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九州の旅一日目 『さんふらわーでのクリスマス』

 年の瀬が近づいたクリスマスイブの夜。人々があわただしく街中を行きかう中、我々もあわただしく神戸へと向かっていた。まああわただしく、といっても我々の場合走ることはできない。結局普通に歩くのと大して変わらないのだが。
大阪駅18時22分の電車が、この日に神戸から出港する大分行きのフェリーに間に合うリミットであることは事前に調べていた。お互い仕事が終わって一番に飛び出してきたこともあり、幸いにも予定よりも一本早い電車に乗ることができた。おかげで少し余裕をもって乗船できそうだ。
 全盲夫婦の旅行シリーズ第二弾。前回の北海道に続いて、今回は九州の旅の様子をお届けしたい。見えない我々がどのように観光を楽しんでいるのか。それが少しでも伝われば幸いである。
 今回乗船したフェリーさんふらわーは、過去に何度も利用したことがあった。これは関西に住んでいる特権だと僕は勝手に思っているのだが、関西発着の航路は意外と多い。九州や四国方面が大半だが、中には前回利用した北海道に行くものもある。発着航路数だけで見ると、関東よりも多いのではないだろうか。交通系オタクとしては大変嬉しいことである。
 それはさておき、船は夜の間に移動できるということだけでなく、様々なメリットがある。まず一番に安いこと。個室を利用しても、新幹線や特急を乗り継いでいくよりも安いことだってある。障碍者割引も使えるため、手帳を持っていれば半額になるのもありがたい。
加えて横になって休めること。どれだけ安くても、夜行バスでは寝られなくなってきたおっさんには切実なことだ。
そして何より係員の方々の案内が充実していること。港のチケットカウンターから船内はもちろん、大浴場やトイレの場所、レストランまで案内してくれる。
ある時なんて、係員のトランシーバーを持たせてくれたことさえあった。船内で迷ったらこれで連絡してくださいと。船ではなく我々が遭難することを心配してくれるとは…。なんて口が裂けても言えないが、それぐらい親切だし、いつでもサポートを依頼できるという安心感がある。
安くてホテルのような感覚で移動でき、非日常感も味わえる。そしてサービスも良い。
最初から急ぐ気のない我々にとっては最高の乗り物だ。
一つデメリットを挙げるとするならば、港へのアクセスだろうか。基本的にフェリーは車で乗船する人が多いため、駅からのアクセスはそれほど良いとは言えないケースが多い。ただ、調べてみると船の時間に合わせて連絡バスが走っていたり、少し離れているが駅まで歩けることもある。そのため我々の移動にはフェリーが度々登場するのだ。
 今回もとても充実した船旅だった。しっかり大浴場まで堪能し、船の揺れに合わせて浴槽のお湯が大きくゆっくりと波打つのを感じた。
 肝心の我々のクリスマスパーティーはというと、もちろんそこも抜かりなしだ。ケンタッキーのクリスマスセットとスーパーで買ったシャンパン。そしてケーキ。お世辞にもオシャレとはいえないが、それでも確かにクリスマスの特別な夜だった。
(続く)

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