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現役獣医師が「動物のお医者さん」に全話マジレスする 第2巻

(一応)獣医師の僕が、佐々木倫子さんの新装版「動物のお医者さん」にマジレスする記事です。

第2巻 表紙はミケ。

前回(第1巻)はこちら。


<第12話>
P10でパリダちゃん(梅毒スペロヘータ)のギムザ染色をしていたという菱沼さん、手の切り傷からの感染を恐れていたけど、手袋していなかったのか。ギムザ染色液は発がん性があるし、なにより手に触れるとすごい色に染まるからゴム手袋必須なのに。(染色液を使う前の固定段階の話かもしれないけど)


素手でギムザ染色する菱沼さん

(偶数巻の記事は有料にしています。ここから有料。つぎの第3巻の記事はこちら



<第13話>
ゼミ室とはいえ、研究室のなかでハエをとるために拾ってきたモズを放す菱沼さん、1巻から薄々思っていたけど、ずいぶん病原体コントロールの緩い研究室だな。公衆衛生学なのに!細菌扱っているのに!!


院生にしろ、菅原教授にしろ、籠から出さなければいい、、、のか?


<第14話>
二階堂くん、僕もその「肩甲骨後位にあって上腕骨との間隙を埋める筋肉」、答えられません。


上腕骨であることは、なんとなくわかる。


<第15話>
牧場実習の舞台となっている「T市家畜衛生試験場」、これは名称等だいぶフィクションが混ざってると思うけど、北海道滝川畜産試験場(現在の北海道総合研究機構畜産試験場)だと思ってる。
僕は一度、行ったことがあって、研修じゃなくて仕事だったから近隣の民宿に泊まったけど、予約が通っていなかったし、おまけにうっかり車のライトをつけっぱなしにしてて翌朝バッテリーが上がったりで、割と大変だった覚えがあります(畜産試験場のせいじゃないけど)。

<第16話>
羊を食べようとする清原に、ここの羊は羊毛用だと嗜めるハムテルだけど、プルプル(羊の名前)たちは多分コリデール種だと思うから、肉もいけますよ。(自信ないけど)

試験場のプルプル(コリデール種)


<第17話>
昨日壊れたという遠心分離機、300万円とのこと。
遠心分離機大手のトミー精工のサイトでは、一番高性能な高速冷却遠心機Superima25で265万円だった。
当時との物価差・価格差があるとはいえ、菱沼さん、この機種いるかな?
大腸菌とクラミジアとバクテリオファージの研究なら一つ下のモデルで100万円くらいのでも間に合うかもしれないです。
(自信ないけど)

遠心分離機が壊れるって一大事だと思うけど、それを「そういえば」で片付ける菱沼さん



<第18話>
清原くんに講義の代返を頼んでサボったハムテル。
H大(のモデルの北海道大学)はわからないけど、数年前に帯広畜産大学にいったら、講義の出席はIDカードによる認証になっていた。
世界の流れからけっこう取り残されがちな獣医・畜産業界でもDXは進んでいるようです。

<第19話>
直腸検査とか検温とかの最中に牛に足を踏まれてもいいように、僕はつま先に芯の入った安全長靴を履いていました。まあ、種牡牛ならいざ知らず、直腸検査をするようなメスの乳牛なら、ちょっと踏まれるくらい平気です。
(あとやっぱり菱沼さんはウイルスにも対応の高速冷却遠心機を買っていたようだ)


形状からして、やっぱり高速遠心機ですね。



<第20話>
シリンジ(注射器)の描写の細かさに戦慄する回。

かなり精密に描写されている注射器


<第21話>
菅原教授、前夜21時まで残っていたのか。
自身の研究論文かもしれないけど、学生の研究を見ていたのかもしれない。この話で小夜ちゃんを引き取ったり、ドライなふうに見えてかなり面倒見のいい教授なのかもしれない。

<第22話>
二階堂が中国のことわざだという「白いネズミでも黒いネズミでもネコに取られるのがいいネズミだ」、これは大間違いで、正しくは「黒い猫でも白い猫でもネズミを捕るのがよい猫だ」。
ネズミではなく猫の話である。
ネズミが嫌いすぎるあまり、余計なものまでネズミに置き換えてしまっているのかもしれない。
「シュレーディンガーのネズミ」とか言い出さないだろうか。

その諺は間違っている

以上です。
第3巻につづく。



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