世界のCOMME des GARÇONS(この言い方好きじゃないけど…
COMME des GARÇONSのデザイナーである川久保玲氏が文化功労者として選出されました。
今年メゾン発足50周年を迎えるCOMME des GARÇONSのヘッドデザイナー。
1981年にyohji yamamotoと共に参加したパリコレで『黒服、穴あきニット』を発表し、世界を大いに驚かせます。
それまでファッションの世界で喪服というイメージが強かった黒服をクールなものとして発表した事は世界に大きな衝撃を与えた事から、このコレクションは『黒の衝撃』として世界中を驚かせました。
それまでもCHANELが黒い装いを発表し、黒はクールなものという印象が芽生え始めてはいたものの、COMME des GARÇONSが発表したニットはそこかしこに穴が開いており、寒さを凌ぐという意味でのニットの意味合いを否定するものであった。
それは素肌に身につけた時に、肌の色が透け、黒とのコントラストがとても美しいというものでした。
それは作家、谷崎潤一郎も紹介した『陰翳礼讃』という日本固有の美意識をコントラストの美しさを洋服に落とし込んだものでした。
そこから黒という色を纏う事が最先端になったと同時に、良いものを丁寧に使用することによって滲み出る良さというものを世界に認識させました。
それからの彼女のクリエイションは常に世界を驚かせ、後出のファッションデザイナーに大きな影響を与えました。
後進の育成にも積極的で、渡辺淳弥(JYUNYA WATANABE)、栗原たお(TAO)を筆頭に阿部千登勢など現在のファッション業界を牽引するトップランナーを育成。
また、多くの技術力の高いメゾンとのコラボレーションを積極的に行い、日本のみならず今日の世界のファッションビジネスの礎を築いた人でもあります。
残念ながら現状、日本ではそこまでの評価を受けていないのが実情だったのですが(もしかして本人が断ってたのかも?)今回その栄誉を受けられた訳です。
それは彼女が意図してかそうでないかは分かりませんが…。
しかし、彼女の提唱した考え方が世界のファッションビジネスを今日の形にした事は間違いないと思っている。
個人的に最も大きいのは『洋服を作品として一般に浸透させたという事』です。
ファッション業界というものは、物が売れないと成立しません。
ですから季節ごとにこぞって新作を絶えず発表し、消費者に届けて販売する事が肝要となります。
その為には常に『最新の物に最も価値がある』と消費者に思わせなければ儲からない訳です。
しかし、常に最新の作品が消費者の心を捉えるということではありません。
洋服をデザイナーの作品と捉える事によって、美術作品のように扱われるようにした事はとても革命的だったと思っています。
それによってコレクションやアイテム毎に古い物に価値を見出される価値観が根付いたのは素晴らしいなと思っています。
昔のUNIQLOの製品にさえ価値がついているのがその証拠。
そんな価値観を作ったのが川久保玲という存在だと思っている。
これは国の偉い人の価値観のギャップであろうと思う。
それだけ多くの人はファッションに興味があろうと、一定の期間でそれを失う傾向があるという事を如実に表しているのではないか。
歳を重ねれば生活様式は必ず変化して行く。
そして、現在の日本の経済状況などを鑑みるに、ファッションに経済的余裕を割くという事はとても難しくなってきている。
余程の余裕があるか、それともファッションが好きかでしか継続させて行く事は難しい。
そんな文化はこの日本では非常に軽く見られている傾向がある。
総理大臣の眼鏡が10万円という事に非難が集まるのがいい例だ。
しかし、そんな中でも日本の美的感覚を根付かせ、それを世界的に浸透させたというのは何にも代え難い価値がある。
そこに対して遅すぎるとは言え、評価を得たのはファッションに於ける大きな光明だと思えました。
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