大山悠輔選手の特徴と進むべき方向

皆さんこんにちは!

いよいよ待ちに待ったプロ野球が開幕しました。阪神は幸先の良いスタートを切れたとは言えませんが、まだまだシーズンはこれからです。

さて、今回は大山悠輔内野手の打撃について考えていきたいと思います。

注目度の高い阪神の中でも一際注目を集めるこの選手は、その起用法やポテンシャルに関してファンの皆さんや評論家の間でも様々な意見があるように思います。

本来は中距離打者であり中軸に据えてはかわいそうだ、という意見や将来の四番としてのポテンシャルに疑いようは無いと考える人もいるでしょう。

今回はそんな大山選手の成績を分析し、将来歩んでいく方向性を考察してみたいと思います。

・GB/FBから見る長距離砲としての素養

まず昨年の大山選手の成績の特徴ですが、目を引くのがGB/FB ※1の小ささです。この値が小さいほどゴロが少なくフライが多いため、長距離打者として正しいアプローチと言えるでしょう。

2014~2019年のデータより、規定打席以上、GB/FB=0.8未満の日本人打者をリストアップしたのが以下の表になります。

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パッと見の名前だけでもお分かりいただけると思いますが、そうそうたる面々がリストアップされました。

表はwRAA ※2の数値で色分けしてあるのですが、wRAA20以上の数値を叩き出す傑出した打者が56名中27名と約半数に上る結果となり、全体の93%の52人が平均以上の打撃成績を収めています。

これより、GB/FB=0.8未満という基準は打者の能力を図る指標としてかなり信頼がおけそうです。

しかし、そのわずか7%に当たる平均以下の成績に終わった選手の1人が2019年の大山選手なのです。このカテゴリーに属する選手は他に3名いますが、松井稼頭央(39歳)、中島裕之(33歳・日本復帰年度)、亀井善行(36歳)とキャリアの晩年に差し掛かった選手達であり、身体能力の衰えと闘いながらのシーズンであったと考えられます。

それを踏まえると、大山選手の成績はかなり特異なものだと言えそうです。その理由は何なのか、何に問題があるのか、もう少し深く考えてみたいと思います。

※1…ゴロの打球数をフライの打球数で割った数値。(安打も含む)ゴロよりフライの方が多ければ1未満の数値になる。

※2…同じ打席数をリーグの平均的な打者が打つ場合に比べてどれだけチームの得点を増やしたか、または減らしたかを表す指標。今回基準として設けた20以上をクリアする打者は、大体年間20人前後になります。

・FBの中身

ここまでのデータから、大山選手はフライを多く打ててはいるものの打撃成績に繋がっていないのが現状です。

その原因を探るため、FBの中身をもう少し詳しく見ていこうと思います。

先ほどピックアップした打者のFBにおけるSoft%,Mid%,Hard%は以下の表の通りになります。

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ちょっとパッと見よくわからないので、これらの全選手の平均値と、wRAA20以上の選手の平均値を大山選手の数値と比較してみます。

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オレンジで表示した好打者達の平均値は全体の平均よりHard%が高く出ており、FBにおけるHard%が打撃成績において重要な要素と言えるでしょう。

この比較で目を引くのが、大山選手のFBにおけるHard%の低さです。全体の平均値から-5.9%、wRAA20以上の選手の平均値からだと-8.8%も低い値となっています。その分FBにおけるSoft%がそれぞれより+4.9%、+6.2%と高い値となっており、このあたりの数値が打撃成績に影響を及ぼしているようです。

と、ここで一つ確認しておきたいことがあります。それはFBにおけるSoft%,Mid%,Hard%とは何ぞやという事です。以下のリンクの【DELTAの守備評価<データ取得の基準>】の項を確認していただければわかると思いますが、単純にハードヒットした確率(高打球速度)では無く、いかに有効な打球であったか(=安打の確率が高いか)で分類されています。

極端な例を挙げると、フェンスギリギリまで運んだ滞空時間7秒以上のフライはSoftに分類されます。(ホームランとなった場合はHardに分類される)確かにそれだけの滞空時間があれば外野手はどの位置からでも追いつくことが出来るため、有効な打球とは言い難いかもしれません。しかし、それほどの打球を打てる打者の能力が低いかどうかは別の問題です。

現に山田哲人選手や山川穂高選手は比較的Soft%が高い傾向にあり、高々とフライを打ち上げてホームランを狙っていくスタイルであると推測されます。また、2019年の坂本勇人選手や2018年の鈴木誠也選手のようにSoft%が低く、Hard%が飛びぬけて高い成績は、いわゆるバレルゾーンに近しい有効な打球を数多く打つ事を目的とした打撃スタイルの結晶であると言えるでしょう。

これらの考えを元に、再び大山選手の打撃を考えて行きましょう。

・向かうべきアプローチ

とにかくHard%を伸ばす=有効な打球を増やすことが大山選手の成績向上につながるのですが、その道筋はざっくり先ほどの①Softを恐れずフライを上げまくるパターンか②一定の角度への強い打球を追い求めるパターンのいずれかのアプローチに分かれる事になります。

まず①ですが、現実的に考えるとなかなか難易度が高いように思います。本拠地甲子園球場は広く、高々と打ち上げてもなかなか結果として表れにくいですし、スタメン争いを常に強いられる今季にSoftに分類されるような(安打になりにくい)打球を多く打つのはプロ野球選手として当然避けたいでしょう。

したがって、今季の大山選手に関しては②のパターンを追い求めるのが最も有効であると考えます。Soft%を減らしてHard%を増やす、要するに昨シーズン多く打った平凡な外野フライを打球速度の向上と打球角度の低下でヒット・長打に変えていく実用的なアプローチを目指していってもらいたいです。

・終わりに

大山選手は1年目の時からリリーフの剛腕相手でもポーンと簡単に外野フライを上げていて、それを見るたびに私はこの選手の非凡さを感じていました。

しかし昨年しっかりキャリアを積んで、そろそろもう1ランク上の打撃を見せてもらいたい頃でしょう。昨年チームの打点王の大山選手ですが、平均以下の打撃成績に終わっているのも事実なのです。

今回取り上げた様な稀有な特徴を持つ、応援しがいのある楽しみな選手である事は間違いありません。大山選手がどう伸びていくのか、私も楽しみに待ちたいと思います!

また、今季はまだ21打席しか立っておりませんが、スイングが非常に力強く、大きな期待を抱いております。今季1号ホームランもライト方向に低く強い打球が打ててましたし、特徴であるGB/FBの低さも健在です。(2020.7.7現在で0.56)

今季の活躍を足掛かりに、GB/FB=0.8未満のメンツに負けないような日本を代表する選手になっていってくれるのを大いに期待し、応援し続けていきます。

拙い文章でしたが、最後までお読みいただき本当にありがとうございました!

データ参照:1.02-Essence of Baseball(https://1point02.jp/op/index.aspx)


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