は子供の頃に住んでいた田舎町にあるショッピングセンターに似ている場所に居たが、何故かそこは薄暗かった。

1人で店内を徘徊しているのだが、ぐるぐると同じような場所を巡っているような違和感を感じたので、ふと足を止めてみる。

店内の様子を見てみよう。

玩具屋や雑貨屋にはどこか懐かしい感じがする商品が置かれていた。
フィギュア、お面、レトロな小物が陳列されており、その周囲には個性豊かなお客さんが商品を手に取って見ていた。

ここはとても専門的な場所かもしれない、お客さんもそういう雰囲気を出しているし、私は何となく場違いな気がする。
出口は見えているものの、何故かそちらに足が向いてくれない。

ぐるぐるぐるぐる・・・薄暗いショッピングセンターを1人で彷徨っているうちに別の出入り口と川が合体している場所に出てきた。

何故こんなところに川があるのか。
とにかくここからなら出られるかもしれない。
私は濡れることも気にせずに川の横を歩いて行く。

少し足場が悪いな。
砂地のような柔らかい場所と岩でごつごつしているような固くて不安定な地形。
いつの間にか私の荷物に折りたたまれた段ボールがあった。

邪魔だと思いつつもそれを持ったまま外に出る。
曇り空で太陽の光は確認できない。
寒くもなければ暑くもない、風も吹いていなかった。
ショッピングセンターの外には海岸へ続く道があった。
そこに両親と愛犬の姿があった。

迎えに来てくれたんだ!

嬉しくなった私は家族と愛犬の元に駆け寄った・・・その時に更なる違和感を感じ取る。

おかしい、愛犬の毛色が違うじゃないか!
シルバーグレーだったのに、アプリコットに変わっているのはどうしたものか。

両親は何一つ変わらない普段の姿であるというのに、愛犬の姿だけが違う。
体はガリガリに痩せ細っており、今にも倒れそうなほど老いているのだ。
側には見知らぬトイプードルが4匹も居る。

成犬2匹と子犬2匹で4匹ともアプリコットだった。

両親が愛犬と見知らぬ犬達を連れて海岸へ向かっているので私も後を追うことにした。

父の側には愛犬のなながぴったりとくっついて歩いているが、どこか心もとない。

母は買い物カゴを持ち歩いており、中にはフリースを敷き詰めて愛犬のコニーをそこに寝かせていた。
コニーは足が悪かったので歩けなかったのだ。

見知らぬ犬4匹は若い個体だったので元気に歩いていた。

てくてくてくてく・・・3人と6匹は海岸まで到達すると砂浜を無言で歩いている。
ひたすら歩いているのだが、私はふと奇妙な感覚を覚える。

なんとなく、同じ場所をループしているような気がする。

ショッピングセンターから出て海岸へ続く道を歩き、海岸に到達すると砂浜を無言で歩く。

・・・それを何度も何度も繰り返している。

景色は若干変わっているが、空は曇り空で寒くも暑くもなく、同じメンバーで同じような道を歩き、必ず海岸に到達する。
無言でひたすら砂浜を歩いて行く。
そしてまた同じメンバーと再会して同じような道を歩き・・・というループだった。

場所をループしているだけではなくて時間もループしているようだ。
まるで罠にかかったかのように同じ場所を同じ時間を永遠に移動させられているかのようだ。

おかしい、この流れはずっと同じだ。
洗濯機の中に入れられて訳も分からないままぐるぐる回転しているようなイメージが頭に浮かんでしまった。

どうすればこのループから抜け出すことが出来るのだろう?

違和感を感じた次のループの時だった。
流れが変わる予感がした。

また同じようにショッピングセンターの出入り口の川からスタートしていた。
不安定な足場を歩いているうちに荷物の段ボールを落としてしまったのだが、それを拾いあげる気にはならなかった。
邪魔な荷物が減って楽になった気がした。

両親達が外で待っているから、早く行かなければ!

気持ちも足取りも軽い。
きっと次こそ流れが変わるに違いない。
それと同時に少し寂しい感情が心に湧いてきた。

メンバーを確認する。

・・・居ない。

愛犬2匹が居ない。
両親も見知らぬ4匹の犬も居るのに、愛犬のコニーとななだけが居なくなっている。

両親に愛犬がどうしてしまったのか尋ねてみるが、だんまりで言葉が返って来ることはなかった。

どうにも納得いかなかったので再度尋ねてみたものの、やはり無言のままだった。

それでようやく察することが出来た。

愛犬2匹は旅立ってしまったのだ。
遠いお空の向こう側に。
虹の橋が架かっていると言われている場所に。

私の目には涙が溢れていた。
寂しい、悲しい、居なくなって苦しい。

私を置いて行かないで!

母の口から病院の先生の名前が出てきた瞬間に目が覚めてしまった。

久しぶりに見た愛犬の夢、だけどそれはとても悲しい結果となってしまった。
愛犬達は私に何を訴えたかったのだろうか。
きっと強いメッセージがあったに違いない。

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