その薬、何?怖(2023年11月19日の日記)
・今日は映画「火の鳥」を見た話しかしないぜ!!!!
・映画「火の鳥」を見た。漫画を読んだことが無かったので読んでから見ようかなと思っていたが、最寄りの映画館のホームページを見たらもうすぐ上映が終わると書いてあり慌てて見に行った。
・そもそもわたしは火の鳥の概要を何にも知らない。色んな「〇〇編」があるのは何となく知っている。今回は「望郷編」がベース?何にもわからない状態で見ても大丈夫な構成なのか不安だったが、結果的には大丈夫だったな。
・もう昔の漫画が原作だからネタバレということも無いけど、一応物語の大筋に触れるので嫌な人はこれ以上は見ないでください。
・恋人と一緒に地球から逃げ出してきた主人公のロミは、辿りついた惑星でうっかり1300年コールドスリープしてしまい、目覚めた時惑星(エデン)には文明が確立していた。惑星の女王として丁重に扱われ数十年を過ごすも、自分の死期を悟ったロミは最期にもう一度地球に帰りたいと惑星を飛び出す。
・またなんやかんやあって地球に辿り着くも、そこは環境破壊が進み選ばれた人間しか住めないディストピアになっていた。追手の追跡を逃れながら故郷の島に行き、思い描いていた美しい地球の姿を見るが、やはり自分の故郷はエデンだと思い直して帰還する。ロミが去った故郷は追手によって消滅させられる。
・ロミたちがいない間に、善良で無欲なエデンの住民には「欲」が与えられたことで暴力、略奪、果ては戦争が起こり、ロミが帰った時にはすでに都市は滅亡していた。
・わたしは単純な機微を持っているので、ロミの行動で滅亡した故郷とエデンを見て正直「こいつ勝手すぎるな……」と思ってしまった。
・まず最初に地球から脱出し、恋人のジョージとエデンにやってくる。この時点では地球を出て来たばっかりなので「帰らないぜ」という意志を持っている。
・ジョージが事故で死んだあとに、子どものカインが生まれてしまう。ジョージがいない以上、この後子どもを増やすことは出来ないので、自分が死んだあと一人で残されるカインを憐れみロミは13年のコールドスリープに入る。
・ここでうっかり1300年眠ってしまうところからすべてが狂い、狂ったことで物語の歯車が回りだしてしまう。1300年眠ってしまったことはロミのせいではない。自分と恋人が勝手にエデンにやってきて勝手に作った自分の子どもを誰もいない星に残すわけにはいかない、と思うのは理解できる。
・しかしこれ映画版の話であって、wiki見たら漫画の望郷編でロミが眠りにつく過程はもっと違うみたいですね。とりあえず映画版だけの話をするけど。
・映画版では結果的に約束の13年後にロミは目覚めずカインは絶望するが、そこにたまたまやって来た宇宙人ムーピーによってカインは孤独から救われ、1300年後にロミが目にするエデン繁栄の礎となる。
・そしてロミの目覚めから数十年後、老いたロミは自らの死期を悟ると共に、遥か昔に飛び出してきた故郷、地球への望郷の想いを募らせる。映画を見ている時は、こいつ自分で捨ててきた癖に何を言っているんだと思ったが、映画内ではロミの目覚めから数十年が経過しており、その間ロミはエデンで生活をしていたことになる。夫も息子もいない地で女王として恭しく祭り上げられ、親しく話すものも少ない。惑星の住人は遺伝子こそ自分の息子の子孫とはいえ、ムーピーとの混血であり、のちに現れるズダーバンに「欲が無く素朴」と評されるように人間のような感情には乏しい。それ故に争いが無く平和だったが、それはロミにとってはより孤独を深める要因になり得たかもしれない。
・しかし最後にやっとこ故郷に辿りつき、「死ぬまでにここに来たかった」と喜ぶものの(これは映画の尺の問題もあると思うけど)、すぐに「やはり自分の帰る場所はエデンだ」と再びエデンに帰るのは正直何で?と思ってしまったけど、ロミはすでにエデンで過ごした時間の方が地球で過ごした時間よりも長い。例えエデンにはすでに夫も息子もないとしても、その地には眠っている。2つの故郷を持っていると言っても過言ではないロミからすると、自分の近しい人間が誰もいないという点では地球もエデンも同じであり、地球には生まれ育った「環境」に対する望郷を、エデンには「大切な人との思い出」に対する望郷を持っているのかもしれない。
・知らんけど。
・それにしても、ただ「帰りたい」という誰しも感じる望郷の想いを叶えるためにロミは2つの故郷をいずれも滅ぼしてしまった。ロミ自身の手でそれらを行ったわけではなく、あくまで副次的な結果であったとしても、誰かの欲望ですべてが変わっていく様には人間の業を感じる。
・個人的にはやはり無欲で素朴だったエデンの住人たちが、ひとたび「欲望」という感情を与えられた途端に争い憎み合ってお互いを滅ぼしたのが一番印象的だったな。欲望は繁栄と滅びを両方運んでくる。わたしがまず彼らに感じたのは起伏の無い情緒への薄気味悪さで、その後欲望を得て争う様に親近感を覚えたことに気付いて驚いた。彼らは二足で歩行し、言葉を交わしていた。目と耳は退化していたがそれ以外は人間と一緒だ。わたしは「争い」をより人間らしいものとして認識しているんだろうか?彼らにとってはどちらが幸せだったんだろう。
・というか何より井戸に毒を入れるかのようにスッと飲料水に「欲望を発芽させる薬品」を混ぜたズダーバンお前何なんだ。血も涙もなさすぎる。そもそもその薬、何?怖。
・カインと最初に出会ったムーピーは姿を変えてずっと生きていたわけで、ロミが滅亡したエデンに帰還した際にも彼女を迎えに行っている。今回薬品の混ざった飲料水は飲まなかったんだろうか。それとも彼/彼女のような純潔のムーピーにはそういった薬品は効かず、あくまでエデンの住人たちは人間とムーピーの混血だったからこそ、眠っていた人間の部分が薬品によって増長させられたと考えるべきなのだろうか。
・1時間半にまとめられているだけあっておそらく省かれた箇所はたくさんあるだろうな。冒頭部分だけでもロミが眠った理由がだいぶ違ったし。あくまで漫画未読で映画だけ見た上の感想なので、また今度漫画を読もうと思う。
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