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Bandcampに感謝!! 2019年に教えてもらったお気に入りミュージック40

Selected by Kei Wakabayashi (blkswn welfare centre) 

音楽配信プラットフォームはさまざまあれど、結局のところ一番好きなのはバンドキャンプだ。「音楽家が儲かれば、自分たちも儲かる」というアーティストファーストの姿勢を2008年以来一貫して守り抜いてきたことに、まずは心からリスペクト。

サブスクライバーを増やすためにメガアーティストとメガヒットに依存せざるを得ないイビツなエクスポネンシャルモデルではなく、プラットフォームに参加した音楽家やレーベルがそれぞれの規模や気風に従って得た売り上げから分け前をいただくという地道なマーケットプレイスモデルを堅持しているのは、やっぱり美しい。

そのモデルを維持していればこそ、地味すぎたり突飛すぎたりして埋もれがちなものを丹念に掘り起こして紹介する営為も意味をもつ。メガヒットを頼みに一時的に寄り付くライトユーザーを増やしてビジネスの基盤とするのは巨大プラットフォームであればいたしかたのないところもあれど、音楽を深掘りしたい物好きは、そこではどうしたってないがしろにされてしまう。

その点バンドキャンプは、音楽を「ディグ」するという失われたかに思われた喜びをオンラインに移植し、日々驚きに満ちたエディトリアルで未知のサウンドを届けてくれるBandcamp Dailyは音楽メディアのあり方の模範解答を示し、音楽メディアはいまだって十分面白いものでありうることを証明してもいる。配給のチャンネルが変わったからといって、音楽ファンの心根が変わるわけではない。バンドキャンプは、そのことを強く信じ続けている。

Tiny Desk Concertを主宰するNPR Musicは、2010年代を振り返るシリーズのなかで「Bandcampの隆盛」をテーマにした記事とポッドキャストを公開している。NPR Musicの名物ディレクター、ボブ・ボイレンとのインタビューのなかでバンドキャンプの共同創業者でCEOのイーサン・ダイヤモンドは、プラットホームで購入された商品の売り上げのうち、アーティストの取り分が約8割、プラットホームの取り分はおよそ10-15%、残りは送料などにあてられていると語っている。それを受け、バンドキャンプを通してブレイクしたSpeedy Ortizのセイディー・デュピュイは、メガプラットフォームから得られる収益よりもバンドキャンプから得る収益のほうが大きいことを明かす。

こうした環境があればこそ、ここはほかのプラットホームでは見向きもされないニッチな音楽を支持するファンやアーティストのオアシスとなる。バンドキャンプは、シンセウェーブやブラックメタルをはじめとする多種多様なマイクロジャンルに財政基盤を与え、ニッチながらもグローバルに点在するシーンに情報共有と新しいつながりを生み出すインフラとなった。いまやそこは大手レーベルや大物アーティストすらも拠点を置く、文化多様性の一大見本市を成している。

未知なる音楽は絶えず生まれ続け、こうしたプラットフォームを通じて、音楽好きは日々新しい驚きと出会う。今年だけでもこれだけの嬉しいディスカバリーがあった。厳密に順位をつけたわけではないけれど、それでも1-10位の作品は、まぎれもない2019年のトップフェイバリットだ。もちろんバンドキャンプで出会うことなければ、自分の人生にかすりもしなかったであろうものもたくさんある。豊かさとは、こういう出会いをさすのだなと、リストを振り返りながら、改めてしみじみと実感する。

【blkswn's "Best of Bandcamp" 2019】
(*順位にあまり意味はありません)

40|"Som das Luzis" Pedro Kastelijns

39|"Freddie Douggie: Live on Juneteenth" Freddie Douggie

38|"Shasta Cults" Shasta Cults

37|"Anna Mazzotti" Anna Mazzotti

36|"Stepping Back, Jumping In" Laura Jurd

35|"Jaago" Lifafa

34|"Philos" Park Jiha

33|"Strange, Beautiful And Fast" Takafumi Matsubara

32|"Unseen Worlds" Laurie Spiegel

31|"Trust in Rock" "Blue" Gene Tyranny and Peter Gordon 

30|"Truck Music" BODY MEAT 

29|"Crossing The Great Water" W. Y. Huang  

28|"tubman." avery r. young

27|"Alula" Caroline Davis

26|"Joia" Carwyn Ellis & Rio 18

25|"Swungert" Colossal Squid  

24|"Habibi Funk 010: Mouasalat Ila Jacad El Ard" Issam Hajali

23|"Next to The Sun" KAINA

22|"Little Electric Chicken Heart" Ana Frango Elétrico

21|"Resavoir" Resavoir

20|"Building a Better World" 猫 シ Corp. & t e l e p a t h

19|”Bismillah" Peter Cat Recordings Co. 

18|"Square Wave Adventures" Torb The Roach & Floppy MacSpace

17|"East of the Ryan" Ben LaMar Gay

16|"Hiding Places" billy woods

15|"Mantra Moderne" Kit Sebastian

14|"Envejeciendo" Maria Usbeck

13|"Junior" Corridor

12|"Yasmin" Kumail

11|"Taxi Sampler 01 - Rhythms & Vibes from the Spirit of Young Africa" Python Syndicate

10|"Pareidolia" Clever Austin

9|"A Quiet Farwell, 2016–2018" Slauson Malone

8|"Map of Absences" Turning Jewels Into Water

7|"LP1" Joseph Branciforte & Theo Bleckmann

6|"Call For Location" Jubilee

5|"Where Future Unfolds" Damon Locks - Black Monument Ensemble

4|"Old New" Tomeka Reid Quartet

3|"It's Real" Ex Hex

2|"5" Sault

1|"7" Sault

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【Bandcamp Dailyの2019年〈ベスト100〉もチェック!】**