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2024年3月28日

2024/03/28 06:47

腕時計が好きで小さい頃から着けることが習慣になっている。
一番最初に着けたのは父の友人からいただいたお下がりのデジタル式腕時計だった。
高校生の頃にプレゼントでもらったこともある。
社会人一年目で迎えた19歳の誕生日には自分で腕時計を買った。24時間計とタキメーターとストップウォッチ機能が付いた豪華版。仕事中に梯子から落ちて壊してしまった。

18歳から24歳まで働いた会社での話。
石油プラントに勤めていた。化学製品を混ぜ合わせて樹脂を作る部署にいたのだが、その行程はお世辞にも清潔とは言えず、そして冬でも暑くお世辞にも快適な環境とは言えなかった。古くなった配管から液体が勢いよく吹き出して、それを止めるために工具を携え作業着を濡らしながら仕事をしていた。
60歳を過ぎて再雇用で一緒に働いていた大先輩の社員さんと一緒に作業をしていた時、左の腕にチラリと覗く銀時計を見た。ベルトが緩いのだろう、手首に時計がぶら下がっているような状態で、様々な液体が飛び散る現場では使いにくそうだろうなと横目に見ていた。
「よーし、昼にするか」とぶら下がった腕時計を器用にのぞき込むその姿がかっこよかった。働く男の装飾品。実用的な装飾品だった。

今着けているの5年前に買った銀色の腕時計。文字盤が黒色で時間と日にちしか分からないシンプルな仕様。
当時一番欲しかった腕時計は当時の私のお財布と折り合いが付かず諦めた。少し背伸びして買ってもよかったが、背伸びをし続けるのは疲れるのでやめておいた。
後日分かった事だが、今の時計は先の話とはまた別の先輩社員が着けていた時計と同じであることが分かった。
その先輩社員に一度聞いたことがある。

「どうしてその時計を着けているんですか?」

「爆発や転落で命を落とすかもしれないから、もしそんなことがあってもこの時計だけは家族に残せるかなと思って」

生と死がちょっぴり近い、そんな職場だった。

2024/03/28 07:02

時計の針が15分進んだので今日はここまで。
ご安全に。

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