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ポエマーのブルースだぜ。

市川のスポーツジム施設、濃厚接触600人強、村八分な感染者の悲しみに想いを巡らす、ジャパンの悲劇、人間同士かしこまりきった他人行儀の世間様なブルース。

曇天
作:Shiroshi

ポツリポツリとまばらな雨は

寒空の曇天

カポリカポリと狭い歩幅で
ゴム長の音

ムッツリと
ヤッケにジャンバーを重ねた男が
傘を掲げて歩いてる

あれは最近見かけないコウモリ傘だよ
いや、デーツーで九百八十円、大きめサイズだ

ふと男が前を見る
カポリカポリと歩いて
体を捻り後ろを確認

立ち止まり空を見上げる

傘を肩にのせ
膝からゆっくり腰を伸ばした

『ううういいい』意味不明に漏れる声

あれは寂しい

通り向こうの電柱のてっぺん
あの蔦はああやって
やっと電線まで手を伸ばし息絶えたのか
それとも春また目覚めるのか

気が滅入る

無表情
白のワゴン車が谷底を
カーブを楽しむ無礼な運転

男が砂利に避難する

そうかコロナのせいか
いや雨か

とりあえずテニスコートは休みのようだ
なら遠慮なくタバコを吸える

カチリと音を

ここら辺も一応、昔は
富士見台なんて呼ばれていたはず

枯れススキと電柱
格好だけ畑してるソルゴ畑

休耕地にすると税金が増す
誰のためにも何も作らない
見晴らしの良い放棄農地

向こうに見えるあのマンション達は
今でもやっぱ億ションなのかな

下るカーブの向こうのあれ
あのピンクは八重桜?

曇り空にくすむイヤラシいピンク
花見に向かないただれたピンク

寒さを耐え
乾きを凌ぎ

数日前の陽気のせいだな

むき出しに
黒く捻れた木が晒す
あのピンクは無数の性器

快楽なんぞない
ずる剥けの痛み
あのピンクは童貞

だろ?

なに?美しいだと?

認めるなよあんなんお若いの

あんなイヤラシいピンク
あのただれたピンクは睨みつけてなんぼだよ
ありゃどう見てもずる剥けのピンクだよお前さんよう

くくっと男が笑った
そう見えた

『うううういいいいいっ』とまた腰を伸ばす

ヤッケにジャンバー
重ね着の男の傘が風を受ける
煙がスルリと空に流れる

花粉でただれた目元をこすり
空に一度ヤニ臭い歯を見せる

俯いてまたくくくっと笑う

曇天に一輪
高く掲げた傘を回して
またカポリと一歩
前に踏み出す
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ろっけんろー

せんきゅー

アンドーナッツ囓りたいぜ

ネットで見つけた昭和の怪人。
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ありがとうございます。