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映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」に見る NIKE コルテッツとアメリカ近代史など

1995年に公開されたトム・ハンクス主演の映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」のレビューと言うかネタバレありのリコメンド記事です。


ネタバレが嫌いな方もいるとは思うんですが、史実に基づいたパロディシーンが多くあるため知っていた方がより楽しめる映画なので記事にしてみました。

どうしてもネタバレが気になる方は鑑賞後にでも読んでいただけると嬉しいです。

NIKE CORTEZ (コルテッツ)

原作ではサヴァン症候群とされ、Gump(うすのろ、愚か者)と呼ばれる主人公フォレストが愚直ながらまっすぐ人生を走り抜けていくような映画。そんなフォレストが恋人ジェニーからプレゼントされたNIKEのランニングシューズです。

50年経った現代でも販売されているコッペパンみたいなずんぐりむっくりしたデザインが特徴的ですね。

1972年に旧 BRS(ブルーリボンスポーツ)がオニツカタイガーから独立してNIKEになって初めて作られたスニーカーがこのコルテッツです。

スニーカーマニアとしては気になるモデル年代

初代コルテッツ トゥバンパーとヒールタブが特徴的。実はサンドイッチ構造のソールが売り。

ところでこのコルテッツ、50年の間にマイナーチェンジがされています。
作中でも年代に合わせたのか箱のnikeロゴが小文字筆記体表記だったりしていますが、そもそもこの映画の始まりは1950~1980年代を舞台にした映画。

となると、コルテッツがプレゼントされたであろう1970年代はあの筆記体ボックスなら初期のトゥバンパーとオニツカタイガーよろしくヒールタブのある初期モデルか、ヒールタブなしならロゴは縦NIKEのはず!

ヒールのロゴが現行品と違って斜めじゃなくまっすぐ。通称 縦NIKE。

ハリウッドなら当時物のデッドストックを準備するくらい容易かっただろうになぜ!?

コルテッツでアメリカ大陸を走り続けるフォレスト

一心不乱に走り続けて有名になったフォレスト。

そんな年代が曖昧なコルテッツで走り出し、アメリカ大陸を横断したりするんですが何か既視感が…

弟子入りを申し込まれるフォレスト。
青年の写真プリントシャツも当時のアメリカンカルチャーだったりする。

このヒゲモジャスポーツおじさんどこかで見たような…


これHIKE NIKE おじさんだ!!
(※HIKE NIKE:コルテッツ開発から各スポーツシューズに派生していく中でアウトドア・トレイルシューズに渡る過程で作られたシリーズのキャラクター。ACG(All Conditions Gear)の前身とも言える。)

このパロディだったのか。

他にもパロディがいくつかあった

そういえばこれ以外にも作中ではパロディがいろいろありました。
気付いた範囲で紹介していきたいと思います。

スマイルマーク(スマイリーフェイス?)

Tシャツにサインを求めたら泥だらけの顔を拭かれてしまったシーン

本当はハーベイ・ボールさんがデザインしたマークだけど、作中ではこのTシャツをヒントにしたとされていました。

果物の会社

かつての軍での上司かつビジネスパートナーとなったダン中尉はから、投資した【果物の会社】が上場して「もう俺たちは金の心配をすることはないぞ」との手紙をもらったシーン。
果物会社のロゴがw

ちなみにこの時、もし25000ドルくらいの投資をしていたとすると現在は900万ドルくらいになっているだろうという概算だそうです(笑)。

著名人との合成シーンとアメリカ近代史

そういえばジョン・レノンとインタビューを受けたシーンもあったと思います。違和感なかったけどジョンはすでに殺された後だし合成だったけどこれは自分が知らないだけで他のシーンにも何かあったんじゃないか?

と、言うことで遡って各シーンを調べてみました。

アラバマ州立大学事件

フォレストがアメフトで入学することになったアラバマ州立大学。
その1963年に黒人が入学することになりましたが、人種統合に反対していたアラバマ州知事が軍で大学を取り囲み入学を拒否するシーンが盛り込まれています。

そもそも人種差別という発想がないフォレストは空気も読まず(読めず)黒人学生が落としたノート(だったかな?)を拾ってあげてキョトンとされる
シーンは、こういった背景を知っておいてこそ面白さが伝わる気がします。

フォレスト × ニクソン大統領からウォーターゲート事件

 フォレストがホテルに宿泊した際に、向かいのビル(ウォーターゲートビル)からの懐中電灯の明かりが眩しくてクレームを入れたシーン。これがきっかけでニクソン大統領が辞任するまでになったウォーターゲートビルへの盗聴侵入事件が発覚した。(ことになった)

コメディタッチでサラっと過ぎるシーンですが、史実の方も裁判からもみ消し、証拠隠滅、お粗末な犯行などなかなかに映画のような面白い事件だったりします。

ピンポン外交からのフォレスト × ジョン・レノン 

プログラムされたマシンのようにピンポンを打ち返し続けるフォレスト

ひょんなことからピンポン(卓球)の才能が見いだされてアメリカ代表として中国にまで卓球をしに行くことになったフォレスト。

この時代、アメリカと中国の関係が悪い時期だったが卓球を通して国家間の摩擦が薄れることになった「ピンポン外交」に絡めたシーンでした。

たぶんオノ・ヨーコをCGで消してフォレストが合成されている

そして中国から帰国したフォレストにジョンが皮肉った質問をするシーン。
フォレスト 「中国の人々は何も持っていない。教会もないから行きません」
司会 「(宗教もないの?)信じられない」(Hard to imagine.)
ジョン 「・・・しようと思えば簡単だよ」

ここの会話は Beatles のImagine の歌詞そのものでした。

ベトナム戦争とブラックパンサー党

ベトナム戦争から帰って、リンカーン記念館の前でブラックパンサー党(※)の反戦集会でなりゆきでスピーチをすることになったフォレスト。軍服を着ていたため、軍人が反戦スピーチをしてしまう事に反対した軍の関係者によってマイクを抜かれてしまいスピーチの内容は誰にもきこえなくなってしまった。

しかしそこにはブラックパンサー党の仲間として後にコルテッツをくれるジェニーがいてフォレストと再会を果たした。スピーチの内容は誰にもわからなかったけど、ヒッピーの恰好をしたどう見てもブラックパンサー党のジェニーと軍服のフォレストが抱き合う姿に民衆は喝采を送るシーンが印象的だった。

※ブラックパンサー党:黒人民族主義運動を行っていた共産主義者の集まり


などなど

といった感じでスニーカーからだいぶ話は逸れましたが、アメリカ近代史に触れつつフォレストの苦難もまっすぐ走り抜けるドラマが楽しめるので観たことある人も、そうでない人にも今一度オススメしたい良作です。

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