見出し画像

【悪夢】ブラック企業から脱出だ!

ブラック企業にまつわる悪夢の話。

夢の中の私は何でも屋を経営していた。
小さな会社だった。
デスクの上には書類とパソコンが置かれている。

従業員の姿は見えなかったので、もしかしたら私ひとりで運営していたのかもしれない。

パソコンのメール受信音が響いてきた。
どうやら依頼が入ったようだ。

メールソフトを開いてみると、依頼が1件入っている。
依頼人は20代の男性だ。
現在勤めている会社がブラック企業だが、なかなか退職させてもらえない。
逃げる手助けをして欲しい・・・というものだった。

私は依頼人に「依頼をお受け致します」という返事をした。
さて、ブラック企業からの脱出の手助けはどうするか。
情報収集が必要ということで、まずは潜入することにした。

数日後、私はとある会社に派遣社員として潜入することに成功した。
お昼の休憩時間に依頼人と合流し、人目のない場所で細かい相談をしていた。

ふと、周囲を見回すとあることに気付いた。
昼間だというのに部屋の中は薄暗い。
節電対策なのかもしれないが、やけに照明の数が少なかったように感じた。

視界が暗いのはプラスにもマイナスにも働くことがある。
顔を確認されにくいのは利点であるが、通路案内が確認しにくいと逃走経路を間違えかねない。
そのあたりは充分にチェックしておかなければならない。

脱出する時間帯は夕方から夜あたりが最適だろう。
多くの従業員が作業に追われてバタバタしている時間帯の方がこちらの行動を把握されにくい。

オフィスに置かれているパソコンを操作するカタカタ音が響いてくる。
作業に集中してくれるとこちらも動きやすい。

一見すると普通の会社に見えるのだが、それは見た目だけである。
ここ数日の情報収集で分かったのだが、悪名高いブラック企業だ。
〇〇社の○○部門、依頼人が勤めている部署が一番ブラックらしいことも分かった。

依頼人がその会社に入ってしばらくしてからブラックであることを身をもって知らされたらしい。
会社の寮が会社の敷地内にあることで、容易に脱出が出来ないような仕組みになっている。
見張りがどんな感じになっているのかも把握しなければならない。

ではなぜこの会社がブラック企業なのか。
理由は作業内容が複雑な上に残業が多すぎる。
加えて昔から噂されているオカルト的な話もあるようだ。

〇〇すると幽霊が出てくる・・・という内容だ。
〇〇の部分は作業内容だ。

過去にこのブラック企業で苦しんだ人が自ら命を絶ってしまった。
ひとりやふたりではない、もっと多いらしい。
彼等の怨念がひとつの形を成して、もはや悪霊の領域に達している。

条件を満たすと幽霊と遭遇してしまうというものだが、目撃者の多くは壊滅的なダメージを受けてしまう。

精神的に病んでしまった者、病気になって退職した者、人格が豹変した者・・・被害に遭った人の数は膨大らしい。

会社にあるパソコンがやけに気になってしまったので少し検索をさせてもらった。
うーん・・・ネット回線が少しおかしい。
もしかしたらパソコンの操作も条件のひとつかもしれない。

休憩時間が終わってしまったので、与えられた作業を淡々をこなしつつ様子を伺っていた。
夕方になるまでは何事もなく時間は過ぎていったのだが、何となく周囲の視線が気になってしまう。

逃げることに意識が行ってしまったことで、普段は気にならないものまで気になってしまうのだろう。

・・・いや、それともこちらの策略がすでにバレているのか?
そんなことはないと自分に言い聞かせる。

数時間後、行動を起こす時間がやってきた。
私は依頼人の仕事を手伝うふりをして逃げる準備を始めていた・・・。
さて、うまく逃げることが出来るだろうか?
見張りの目を盗んで営業のふりをして会社を後にする・・・。

気付いた時には目が覚めていた。

〇〇すると幽霊が出てくるの〇〇の部分が未だに思い出せない。
その部分だけ現実に記憶として持ってこれないような内容だったのかもしれない。

誰かが真似すると危ないのかもしれない・・・。

幽霊と遭遇した人の多くは大きな被害を被ってしまうのだが、ほとんどが体や心の病気になってしまうものだった。

もしかしたら・・・幽霊はブラック企業から逃げられるような状況にしてくれているのかもしれない、そう思ってしまった。

本当はいい幽霊なのかもしれない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?