誉れは海でタヒんだ

先日、北海道に来て初めての誕生日を迎えた

子供の頃、俺は誕生日が来るのを気にしないような大人が嫌いだった。
俺は誕生日が大好きだった。
プレゼントをもらえるし好きな食べ物だって食べられる。
運動と勉強がそこそこできたから、今年はどれだけ自分が成長できるのか、自己研鑽的な面でも、好きだったかもしれない。
だから、そんな誕生日を気にしてないような大人が大嫌いであった。
今日が誕生日なのを忘れていたと俺の祖母はよく言った。
俺が実家でかわいがっている犬のことを畜生と呼ぶ祖母だ。
そんなことを毎年、忘れてしまったように言う祖母を見ると、俺は嫌な気持ちになった。

誕生日が来るのをほんとは何か月も前から楽しみにしていたであろうに、それを気にしないことでなんかかっこつけているような気がしていた。
そういえば、かっこつけるおばあさんって見たことない。
海外の面白映像的な奴で、交差点を渡るおばあさんの歩みが遅いことに腹を立てたドライバーがクラクションを鳴らすと、すごい勢いでボンネットを小さめのカバンで殴りつけて、エアバックが作動するという動画があった。あれはマジで何回見たかわからない。
今思うとあれは現在のTikTokだったし、YouTubeshortでもあった。
テレビは時代の最先端をいっていたのかと思ったが、そもそもあんなshort動画を時代の最先端だとは認めていない俺は、そんなことはないだろと思った。

そして、誕生日に気づかないふりをする祖母は今年で多分90くらいになるんだと思う。
俺は24歳になった。

誕生日は最悪な一日だった。
誕生日の俺は木材を売るメーカーというキモい会社で働いている。このきもい会社は1月までやめることになっている。
8月末に10月末でやめるといったのに、1月末になるというのもきもい会社たる所以だと思う。

朝から大工から電話がかかってきて、現場に来いと言われた。
きもい会社は建具や床材なども販売しており、家を建てている現場の大工から直接連絡が入るのだ。
北海道の知らん場所に呼び出された俺は建具の調整を終わらせた。
(終わらせたといっても、取手を外して、もう一回付け直しただけであり、特に何かを調整はしていないのである。いわば、これは一種のパフォーマンスのようなものであり、見た人に精神的な安楽を与えるが何も生み出していないという点では占いに酷似しているのである。)

昼飯はラーメンを食った。
美味くてよかった。変な店名だった。
ラーメン屋には奇をてらった名前が多く、苦労して出店をした店にそんな名前を付けている店主に碌な奴はいないので、どうせ遊びでラーメンを作って、学生のノリで販売しているような奴らとしか思っていなかったため、これにはたまげた。うまいラーメンを作るが、ただ変な名前を付けてしまった店主だった。

少し遠出して、クレミアソフトを食べた。
大学生の時に、サーフィンなんてほとんどできないのに友達と一緒にレンタカーを借りて海に行き、ただ適当に波に漂ってぼーっとした後に、帰りのサービスエリアで買って食べて以来、何年かぶりだった。サービスエリアの喫煙所でハイライトのメンソールを吸いながら食った友達がタバコと一緒に食べるとより美味いというまったくもってのウソを言ったことをなぜか覚えている。クレミアソフトを食べた後はその友達が運転をしたのだが、花粉症で目が開かないと言いながら運転をしていたのが怖かったのも覚えている。

そんな楽しい思い出があったからだろうか。とてもおいしかったという印象があったのだが、何年かぶりに食べたそれはあんまりおいしくなくて思い出補正っていうのは本当に存在をすることを知った。
そういえば去年の誕生日は何をしていたんだろう。
去年の誕生日は仙台にいた。水曜日だったので、適当に過ごしたはずだ。
友達もいなかったしどうせ楽しいことなんか一つもなかったんだろう。
仕事を辞める理由の一つに休みの日がまったく楽しくないというのがある。
俺はあんまり友達もいないし、頻繁に友達と遊ぶこともなかった。
だから、別にどこで生活していても、問題なんてないだろうと思っていた。
でも誰も知らない場所に来ると、やっぱり寂しいんだね。
そんなことを上司に言うと、社会人になってからもそんなことを言うなんて甘いといわれた。
そんなこと言っても一年半くらい前まで何もせず、だらだらしていたやつが甘くないわけがないだろ。そういうのを分かったうえで発言しろよと俺は思った。

クレミアソフトを食べて事務所に帰ると、ゴミみたいな事務処理がたまっていた。頭がおかしくなりそうだった。日本にはこんなにたくさんの人がいるのに、どうして全員働かなければならないんだろうか。ただ泣きたくなるの。

当然のように残業をして家に帰る。
午後9時に家について何を楽しめばいいんだよ。
スーパーで丸ごとバナナを買って食った。
一つは食えないだろうなと思ったけど食えた。自分の予想を超えた。
好きだった本も最近読めていない。
こんなにきもい毎日。
コビーがいるなら、俺に向かって言うだろう。
「もうやめましょう!!命がもったいない!!」
それを見て俺も泣くんだ...…
そして、コビーと俺は海に行くんだ。
砂浜に座り込んだ二人は特に何もしゃべらないんだ。
たまに俺が枝を海に投げるんだ。
そしてその枝は波に戻されてまた帰ってくるんだ。
1時間くらいしたら帰るんだ。
車は多分エヌボックスなんだ。
帰りにはサービスエリアでクレミアソフトを食うんだ。
そして銭湯にでも行くんだ。
サウナも入ってもいいかな。
風呂上りにはポカリスエットなんだ。
失ったミネラルとビタミンを補給するんだ。
そんな日々が来るんだ。
それでもタキが大好きなんだ。

ユルゲンクロップ監督へ
リヴァプールを優勝へ導いてください。

最近は日プを見てます。
みんな頑張れ!
俺が一番頑張れ!


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