おっぱいに顔を埋められなくなった日

幼き頃、私には半年に一度限定でおっぱいに顔を埋める機会があった。お姉さんに顔を覗き込まれ、口に指を突っ込まれ綺麗にしてもらうのである。そう、歯科検診だ。

思春期真っ盛りな私はその日もウキウキで顔を埋めようとしていた。ただその日の衛生士さんのサイズは絶妙であった。私は顔を埋めるため、じわりじわりと健診台の上の方ににじり寄っていた。頭頂部が服に触れた!と思った瞬間、衛生士さんが声を発した。「先生呼んできますね」

私はその瞬間、にじり寄りがバレたと悟った。「今後女性の衛生士でなくなったらどうしよう。」そういう疑念が頭を駆け巡る。やってきたのは男性の先生であった。私は親に伝えられることを覚悟した。先生は一言こう言った。「虫歯ですね」

「痛かったら手あげてくださいね」そんな約束は忘れさられ、おっさん先生は気持ち良さそうにドリルを突っ込んでくる。頭にズンズンと響く音で気を失いかけた時、先生は満足そうな顔で「終わりましたよ」と告げた。

その一回は私に確かなトラウマを植え付けた。今日は久しぶりに歯医者に行く。あれから10年近く経つが、やはりトラウマは拭えない。どうか今日は衛生士さんで終わりますように。


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