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【不思議な夢】彷徨う者、監視する者

とある寒い時期に見た複雑で不可解で謎が多い不思議な夢の話。

夢の中の私は国籍も年齢も職業も何の共通点もないあるグループに所属していた。

所属していたといっても、普段はそれぞれの居場所で生活をしており、時折どこかに一緒に出掛けるような間柄であった。

どこに出かけるのかというと異世界だ。
こちら側より少し変わった感じのする奇妙な世界に定期的に旅立っている。

その世界は一見すると普通なのだが、空はいつでも曇りで気候は春か秋くらいの暑くもなければ寒くもない、過ごしやすいとも言える。
どちらかというと自然の方が多い田舎のような世界観だ。

町外れにはそんなに大きくないテーマパークが存在し、古いデパートが建っている。
駐車スペースにはジャングルをイメージしたようなアトラクションがあり、人々はそこにも入っていく。
デパートに入る者とアトラクションに入る者は半々くらいか。

異世界に旅立つ前に私達のグループが集まりつつあった。

お化けや恐竜のコスプレをしている者もいれば、こちら側の食べ物をお土産として持っていく者もいる。
私は必要なものがなかったのか手ぶらだった。
荷物がほとんどないというのも安易すぎる気もするが。

気付いた時には異世界に飛んでいた。
目の前には古いデパートが建っている。
ふと、懐かしい気配を感じたのでそちらに視線をやってみる。

パート先のパート仲間がジャングルのアトラクションに楽しそうに入っていくではないか。

私は内心「そこよりは古いデパートに入った方がいいのに」と思ったのだが、グループのメンバーと一緒にデパートに入ることにした。

正確には入ろうとした時だったと思われる。
急に意識が飛んでしまったのだ。
しばらく無の状態が続いたようだが、何も感じることのない真っ暗な空間に居るような感じを受けた。

徐々に意識が戻ってきたものの、まだ朦朧としている。
半分寝ぼけているような、ぼ~っとした状態。
私はひとりでデパートの中に突っ立っていた。


「あれ?」

「私は一体何をしているの?」

「なぜここにいるの?」


デパートに入った理由や一緒に居た仲間のことをすっかり忘れてしまっていた。

ぼんやりとした意識の中で自分の情報が失われていたことに気付いたがどうすることも出来ない。

思い出そうにも頭が働いてくれない。
個人情報を全て失った状態なのだが、それに対する不安はなかった。

不安や恐怖の感情は一切感じることはなかった。
ありとあらゆる感情を切り捨てられたような、例えるとゾンビのようにただただ徘徊しているような様子をイメージすると分かりやすいだろう。

ふらふら~~っと移動をしているうちに誰かが私の側にやってきた。

あの人達は一体誰なのか?
知らない人が私の側に来るのだが、必要以上に接触してくることがない。
様子を伺っているような、何か言いたいことがあるけれど事情があって言えないようなものだろうか。

中途半端な接し方をしてくる人に何も感じることなく無視してしまった。
どんな反応をしていいのか分からなかったからだ。

しばらくデパートの中を徘徊していたが、高校生くらいの男子が2名ほど私の様子を伺っていたかと思うとすぐさまどこかに逃げてしまった。

一体何が起きているのか把握出来ないし、彼等を不信に思うこともない。
なぜ、彼らは私を見ていたのか、そして逃げたのか・・・理由が分かったのは後になってからだった。

気配を感じ取って振り向くと私の背後に20代くらいの親切そうな女性が立っていた。
女性はただ黙ってニコニコして私の後ろに居るだけだった。

女性は一体何者だろう?

女性は私についてくるようにゼスチャーしてきた。
訳も分からず黙って後を追うことに・・・。

どこかへ連れていかれるようだが、エスカレーターを降りたあたりで一瞬記憶が途切れて女性を見失ってしまった。

移動速度が違うせいもあったのかもしれないし、何かの力が働いたのかもしれない。
それすら何の疑問も抱かずに再びデパート内を徘徊することになった。

しばらくひとりで移動していたが、ふと私の意識が一瞬だけ出口という言葉を受信した。
誰が発信した言葉か分からないが、出口がどこかにあることだけ理解出来た。

私はひたすら出口をイメージしてデパート内を徘徊していた。
少し暗い通路をひとりで歩いていたが、不思議と怖いという気持ちは湧いてこなかった。

もしかしたら、誰かが私を導いてくれているのか?

ふと誰かの意思みたいなものの影響を受けているような感じがしたが、すぐにそれは私の記憶から消えていってしまった。

再び出口に向かって進んでいくが、少し離れた位置から私の様子を伺っている人達の存在に気付いていた。
決して側に来たり話しかけてくるわけではなく、一定の距離感を保って様子を伺っている彼らは敵ではないように思えた。

暗い通路を抜けて階段を登っていくと、目の前に鉄の扉が姿を現した。
少し戸惑ったが、扉を押して開けてみることにした。

ぎぎぎーっと音を立てて開いていくものの、その先の光景に恐怖を覚えてしまった。
今まで感情というものを持っていなかったのに、初めて恐怖という感情が湧いてきたのだ。

扉の向こう側の空間が危険をイメージするような真っ赤な色で、足を踏み入れるには躊躇するような不気味さがあった。

この先進んでも大丈夫なのか?

不安な気持ちに支配されて動きが止まってしまった。
扉はゆっくりと閉じられようとしている。
私はすぐにこのままではいけないと考え直して再び扉を押して開ける。

もう、迷うことなく中に入るんだ!

赤い空間の中には降りの階段が延々と続いている。

もう降りるしかない、何も考えずに降り続けると真っ暗な世界の向こう側にほわ~とした丸い光が見えてきたのでゴールが近いことを悟る。

そこに向かって猛ダッシュすると・・・古いデパートから出ることが出来たのだ。

そして、出た瞬間にすべてを理解出来た。

この古いデパートを彷徨う者は意識が朦朧としており、記憶も封じられている。

感情を持たないようにされており、余計なことを考えないようにコントロールされている。

そのために自分が何者なのか、何故デパートの中に入ったのか、そもそも何がしたいのかすら忘れてしまっている。

ふらふらとデパートの中を彷徨っているのはそういう事情からである。

監視者と呼ばれる存在がおり、古いデパートの中で余計なことをする者が居ないか見張っている。

監視者は基本的には彷徨う者には無害であり、時折変わった動きをする彷徨う者を見つけるとどこかに連れて行って記憶を消しているようだ。

一方で彷徨う者が出口に向かうようにサポートする協力者という存在がいる。
協力者は意識がはっきりしており、記憶や感情もちゃんと持ち合わせている。

当然だが出口の位置もどこにあるか分かっている。

監視者にとって協力者の存在が疎ましい。
協力者が余計なことをすると警備員を呼ぶことが出来るようだ。
協力者は警備員に捕まるとデパートから追い出されてしまうが、再び入ろうと思えば自由に入れる。

彷徨う者は一旦出口からデパートを出ると全てを思い出すことが出来る。
このまま去ることも出来るが、再びデパートに入ることも可能で、その場合は協力者として行動することになる。

彷徨う者をサポートすることが出来るのだが、協力者から見た彷徨う者は半透明の姿をしているために場合によっては姿の確認が難しいこともある。

協力者は監視者に見つからないように何とかして彷徨う者をひとりでも多くデパートから脱出させることが目的である。

協力者には2パターン存在し、自由に動けるタイプとデパートの店員のふりをして情報収集できるタイプがいる。

自由に動けるタイプは彷徨う者を誘導しやすい反面、監視者との間に揉め事も起きやすく、デパートを追い出されることも。

店員タイプは自由に動けないが、自由に動けるタイプより情報収集しやすく、商品の押し売り等などで監視者を怒らせて撤退させることも可能である。

デパートから追い出されないが、自由に動けるのは休憩時間のみとなっているために、自由に動けるタイプと連携が必要である。

監視者が店員タイプの協力者を敵と認識しないのは、デパートの店員だと信じ切っているからかもしれない。

彷徨う者は記憶喪失であるために監視者、協力者を識別することは不可能である。

監視者は協力者が邪魔者でありながらも、彼らが目の前に現れても敵だと認識するには時間がかかる。
余計な言動を取ることで記憶を封じようとして失敗し、邪魔者であると理解する。

その監視者ですら、一定時間経つと協力者の存在のことを忘れていく。
ずっと記憶を保持したまま行動し続けられるのは協力者のみだが、思うように彷徨う者を動かすことが出来ない。

監視者は彷徨う者の記憶と感情を消すことは可能だが、協力者の記憶と感情はいじれない。
理由は不明だが、デパートの外に出られた者の特権かもしれない。

極稀に協力者と彷徨う者の親密度が高い場合(家族や友人)にのみ、彷徨う者が一部の記憶を思い出すこともあるが、忘れやすいので注意が必要だ。

協力者は条件を満たすとテレパシーのようなもので彷徨う者に何かメッセージを送れるらしいが、詳細は不明である。

出口はその都度場所が変わっていくが、一度開けられた扉は徐々に閉まり始める。
完全に閉じると出口としては機能しなくなり、再び開けてもそこからは出られない。
その場合はまた別の出口を探さなければならない。

普段は感情を封じられているのに、出口の扉を開けた瞬間に怖がるのは出られないようにするための罠らしい。

・・・という情報を一気に思い出した私は再びデパートに入ることに決めた。
理由は彷徨う者を救うためだ。

デパートの中に入ると意識ははっきりしており、自分が彷徨う者だった時の出来事もはっきりと思い出すことが出来た。

中途半端に接してきた人達は実は協力者であったこと、背後に立っていた20代くらいの女性が監視者だったこと、途中で見失ったのはおそらくは記憶と感情をリセットされたためであることも。

さて、今度は私が協力者として動かなければと決意したところで目が覚めてしまった・・・。

こんなにはっきりと内容を覚えている夢は久しぶりに見たような気がする。
異世界を舞台にした古いデパート脱出劇は奇妙であり、不可解だった。

まさか彷徨う者と協力者の立場を両方経験することになるとは思わなかったが、デパートを脱出すると一気に記憶が蘇るのには驚きを隠せなかった。

この古いデパートは一体何の目的で建てられているのだろう。
彷徨う者は一体何故こんなことに巻き込まれてしまったのか。

監視者と協力者は色々制限が多い中でそれぞれの目的のために動いているのは何か理由があるのかもしれない。

謎が多い夢の続きを見たいような、もう見たくないような・・・次に見るなら協力者でスタートしたいと思う。

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