新婚旅行三日目 『北海道鉄道旅(前編)』

※全盲夫婦の新婚旅行シリーズ。北海道三日目の朝は美瑛の森の中から始まる…

 オーベルジュ・ニングルフォーレではチェックアウトのぎりぎりまでくつろいだ。我々のために調理をしてくれたり、コテージや自販機など親切に案内してくれたスタッフの方には感謝してもしきれない。
余談だがここでは携帯も圏外になる。そのためチェックイン時にWi-Fiに接続し、宿の方とはlineで連絡を取り合うというスタイルがとても新鮮だった。
 帰りはタクシーで美馬牛駅へ。Googleマップのタクシー料金目安で、美瑛駅よりもそちらの方が500円ほど安かったからだ。ちなみに目安料金が3300円から3700円と出て、ぴったり3300円だった時は今のネットの情報技術のすごさに改めて関心させられた。
 美馬牛駅に着いた我々は、一瞬空き地にでも降ろされたのかと思った。地面が土なのだ。例えるなら小学校の運動場のような感触。改めて、足から伝わる地面の情報が我々に取ってどれだけ重要かを身をもって実感させられる。駅と聞いていなかったら、どこかの空き地に迷い込んだと本気で勘違いしたかもしれない。
もちろん黄色い点字ブロックなんてものは存在しない。ただホームの端の数十センチだけ申し訳程度に舗装されており、ここから先は線路に落ちるということはわかった。
 美馬牛駅から普通列車でまずは旭川へ。僅か40分ほど乗っていただけなのに、いつの間にか列車も高架の線路を走る音に変わり、一気に都会の雰囲気になる。この移り変わりの早さが北海道らしい。点字ブロックのあるホームがなんて歩きやすいのだろうと、この時ほど感じたことはない。
 旭川駅では次に乗る特急列車まで、1時間半ほどの待ち時間がある。列車内で駅周辺のスポットを調べた結果、旭川ラーメンで有名な梅光軒に行くことにした。駅からは歩いて10分ほどで着くとのこと。ただ我々の場合、初めての場所ではマップの徒歩時間の倍は見ておきたいところである。何より一番の問題は、僕が食べるのが遅いということなのだが…。
お腹が満たされたら今度はコーヒーが飲みたくなるに違いない。などと考えていると、1時間半は決して余裕があるとはいえない。贅沢と言われたらそれまでなのだが。
 結果的には余裕を持って旭川駅に戻ってくることができた。駅周辺の道はとても歩きやすく、点字ブロックや音響信号なども整備されていた。大阪を歩いている感覚とそれほど変わらない。ただ一つ、歩道沿いのスピーカーから流れてくる地元の商店街の宣伝が、ここが旭川であることを強く実感させてくれた。
(後編へ)

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