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浅倉彩・小山龍介|コンテクストデザインの世界 新しい〈意味〉を付与する創造スキル

今回、登壇いただくのは、コンテクストデザイナーという肩書で活躍中の浅倉彩さん。お会いしたのは、私(小山龍介)が登壇した京都でのイベントで、彼女はそのイベントに対して「ソーシャルワーカー」という言葉を置いて、全体の流れを設計していました。イベントでは、まったく異なる活動をする3人の登壇者がソーシャルワークという文脈の中でしっかりと位置づけられていました。そうした文脈(コンテクスト)によって、登壇する一人ひとりの語る話(コンテンツ)の意味合いが変わっていく。コンテンツだけでなく、コンテクストをつくりあげていくのです。

イベントだけではありません。飽和する市場において、ものの価値はどんどん低下しているなかで、価値を創造するためには、ものをどのような文脈に置くのかを考える必要があります。また芸術の世界でも、現代芸術は表現そのものよりも、その表現を行うことのコンテクストが問われています。

浅倉さんの提唱するコンテクストデザインは、そうした現代の状況において強力なパワーをもたらしてくれるはずです!

コンテクストデザイナーという仕事

浅倉彩(以下:浅倉) これまでは編集者・ライターという肩書で商品やプロジェクト、企業、地域、人物の独自性のある美点を見つけて、言葉を与えるという仕事をしてきました。ですが編集者・ライターって自己紹介すると、必ずと言っていいほど「どこの雑誌に書いてるんですか」っていう質問をいただくんです。最初の頃は雑誌でお仕事をしていたので、それでよかったんですけど、だんだん企業のブランディングが増えていくにつれて、着てない洋服を着せられている感が出てきました。そこで、自分の肩書そのものをコンテクストデザインし、「コンテクストデザイナー」と名乗り始めました。

コンテクストデザインってどういうことかと言うと、言葉には固定観念に結ばれたコンテクストが存在して、しかもそれはひとつではなく、いろんな要素や固定観念があり、ひとかたまりになっている状態です。なにか新たな価値を与えたり、新しいことをはじめたりする時に、一度そのコンテクストをバラバラにしています。

今までいろんな取材でお会いしてきた方で、独自性のある方は、必ずそこにコンテクストを分解するプロセスを経ているんじゃないかと思っていまして、その時に有効なのが、名前や言い方を変えること。最近だと「◯◯2.0」っていう表現で新しい感じを出すことがありますが、呼び方そのものを変えることも有効です。

たとえばある言葉にいくつかの要素があるとしたら、それを一度バラバラすることで、さらにこの間に「問い」が入り込む隙ができる。そうすることで新しい別の要素が入ってきて、新結合を起こします。そうすることでよりいいものが生まれるのではないかと。こうやって、新しい名前を与えたり、問いを設けて新しい要素やコンテンツが吸い寄せられてくる状態を作ったりすることを、私のなかではコンテクストデザインと言っています。

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名前を変えることで新たな文脈からのストーリーが生まれる

小山龍介(以下:小山) 具体的にはどんなことがあったりするんですか。

浅倉 コンテクストデザインで最近頂いたお仕事のなかでわかりやすいのが、ソーシャルワーカーズラボという活動をいま仲間と一緒にしていまして。コンテクストってなんだろうって改めて考えていくなかで、コンテクスト、コンセプト、コンテンツ、この3つの関係性から紐解いていきます。

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ソーシャルワーカーズラボでいうと、まずコンセプト。目的と戦略として、福祉業界に優秀な人材を採用するというのがある。今までは、日本の福祉のアップデート、質の向上、生産年齢人口が減少するなかで介護とか福祉をどうするのか、といった課題の解決に向かっていくという目的がありました。その戦略として、異分野からの越境人材を獲得したい。これに対して「福祉」という言葉を使っている限りどうしても福祉に付随したイメージがあり、例えば心優しい人が働いている、施設でお世話をするような仕事、3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれてしまう、きつい仕事なのに所得水準が高くない、という強固なイメージ、コンテクストがついて回ります。

このままイメージを変えるのが難しいだろうということで、「福祉」という業界で見るのではなくて、一回分解していったときに見えてきた「働き手の方たちが社会貢献をしている」という見方をすることで、「ソーシャルワーカー」という言葉と紐付けたんです。そして「ソーシャルワーカーズラボ」という名前にしたことで、ソーシャルということには興味があるんだけれども、福祉が全然視野に入っていなかった学生さんが参加してくれて。ソーシャルワーカーズラボの「ソーシャル」という言葉に惹かれていってみたら、福祉の話だった。そこではじめて福祉もすごい社会貢献があるんだと。国際協力とかに興味があった学生さんたちが福祉に関しても興味を持ってくれたという結果になったんです。

ソーシャルワーカーという言葉を置いたことはチャレンジだったんですが、結果的に他のいろんな分野の社会貢献をされている働き手の方たちが、「福祉」という言葉では流れ込んでこなかったような文脈のストーリーが流れ込んでくる結果になったのではないか、と考えています。

いまスタート地点で、これからソーシャルワーカーがどんなものか、まさに問いが生まれた状態だったりするので、それによって新しいソーシャルワーカー像、福祉像をつくっていけたらいいなという感じです。

小山 福祉のことについて詳しくないけれども、いろんな接点というか、実は同じようなことをやっているなという、共通の土台みたいなものができてきて、今までは完全に切り離されていたものが、ソーシャルワーカーという言葉でつながった、新結合したということなんでしょうね。

浅倉 なので、そういうことがいろんな場面であるんじゃないかと思っています。何をしたかというと、コンセプトに対してコンテクストになりえる依り代のような、今回で言えば「やさしいふつう」というキャッチコピーだったりとか、「ソーシャルワーカー」というネーミングだったりとか、そういうものをおいたことで、新しいコンテンツ、現象が寄ってきて、新しいひとつの世界観が生まれたと思います。

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