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【読書】『カエルの歌姫』如月かずさ

ほそく小さな声で歌われる、美しい歌みたい


本書の帯には、こんな文章が書かれている。

「アイドル志望の女子を紹介してくれ」ー。
校内放送で学校のアイドルをプロデュースする企画を立ち上げた幼馴染から、そんな相談を持ちかけられたぼくは、動画サイトに歌声を投稿している知り合いを紹介する。
しかしその「知り合い」雨宮かえるには、とある秘密があって―

そしてさらに、表紙のそで(内側に織り込んである部分)には、こんな文章。

ぼくの姿は、理想と全然違うけどー
だけど、いまのぼくにはこの声がある。
目を閉じたまま、完璧に暗記している歌詞に女声を乗せる。
その瞬間、ぼくは花崎圭吾から雨宮かえるになる。
この声で歌っているときだけ、ぼくはぼくのなりたいものになれる。
この声が、ぼくを本当のぼくにしてくれる。
いま、ぼくは雨宮かえるだ。


この本の主人公の少年は、自分がクエスチョニング(性自認を定めていない状態)だということを周りに告げずに生活している。
けれど「本当の自分でいたい」という内側からの叫びはふさぎようがなく、いつしか周りに伝わっていく。
細く小さな声で歌われる、美しい歌みたいに。

ありのままの自分で世界の前に立つために、
まずは自分自身がありのままの自分を心の底から認めなくてはならない。
そのことの葛藤と勇気に、知らず知らず涙がこぼれた。
かつて自分自身の中にもあった「ありのままの自分を認めたい、認めてほしい」という同じ切実な願いの記憶が、共鳴した。

子どもたちだけの本にしておくにはもったいない、ぜひ多くの大人たちに読んでもらいたい一冊。
読後感、最高です。



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