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「神は無秩序の神ではなく」*Great Awakening

2023年6月2日金曜日、マサチューセッツ州ウースター郡のスペンサーという町で教会が全焼しました。当日は嵐で、教会の尖塔に雷が落ちたため火災が発生したそうです。
Twitterには、尖塔が焼け落ちる瞬間を捕えた映像が上がっていました。

キリスト教徒ではない私ですが、教会の話題には敏感です。とくに教会が単独で火事になったケースは、とても気になるのです。
マサチューセッツ州ということで、すぐにイギリスからの移民が建てたプロテスタントの教会だと思いました。調べたところ、第一会衆派教会ということがわかりました。ウェブサイト


ピューリタンと会衆派教会

アメリカにおける会衆派教会は、1620年にイギリスからメイフラワー号に乗り、移住してきたピルグリム・ファーザーズと呼ばれるピューリタンが設立したのが始まりです。

長くなるのではしょって書きますと、当時、イギリスでは宗教改革が行われていました。ピューリタンは、イングランド国教会の中でジャン・カルヴァンの影響を受けた改革派でしたが、その中には国教会から分離せずに教会内部を改革しようとする長老派と、国教会から分離を望む分離派、その中間に位置する独立派がいました。
分離派は、過激派とみなされ国家に弾圧されたため、一部の人々は信仰の自由を求めてアメリカ大陸に移住しました。ピルグリムファーザーズは、その迫害を受けた分離派に属していました。

ピルグリム・ファーザーズが設立したアメリカの会衆派教会は、アメリカの政治、社会思想や制度組織に大きな影響を与えたため、ピューリタン神権政治とも呼ばれました。神学教育だけでなく一般教育にも関心が深く、ハーバード大学、イェール大学など多くの大学を設立しました。

会衆派教会は、リベラルな傾向から人道主義的な思想や運動と結びつきやすく、いち早く奴隷制度に反対しました。現在でも、人権問題に積極的に取り組んでいるそうです。

火災が起きる前のスペンサーファースト会衆派教会

冒頭の第一会衆派教会の始まりは1740年代に遡ります。

1740年代といえば、イギリスとスペインの海上権争覇の戦争(ジェンキンスの耳の戦争)から拡大したオーストリア継承戦争の煽りを受けて、北アメリカの植民地でも戦争(ジョージ王戦争1744年 - 1748年)が起きた時代です。ニューヨーク、マサチューセッツ湾、ニューハンプシャー、カナダのノバスコシアが主戦場になりました。
オーストリア継承戦争は、1748年のアーヘンの和約で終結しますが、1754年のフレンチ・インディアン戦争(1754年 - 1763年)で、北アメリカ植民地は再び戦場と化しました。

第一会衆派教会のサイトによると、最初の教会が建てられたのは1743年。
ケンブリッジの裕福な商人であるナサニエル・カニンガムから寄贈された(当時はレスターという町の一部だった)場所に建てられました。建物は納屋のようだったそうです。
1772年により大きな教会の建物が建てられ、尖塔と鐘は1802年に追加されましたが、1862年1月1日に火事で破壊され、翌年新たに建て直されました。

Great Awakening

この教会の成り立ちから思い出したのは、1730年代~1740年代にイギリスと北米植民地で起きた「第一次大覚醒」(First Great Awakening)と呼ばれるキリスト教の宗教復興運動(リバイバル)です。

ニューイングランドを中心とする北アメリカ植民地は、厳格なキリスト教観を持つピューリタンによって形成されていました。
そこで重要だったのは、回心(神に背いている自らの罪を認め、神に立ち返る個人的な信仰体験のことを指す)でした。
カトリックでは洗礼(幼児洗礼)においてキリスト教に入信したと見なされますが、プロテスタントでは幼児洗礼は形式的なものとされ、成人してからの洗礼、回心を重視しました。

この回心の認定は、教会において共同体の代表者らを前に報告(信仰の告白)し、彼らが判断するという形式が採られました。宗教との結びつきが強い社会において、回心を認められるということは、社会(共同体)に認められることと同義でした。

18世紀に入ると、世代交代や他文化圏の移民による爆発的な人口増加により、ピューリタンが構築した社会に綻びが出てきました。同じキリスト教圏からの移民でも、ピューリタンの厳格な宗教観にはついていけなかったり、また同じピューリタンの中にも、信仰心が薄れ義務的になる者が増えていました。
このような状況の中で、大覚醒と呼ばれるムーブメントが先導されました。

第一次大覚醒の中心人物となったのが、会衆派教会の牧師ジョナサン・エドワーズや、英国メソジスト派の伝道者ジョージ・ホウィットフィールドといった牧師、伝道者達。彼らは「ニュー・ライト(new lights)」と呼ばれました。
彼らの伝道活動は従来のものと異なり、神学論に基づく高度な説教を排して、神学の素養がない者にもわかりやすく平易な言葉で語られました。
エドワーズの説教は、「厳粛で、独自で慎重な発音、ゆっくりとしたリズム」で、聴衆を魅了したそうです。
ホウィットフィールドは、身振り手振りを交え激情的な声振りで、聴衆の感情を揺さぶりました。そうした彼らの新しい説教のスタイルは、聴衆を熱狂させ、信仰心をよみがえらせました。

もう1つ重要な点は、回心を重要視する伝統的なプロテスタントにあっても「回心は生涯に1度しかない」という立場を崩した点が上げられます。
彼らの説教を聞いて、未だ共同体からの回心が認められていない者や、既に公的に回心が認められている者でさえ、再度自覚的に回心を認識することになったのです。
そのため、回心を2度以上することがないとして厳格な立場を保持した「オールド・ライト(old lights)」と呼ばれていた牧師たちと対立しました。

回心運動に影響された人々は家で聖書を研究し始め、第一次大覚醒は「彼ら自身のやり方で神を経験する」ように人々を導いた点でも、大きな功績となりました。

政教分離と会衆派教会の解体

やがてニューイングランドのリバイバルは下火になりましたが、巡回伝道師達が西部や南部の開拓地に精力的に活動したことで、アメリカ特有の福音主義(ホーリネス運動)が、開拓地全体に広がっていくことになりました。

ホーリネス運動とは、主にメソジストの中で出現したキリスト教運動。
信仰者はキリストの贖いへの信仰により、原罪を初め人の持つ罪を、聖霊によってきよめてもらうことができるとするムーブメント。

この南部への布教は、黒人奴隷も対象になったことが特徴でした。この頃に、南部で最初の黒人教会が建てられています。
その後、アメリカ独立戦争を経た1790年前後から、第二次大覚醒(1790–1840)が起こります。

ペンシルベニア州マウントギレアデアフリカンメソジストエピスコパル教会(1852年頃)

19世紀初頭、マサチューセッツ州のすべての町は、「神の公の崇拝の制度化、および敬虔なプロテスタントの公立教師の支援と維持のために」市民に課税することが憲法上義務付けられていました。
つまり、会衆派教会は、課税を通じて財政的に支援されていたのです。

しかし1833年に、マサチューセッツ州は政教分離制度に乗っ取り、会衆派教会を解体することになります。そのきっかけになったのは、大覚醒ブームの結果として生じた神学的議論が、教会を異なる宗派に分裂させ、その対立が裁判沙汰にまで発展したことでした。

米国で政教分離制度が成立するに至った背景として、イングランド本国における国教会と非国教会または清教徒(ピューリタン)の対立、そして、イギリス帝国の北アメリカ植民地だった13植民地における政教関係がある。
13植民地がアメリカ合衆国として独立した際に、信教の自由と政教分離(国教の禁止)は憲章として重視され、アメリカ合衆国は政教分離を国制とした史上初の世俗国家となった。

アメリカは各州の独立性が強いため、宗教の公定制度はそれぞれの州に任せられていました。
ロードアイランド、ペンシルバニア、ニュージャージー、デラウェア、ヴァージニア州は公定教会制度を持たず、ニューヨーク州、メリーランド州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、ジョージア州は監督派教会を、マサチューセッツ州、コネチカット州、ニューハンプシャー州は会衆派教会を公定教会としていました。

その後、合衆国憲法修正第1条が徐々に浸透し、各州における公定教会制度は廃止されていきました。最も頑強にピューリタンの伝統が保持されていたマサチューセッツ州は、他州より遅く1833年に公定教会が廃止されました。

プライドとキリスト教

第一会衆派教会の火事の映像が広まると、アメリカでは「LGBTQ+を肯定する教会だったので神の怒り(雷)が落ちた」という噂が広がりました。
教会がプライド月間(アメリカ政府が6月をプライド月間と決定した)について、肯定的なメッセージをFBに投稿していたのは事実のようです。

最初の建物が建設された1743年の日付はわかりませんが、「第一次大覚醒」の熱狂のさなかのことでした。1862年1月1日の火事は、不注意による失火ということになっているようです。
現在は、その火災から約160年後。これは海王星の公転周期です。
1862年1月1日は、海王星は魚座28度にありました。現在(6月2日)は、魚座27度にあります。つまり海王星回帰だったんですね。

魚座は、木星が副主星ということもあり、宗教にも関係しています。

2023年6月2日のチャート

チャートを見ると、金星と海王星は同じ度数27度。月、金星、海王星、冥王星とでカイト(凧型)が形成されています。
木星と北ノードが牡牛座でコンジャンクションし、金星、冥王星とでTスクエアを形成しています。

カイトの軸にもなっている金星と冥王星のオポジションは、限界を突破しようとするエネルギーです。
木星と北ノードのコンジャンクションは、人生に豊かさをもたらすとともに、同じ牡牛座にいる天王星が価値観を変えるように導きます。
1740年のAwakeningのような、人々の意識が大変化する時、パライダイムシフトが起きてもおかしくない感じです。

ちなみに1740年は、9月25日に蟹座9度で木星と北ノードが重なりました。対極の南ノードには天王星がコンジャンクションしていました。

海王星は、小惑星パラス(調和)とセスキコードレート(135度)で、人々の中に不調和を起こします。
同じ魚座に入っている土星(7度)は、小惑星クリスチャン(天秤座6度)と、火星(獅子座7度)とヨドを形成しています。
土星のサビアンシンボルを見ると「らっぱを吹く女性」。意味は、良心的なより良い世界を目指して人々を扇動していく。
たとえば本当に神の怒りだったとして、tweetが拡散されることによって、「プライドを祝うことは、神の目から見てどうなのか?」と考えるきっかけになったかもしれません。

金星、木星、冥王星のTスクエアに、北と南のノードを加えるとグランドクロスになります。過去の行動の結果を重く受け止める感じですが、逆に過ちを認め、「もっとよい未来を作ろうじゃないか」という前向きな気持ちを引き出すことになったらいいなと思います。

6月7日に、ペンシルベニア州レディングのプライドイベントに抗議して、「秩序を乱した」罪で逮捕された男性(アトキンス氏)が引用した聖書の文言は、コリント人への手紙14章33節でした。
「神は無秩序の神ではなく、平和の神である」
アトキンス氏への刑事告発は取り下げられましたが、彼は「この国では、『神』は今や蔑称と見なされています」と嘆いているそうです。

公の場で聖書を引用したとして逮捕された男 (thelancasterpatriot.com)

しかし、キリスト教もLGBTQを許容する流れが出来ているようですし(そうしないと信者を獲得できませんしね)、反LGBTQ派はかつてのオールドライトになるのかもしれません。

ニュルンベルクでのドイツプロテスタント教会会議の閉会式で「神は同性愛者である」と説かれた。

人々の意識が大変化しようとする時だからこそ、LGBTQ+の思想を利用しようとしている企みがあるようですね。

日本人が知らないプライドイベントの実態↓

それにしても、アメリカは酷い状況です。
日本人はいきなり、同じようには出来ないとは思いますが、日本人が感化されるのは意外に早いかもしれないと思うこの頃です。

今日はこのへんで。

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