新婚旅行六日目 『バリアフリーではないことの良さ』

 新婚旅行六日目の朝は洞爺湖散策からスタート。朝の蒸し暑さを感じて、昨日の釧路の涼しさとの違いを改めて感じた。同じ北海道でも道東と道央では気候が大きく異なる。知識としてはあったが、今回身をもってそれを実感することができた。
午前中は洞爺湖汽船に乗って観光。やっぱり乗り物ばかりである。この洞爺湖はカルデラ湖といって、火山の噴火によってできた湖とのこと。えらそうに書いているが、僕もその時まで知らなかった。
カルデラ湖、という言葉の意味も知らずに観光に来たことをツイートしたところ、洞爺湖観光協会の公式Twitterからご丁寧に返信をいただいた。
 洞爺湖観光の後は更に南へと足を進める。今日の目的地は函館だ。
途中時間があったので、大沼公園に立ち寄ることにした。沿線の観光スポットを何気なく調べていたら、沼の団子という言葉に興味をひかれた。しかも公園内は遊歩道が整備されているとのこと。食べてばかりなので歩くのにちょうどいい、と軽く考えていたこの大沼公園が、我々にとってはなかなかの難所だったのだ。
決して大沼公園が難所というわけではない。ただ、全盲夫婦がフラっと立ち寄って散策するには少し不向きな場所だったかもしれない。
 いつものようにGoogleマップで大沼公園を設定し、到着したはいいのだが、マップは公園の入り口で終了してしまう。ここから自分で遊歩道を探りながら散策するわけだが、これがなかなか苦戦した。
まず遊歩道は幅ぎりぎり二人分ぐらいしかないことに加えて、極めつけは沼に策がないことだ。白杖を沼の中に入れて不可さを探っても、下に着かないどころか水にも届かない。
これは落ちたらまあまあ大変なことになるなと思っていたら、後ろでは妻の機嫌がだんだん悪くなる。もう少し行ってみたいという好奇心と、そろそろ引き返すべきかという気持ちのせめぎあい。その戦いは、妻の「もう一人で行ってきて」という言葉で終了した。
成田離婚という言葉はもはや死語になりつつあるが、危うく大沼離婚になりかねないところだった。いろんな意味で危なっかしい大沼公園の散策はこうして幕を閉じた。
 ただここで大切なことは、大沼公園がバリアフリーではないことを否定したいわけではない。足の裏から伝わる石の感触と、むせかえるような土や木の香り、そして水の揺れる音。そうしたことは、遊歩道に点字ブロックが敷設されていたり頑丈な柵があったら、決して味わえなかっただろう。
きれいに整備すればするほど、そうした公園の持つ自然の良さが失われてしまうと思うのだ。
バリアフリーにすることが全てではないし、そんな観光地ばかりでは単純に面白くない。
健常者と一緒だからこそ楽しめる場所も、それはそれでまた違った楽しみ方ができる。ぜひ次回は健常者の友人も一緒に訪れて存分に散策したい。
(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?