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「日本論」

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日本人が大好きな「日本」とはというテーマ。国際化が進み「日本」の存在感は薄くなってきているように思いますが、今まで気づかれてきた長い「日本」社会の影響は日本人の心の中に少なからず… もっと読む
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#人生論ノート

人は未来をコントロールしたいと思うけど

もし一切が必然であるなら希望というものはあり得ないであろう。しかし一切が偶然であるなら希望というものはまたあり得ないであろう。 三木清の人生論ノートの希望についての冒頭の一説です。 もし、未来におこる一切のことが偶然で起きているのであれば、将来をよくするために努力することはないでしょうし、もし未来におこる一切のことが自然の法則にしたがって必然的に起こる物であるのだとすれば、これもまた将来をよくするために努力することはないでしょう。 私達は未来におこることを因果律にそった

『人生論ノート』 ー感傷についてー

三木は感傷についての冒頭で様々な感情と対比させて感傷をこのように論じています。 しかるに感傷の場合、私は立ち止まる、少なくとも静止とも近い状態が必要であると思われる。動き出すや否や、感傷はやむか、もしくは他のものに変わっていく。                    ー人生論ノート 感傷についてー 三木は感傷にひたるということは、自分の人生という物語を停止させて、ただ立ち止まることだといっているように思えます。なので、感傷を克服する方法として、この文に続けて、三木は次のよ

「うらみ」と「ムラ」の分配

嫉妬とはすべての人間が神の前の平等であることを知らぬ者の人間の世界において平均化を求める傾向である。                三木清 ー人生論ノートー 嫉妬について 三木清の言葉ですが、人が集まれば人は人に嫉妬したり「うらみ」を持ったりします。さて、日本人は長い歴史のなかで河合の言う「うらみ」とどう対処してきたのでしょうか。きだみのるの書いた「にっぽん部落」のなかにそのヒントが書かれていたので紹介したいと思います。 きだは日本の社会的集団のなかでもっとも小さい単位で

「あはれ」と「浮き世」

我々の感傷的な心は仏教の無常観に影響されているところが少なくないであろう。それだけに両者を厳格に区別することが肝要である。                三木清 人生論ノート ー感傷についてー 三木清の人生論ノートからの引用です。仏教の無常観に我々の感傷的な心は影響されているとのことです。そこで、「あはれ」と日本人について歴史的に考えるために、日本人と無常観について、阿満利麿さんの『日本人はなぜ無宗教なのか』をテキストに見ていきたいと思います。 仏教が教える「無常」は、あ