アイデア出しについて考える

はじめに

まず、少々自分の説明を...
自分は大学時代にHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)分野の研究をしていました。
情報系の分野の中でも自分自身でも何をしているのか説明できなかったり、他分野の人から何やってるの?と言われがちな気がします。
すごく簡単に説明するとユーザーとコンピュータの相互作用で何か生み出だせるのか?みたいな感じだと思います。(曖昧な分野なので明確にこれだと言えないですね...)

実際、細かくどんな技術領域の研究してるの?と思いますが、コンピュータに関するものなら何でも当てはまるのかな?と思います。
自分はVRの研究をしていましたが、他の人はAR、モーションキャプチャ、3Dプリンタ、ドローンなど本当に色々です。

HCI分野について軽く説明できたので、タイトルの「アイデア出し」に進みたいと思います。
最近こちらの本を読みました。
暦本純一さんの「妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアの作り方」です。

暦本純一さんはHCI分野でとても有名な方で素晴らしい研究をいくつもされています。
暦本研究室のページ:https://lab.rekimoto.org/
特に有名な発明がSmartSkinと呼ばれるマルチタッチインターフェースだと思います。特になじみがあるのは、スマホで必ずある複数の指で操作(画像のズームなど)のことかなと思います。
今回初めて暦本先生が本を出したので、気になって購入しました。

自分はアイデアを無理に出そうとすると、新しいものを生み出さなきゃと躍起になってしまう事がよくあります。
目的が新しいものを出すことになってしまい、頭の中でぐるぐると考えて結局何も生み出せません。
逆に、普通のアイデアをたくさん出してもどれもしっくりせず詰まってしまう事もしばしば。

妄想とは?新しいアイデアとは?

新しいアイデアは「妄想」から生まれやすい。
私たちは現在の延長で物事を考えがちです。
妄想は、今あるものを飛び越えて生まれるものであり「新しい」。
しかし、妄想していてもそれが新しい発想だとは自分でもわかっていないことが多いです。
しかし、この本では妄想によって「新しいことを生み出す」コツについていくつか紹介しています。

新しいことを考える

新しいことを考える時、実現可能かどうかを優先的に考えたら、妄想から始めるどころか、妄想を抱いた瞬間に終わります。
また、何か新しい事を考えたとしても、上司などに「できるわけない」と否定されることもあります。

「高名で年配の科学者ができると言うときは正しい。でもできないと言うときはたいてい間違い」SF作家のアーサー・C・クラーク

実際、昔と比べて技術は発展してるため前提条件が違います。アイデアを出す前からできなさそうと思っていたら何もできないので、とりあえず妄想をたくさんしてみよう。

他人が思いつかないようなアイデアはどう生み出せばいいのか?

まず、アイデアの源である妄想は「自分のやりたいこと」から出てきます。その妄想を生み出す種は「自分の好きなこと」が一般的だと思います。

他人が考えないような自分らしいアイデアを源泉とするなら、まず「自分の好きなこと」から振り返ってみましょう。

自分らしさって?
「自分の好きなこと」をとりあえず3、4つほど考えてみると「その人らしさ」というものがなんとなく見えてくるのではないでしょうか?
自分は「オリジナルイラスト」「弓道」「個展めぐり」....
そういった「好きなこと」の組み合わせが思いもよらないアイデアを生むかもしれません。
自分で普通だと思っていることが、ほかの人にとっての新しいアイデアになるかもしれないので意見交換してみると面白いかもしれません。

アイデアは「無」から生み出すものではないので、ほとんどが「既知」×「既知」の組み合わせです。その組合わせが「未知のアイデア」になります。好きなものがいっぱいあるほど既知の組み合わせが広がるので、好きなものを増やすべきであると思います。そうすると妄想の幅が広がります。

また、1人だけではアイデアの限界があるので複数人でやるとより効率的です。「三人寄れば文殊の知恵」という諺ですね。

このような自分の好きなこと、知っていることをベースに組み合わせると新しいアイデアが生まれるかもしれません。

妄想の整理方法とは?

シンプルに言語化が良い。
アイデアの原点の「WHAT(何がしたいのか)」「WHY(なぜしたいのか)」などを言語化することによって、頭の中を整理できる。
「自分の頭の中でなんとなく面白そう」と思ったまま人に伝えようとしても雲をつかむような感覚になるので、言語化して人に見て共有できるレベルに落とし込むべき。
「HOW(どうするのか?)」は絵や図などのビジュアルでアイデアを表現する時に最適。

本を読んで気になったこと

「本当にブレストによって良いアイデアが生まれているのだろうか?」
という一行です。作者の暦本先生はブレストという手法に懐疑的です。
自分はブレストがうまくいかないときが何回かあったのですが、なぜかずっとわからないままでいました。
読んでいてなるほどと思ったことがあったので内容を軽くまとめます。


ブレストは「マインドマップ」「マンダラート」といった思考ツールが使われる。人によって向き不向きはあるし、連想を引き出すには有効な手段だと考えている。しかし、「良いアイデア」は生まれないと考えている。

ブレストは「良いアイデア」よりも「その場でウケるアイデア」が出されがちである。また、本気で課題を解決しようとしても、ブレストのその場の盛り上がりに左右されがちである。

ブレストで「楽しい」「面白い」が目的になってしまうと、参加者が場の空気を読んで忖度したアイデアが出るようになってしまう。また、地味で良いアイデアが出たとしても他の人の目に留まらなくなってしまう。

ブレストではアイデアの「数」が求められているため、生煮えや面白いと思わない案も出してしまいがちである。結果的に「課題を解決するアイデア」ではなく「ブレストのために出したアイデア」になる。
また、短時間でたくさんのアイデアを出さなければならず、しっかり考える時間がない。その場で最もウケてベストだと思われていたアイデアが、数日後「このアイデアはどこがよかったんだっけ」となる。

他人の意見を「つまらない」と評してはいけないので、優劣なくどのアイデアも同列に扱われてしまう。民主主義的な「平衡感覚」はアイデア出しにとっては弊害が大きい。
新しいアイデアは、何かしら世の中のバランスを崩すようなところに価値がある。つまり、「こういうものだ」と考えていた常識をひっくり返すイノベーティブなアイデアのことです。

「あれもいい、これもいい」というバランス感覚からは新しいアイデアは生まれない、特にブレストのような集団発想法だとバランスを取りやすい。


「既知」を増やす会議

新しいアイデアを生み出すためには「既知×既知」が必要だとしても、ひとりの人間では「既知」の個数や幅に限界がある。それなら、集団で「既知」の情報をインプットしあって引き出しを広げるほうが良い。

暦本研究室で行っているのが「みんなが知らなそうな面白いものを持ってきて紹介する」会議である。
Youtubeで見つけた面白い動画や、誰も読まないようなマニアックな本など...。
その会議で大事なのは「みんなが知らなそうな話」と「なぜ面白いと思ったのか」が言えることです。
定期的に行われると、普段の行動も変わります。「みんなが知らなそうなこと」を見つけるのは大変です。なので、興味を持つ範囲を広げたり、自分の好きなものを深堀するようになるので個々の「既知」が広がる。

注意点として、持ってくる話題は「みんなが知らなそうなこと」であって「みんなが面白いと思うもの」ではなくてかまわないこと。面白いと思うのは自分だけでよい。自分が思った面白さは言語化して他人に共有すればよい。

おわりに

大学時代、似たような会議を行っていて様々なジャンルについてのインプットを行っていました。とても面白く自分の知らない世界が垣間見えるのでとても良い経験でした。
今、このような場がないのでとてももったいないなと思います。
「みんなが知らなそうなこと」を共有できる場がとてもほしいです....週1でこの会議をやるとインプット兼アウトプットが効率的にできます。なので、すごく刺激になるので誰か作ってくれないかなと思ったり...。
いずれ自分がこのようなコミュニティを作ってみようかなと思ったり...。

今回はアイデア出しについて軽くまとめました。
少し長い内容になってしまいましたが、読んでいてありがとうございました。次の記事もご期待ください。

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