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隣の芝が青い保証①(2024年8月19日の日記)

・東京って暑いな。

・いや、普通にわたしの住んでる地域の方が暑い。それはそうなんだけど、東京って外に放り出される時間が長すぎる。わたしの地域は死ぬほど暑いけど、車移動だからクーラーがある環境にいやすいのだ。東京は電車と歩きが基本だから否応なしに暑い場所を通らないといけない。過酷な地だ。

・お金無いし電車は鈍行だし、と思い18きっぷを買ってしまったが、これをあと4回分使い切るには外に出る必要がある。今日だけでも暑さでだいぶ嫌になってしまった。どこかに行くにも車を使った方がよほど快適だ。でもお金がかかるんだよなあ。大して出かけてもいないのに、1週間前に満たんにしたガソリンがもうなくなりそうだ。ガソリンに高速代、ランニングコストを考えたら、こういう遠出の際は暑いのにも耐えてなるべく安い移動手段を選択するほかない。仕方がない。金が無いとはそういうことだ。

・地下鉄の駅は必死に冷やさないと蒸されてしまうので、構内を歩いていると強めの風力で冷気が排出されている箇所に定期的に遭遇する。このポイントはかなり涼しい。そういう箇所はいくつもあるのに、ほとんどその前で涼んでいる人がいないのは不思議だった。みんな暑いはずなのに、こういう涼ポイントに集まらないのは何でだろう。わたしはホームで待つ時間があったらなるべく冷気の出口になっているところや、風が流れてくるところを探して立っていた。わたしが把握していないだけで、何か都会の常識があるのだろうか?とんでもなく空気が汚いとか?今さらな気はするが。


・東京駅はめちゃくちゃに混んでいた。いつもこんなもんだったかな?最後に来たのは年明けくらいだから忘れてしまった。お盆明けだからもう少し空いているかと思っていたけど、お盆は明けても夏休みなんだった。


・行方不明になりにきました。


・これフィクションなのか~。ペットボトルの経年劣化の感じとかどうやっているんだろう。山で拾ってきたのかな。

エアコンのリモコンが混ざっている

・展示の中で「行方不明になりたい」と望んでいた人々がたくさん出てきて、ちょっと不思議な感覚になった。「ここではないどこかに行きたい」「今の苦しみから逃げて楽になりたい」みたいなことはよく聞くし、わたしも近いことを考えている真っ最中ではあるんだけど「行方不明になりたい」と思ったことは無かったな。望んでいる状況としては一緒なんだろうけど、何というか、すごく違和感のある表現だ。それがこの展示全体の不気味さを醸す一端を担っているのかもな。「行方不明」って行方不明になる人が自分のことを指して言うことじゃない気がする。あくまで周りの人がいなくなった家族や隣人に対して使う、第三者的な表現のはずだ。たぶん「行方不明になりたい」っていう言葉の不可解さはそこから来ているんだと思う。

・展示を進んで行くと「行方不明になりたい」と願った人々が辿りついた(かもしれない)別の世界の存在が示唆された。確かにここに行ってしまった人、もしくはどこかからこちらに来てしまった人からすれば、自分の行先が不明なのだから「行方不明」なのかも。「行方」には「行くべき方向」、という他に「これから行く先」「未来」という意味もある。後者の意味がわからなくなってしまった人々が、自分の人生に対して主体性を感じられなくなり「行方不明になりたい」と願う。そして一定の条件や偶然が重なった結果、どこか別の世界へ接続してしまうことがある。そうなってしまった人のことを、元の世界の人々は忘れてしまう……。

・1階フロアの展示を見ている時点では、フィクションとされてはいるものの、どこか現実味があるというか、日本のどこかではこういうことが起こっていてもおかしくないな、と思っていたが、地下フロアに行った途端、急にフィクションが強まった感じがした。

・でも「別の世界」はあると思うんだよな。パラレルワールドという言葉があるけど、今の世界はそこで生きている何十、何百億の生命の選択で成り立っている。人間だけにとどまらず、動物や気象などの事象もそうだろう。どれかひとつ違っても「今」の世界にはなり得ない。だったら、無数の「選ばれなかった」世界があってもおかしくはない。そういう場所に接続してしまい消えてしまう人々。平行世界に行ってしまったとしたら、こちらの世界では「もとからいなかった人」とならないと齟齬が生じてしまうから、残された人が忘れてしまうのもわかる気がする。

・ただ、どんなに現状が嫌でどこか別の世界へ行きたいと願っても、行った先が今よりもっと良い、なんて保証はどこにもない。

「(前略)色んなものから離れて、ここから消えてしまいたい。ふっとここではない世界に行って、ぜんぶ忘れて、忘れられて暮らしたい。でももし本当に行方不明になれたとして、ここではない世界に行けたとして、その先であなたがちゃんとやり直せるって保証はどこにあるんですか?」

・ある展示に書いてあった、兄が行方不明になった妹の手紙の一文がずっと引っかかっている。結局これなんだよな……。

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