シェア
水色の風が まつげに触れ 僕は そっと まぶたを開けた どれほどの 時間がたったのか それとも どれほども たたなかったのか 水色の水彩絵具を流したような風景が どこまでも続き 天頂を知らない明るい空が どこまでも広がっている
絶え間なく雨が 降り続いている 海にかえりたいと 思った日 太陽の陽が 燦々と降り注ぎ その足を止めたことを 思い出す
まっさらなキャンバス 震える手で 筆を伸ばし 引っこめる 窓の向こうに 水色の空 筆を伸ばし 色をふくませ キャンバスに置く 描かれていく 果てのない地平線 立ち上がる水色の風が キャンバスを超えて 吹き抜ける
まぶたを開けた 黄金の目 水色の風を 追いかけて 小さな白い羽根が 飛んでいく どこに行くのだろうと 顔を向け 身体を動かすということを 知る まるで変わったけれど 変わっていないこともある
大きく翼を広げて ストレッチ はじめから ここに あっただなんて 翼を羽ばたかせ 起きた風に きみが笑う ずっと 一緒に いただなんて
千の葉音が 身体を包む 震える細胞 握りしめていた手を上げて 開いた指の隙間から 水色のあめ玉が 落ちてくる
本を 開く ページを めくる 水色の文字が 踊りだす 一度も読まれたことのない 文字をなぞり 一度も読まれたことのない 音に耳をすます
水色の大地に横たわる 栓のない小瓶 風に吹かれて くるくる回りながら 円を描く
水色の湖に浮ぶ 一艘の手漕ぎボート 寝転ぶ身体は あお向けに 水色の空を ゆったりと流れていく 雲を見る 水色の風が ボートを揺らし 起き上がる身体は 水面に広がっていく 波紋の行き先を見る
小さな手を見つめる 水色の目 開かれていく道に 小さな足で 歩きだす 小さな羽ばたきに 顔を上げ 水色のチョウが 小さな頭にとまる
水色の山脈 ユニコーンの まなざし 水色の風が たてがみを揺らす
水色のドングリをくわえて 落ち葉が積もった森を 走っていく キタリス ふと立ち止まり ふさふさの大きな尾を振って 辺りを見回す 耳を立て 音源に顔を向ければ 大きな水色のドングリが 落ちている