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いい予約って何だろう

キャンセル問題は予約問題

店の予約もキャンセルも簡単な時代だ。レストラン側の声を聞けば、直前、当日のドタキャンやノーショー(店に現れない)は、現在、頭の痛い問題になっている。予約というのは本来、来店前の重要なコミュニケーションの機会。初めての予約であれば、それはお客側、お店側、双方にとって初対面の挨拶のようなものだ。それが、ネットでいつでもどこでも簡単に予約できるようになって、双方のコミュニケーションが不足し、お客側の問題行為も増えているようだ。

 例えば、予約フォームの書き方。初めての予約であっても、来店理由や利用目的、挨拶の文言もなく、日時と人数だけで予約を入れる。店からすれば、初めての予約で来店動機が書かれていれば安心するが、何の情報もない場合は構える。情報のあるお客の予約を優先するし、予約を断るという選択肢もある。

 また、キャンセルポリシーが書かれていても、理由をつけてキャンセル料を支払わないという話もよく聞く。飛行機や電車なら、予約した便に遅れて支払うことは諦めるのに、レストランだと文句を言えば払わなくて済むという感覚がまだまだ強い、というのがレストラン側の実感だ。あるレストランでは、当日キャンセルの食材費をキャンセル料として請求しようとしたところ、逆に消費者センターに訴えられたそうだ。

 直前のキャンセルには、色々な理由が考えられる。例えば接待のために人気レストランを複数同時に押さえ、クライアントが店を決めたら、他の店には直前にキャンセルを入れるというケースはよくあるそうだ。が、大抵の場合、はっきりとした理由のわからないキャンセルが多い。特に大人数の場合、食材原価の負担が痛いのはもちろん、気持ち的にへこむと言う嘆きの声を店から聞くと、予約する側はもう少し、予約やキャンセルを慎重にした方が良いと思うのだ。

予約はいい食事の準備

 しかしこの問題、お客だけが原因と言うわけでもなさそうなのだ。予約の取れないレストランでは、3ヶ月先、半年先の予約もあたり前で、お客の希望日でない場合も多い。結果、キャンセルの罪悪感も希薄になるのかもしれない。そんな中、予約に関する問題が起きないよう、また、コミュニケーションの機会として積極的に生かす店もある。

 最近なるほどと思ったのは、敢えて当日予約に踏み切った店だ。今年春にオープンし、人気急上昇中の薪火イタリアン「TACUBO」のカウンター席は、基本当日予約だ。(※2016年8月 取材時の情報で、現在は、毎月1日11:30より電話で翌月分の予約、OMAKASEではさらに1ヶ月先の予約が可能。最新情報はホームページをご確認ください) 

オーナーシェフの田窪大祐さんは、新しい店を開くにあたり、様々な店を見て”予約が取れない店”と言われるのが良いかに疑問を感じたと言う。「自分だったら行きたい時にいける店がいい」。当日予約は、特に男性客の高い支持を得た。「仕事が忙しいと、なかなか数ヶ月先の予定はわかりませんよね。そんな人たちにも店に来て欲しい」。

 また、予約の取れない代表格の店でも、常連客だけにならないよう、新しいお客が予約できる席数を必ず用意している店もある。海外からの顧客も多い「傳」のケースだ。「傳」では、基本を電話予約としている。海外からの予約に限ってネットからの予約も受け付けているが、初めてのお客に対しては、日本到着後に必ず電話連絡を行い、アレルギーや苦手な食べ物といった基本的な情報に限らず、どういう状況での来店か、日本は初めてか、滞在何日目か、日本で食べたものは何かなどの情報をスタッフ全員で把握し、サービスに活かしている。その結果、ドタキャンという事態はほぼないそうだ。(※取材時の神保町から外苑前に移転。現在も電話予約が基本)

 今後もICTの進化とともに、予約手段のバリエーションは増えそうだ。宿泊と同じく、予約タイミングにより価格変動制になるという話もある。「ノーマ東京」がやって来た時、期間延長に伴う追加席の予約で、価格入札のシステムが導入されていたのは記憶に新しい。

 しかし、どんな予約方法が出てくるにせよ、席を押さえるのは最終目的ではない。最終目的は、いい食事の時間を過ごすこと。そのためには、電話であれ、ネットであれ、お店もお客も、事前にコミュニケーションを図って相手を知ることに積極的になった方が良いと思う。いい予約は、いい食事につながる準備に他ならない。

〜METRO MIN. INTO THE FOOD Vol.6  2016 OCT No.167〜

寄稿は2016年9月。このテーマを書こうと思ったのはfacebookで時々アップされる、レストランのドタキャン出たー。誰か来てー的な悲鳴から。色々な店から聞いたドタキャン話、キャンセルを繰り返す人、キャンセル料の渋り、取材で聞いた話は想像以上にひどいものが多かったです。ネットの気安さが非常識な人を増やすのか、非常識な人がそもそも多かっただけなのか。予約・キャンセル問題は相変わらず難しいなあと感じています。取材当時、オープンしたばかりだった「TACUBO」も今や大人気で予約の取りにくい店に。人気が一定ラインを超えると、お店の意向もなかなか貫くのが難しいのでしょう。予約システムも色々な会社が出て来て、レストラン側も試行錯誤している様子がわかります。が、個人的には3ヶ月以上先しか取れない店になってしまうと足が遠のきます。予約の取れない店は、予約を取ってくれた人が誘ってくれた時、もしくは店がSNSでキャンセル情報をアップしていてうまくタイミングがあった時ぐらいしか行きません。この先、レストランのネット予約は、デポジット制にするのがフェアかなと思います。予約とキャンセルがどうあるべきか、どんな工夫ができるのか。関心ある店は多いでしょうし、メディアはもっと取り上げたらいいのにと思います。



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食とコミュニケーションがライフ=ワーク。食まわりのディレクション、執筆、プランニング、コンサル、日本各地も大好き。食べて飲んで聞いて考えて何か出す。KOTODAMA(言霊)を大切にしています。noteにサークル「Blue Monkey Room」開設しました。

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『メトロミニッツ』で2016年5月にスタートした連載コラムを順次リライトしていきます。

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