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リストラーズバラードセレクション ②初恋

はじめに

 前回「①」と付けたからには、何とかシリーズとしての形は取りたいな、と思いました。
 ということで、リストラーズのバラード曲からもう1曲。
 正直、前回の「セーラー服と機関銃」が自分の中でぶち抜け過ぎていて2曲目の選定に困るのですが、今回は「初恋」にしました。
 思い返せば7か月前、「Get Wild」でリストラーズに出会った後、お勧めされる動画をいくつか見て「これはいいぞ!」となり、チャンネルのページを初めて開いた時。たくさんの動画の中から、この動画を選んだ記憶があります。理由は、原曲が好きだから。結果的に、初めて聴いた加藤さんのリード曲でもあったのですが…。
 いやぁ、脳は溶けるとはこのことかと思いました。かなり衝撃的だったので、記憶に残っています。

そんなわけで、祝(?)シリーズ化!となる第2弾は、「初恋」です!

リードボーカルについて

 甘い。一言でいえばこれに尽きる。
 だが、加藤さんの声の甘さは、山盛りのお砂糖や練乳のような単純な激甘ではなく、爽やかさと、ほんのりほろ苦さのようなものも含んだ、オトナ風味の優しい甘さだったりする。それも、味より香りが主体。それ故に胸やけを起こしたりもせず、ずっと味わっていられるのだ。最高。
 ただ、アルコール度数は高い。うっかり大量摂取すると、人によっては簡単に中毒になってしまう可能性もあり、かなり危険だ。そんな理由で、筆者が加藤さんの声について語る時には、どうしても少し身構えてツッコミ主体のスタンスになってしまう。何しろ超の付く下戸なので、度数の高いアルコールに対しては無意識レベルでアラートが鳴ってしまうのだ。好きだから聴くけど。(そして酔う)
 そんな加藤さんの甘い声質が存分に発揮された、最高に魅惑的な歌声が堪能できるのが、この曲だ。

 歌詞の出だしの「五月雨は」、いや最初の子音のS。この時点でもう、「あ、これはタダモノじゃない」と理解できる。そもそも筆者は、加藤さんの声の甘さ、あるいは色っぽさの源泉の一つが、歌声から感じられる息の流れにあると思っている。Sの子音は息を多く使う音なので、これが増強されるのである。初っ端から何ということを。

 この動画が投稿されたのはおよそ3年半前。在宅勤務動画が投稿され始めてから、そんなに時間がたっていない頃のものである。まだメンバーの皆さんがイヤホンをしながら歌っている(※1)し、おそらくは音声と動画が同時収録(※2)だ。概要欄を見ると、最近ではほぼレギュラー化し、リストラーズに欠かせない存在と言ってよいであろうミキサー、大島さんの名前がない。

※1 この動画では、澤田さんはイヤホンをしていないように見える。しかし、その前の在宅勤務動画である「Romanticが止まらない」を見ると、正面から見た時は見えないが、右を向いたときには、左耳にイヤホンを付けているのが確認できる。おそらく、環境は同じ。
※2 この動画のみでは判別できないが、上記と同じく「Romanticが止まらない」の後奏部分で、何かに手をぶつけた音が入っている。映像でも、そのタイミングで何かが起きているのが確認できることから、同時収録と判断。

 何が言いたいかというと、この動画の音源は、かなり生の声に近い状態なのではないかと思うのだ。加藤さんの息の流れが、かなりリアルに感じられる。それ故に、綺麗に整えられた販売用の音源というよりライブ音源に近いような、歌声をより近くに感じられる仕上がりになっているのではないだろうか。

 ちなみに、この動画の次の在宅勤務動画「勝手にしやがれ」以降は概要欄には大島さんの名前が見られるようになり、イヤホンはその後しばらくして出番が無くなる。これは割と大きな転換点だったのではないかと、筆者は考えている。これについては、また別の機会に。

 さて、本題に戻ろう。
 加藤さんの歌声の特徴・魅力の一つとして、メロディの中に巧みに織り交ぜられるファルセット(ミドルボイスの要素が強めな気がする)がある。
 ファルセットというと、一般的には高すぎて地声では出しづらい音を歌うために使われるイメージがあるが、加藤さんの場合、必ずしもそうではない。この曲全体を通して、加藤さんの歌声は多めに息を混ぜた柔らかい音色なのだが、高めの音域でもその音を飛び出させず、メロディの柔らかさ、曲線的な動きをキープするための技術なのではないかと思う。
 分かりやすいのは「放課後の校庭を」のあたりだろうか。「ほうかご」の「ご」、「こうてい」の「う(発音は「お」)」の2つの音がファルセット寄りになるのだが、これによって、高音の華やかさが抑えられ、落ち着いた中音域の印象が強くなっている。
 加藤さんが得意としているのは、おそらく、この中音域なのだと思う。大人の魅力を感じられる艶やかな美声なのだ。これにふわりと優しい高音域の「引き」の美しさがアクセントとして加わることで化学反応を起こし、聴く人の心を惹きつける魅惑的な歌唱が爆誕しているというのが、現時点での筆者の見解である。

 男性アイドル担当としての、グイグイ攻めてくるキラキラスナイパーな歌声も最高だが、隣でそっと寄り添ってくれるような、優しい歌声も大好きだ。いずれにしても、容赦なく女性ファンの心をわしづかみにしてくれる魔性の歌声であることに変わりはないけれども。

リズム隊&コーラスについて

 まずはリズム隊について。
 先に述べたとおり、筆者としては、この動画は音声と映像を同時収録していると考えている。となると、気になるのがリズム隊、特にボイパの上村さんだ。
 筆者はボイパに詳しくないが、基本的にマイクありきであると考えている。本来のボイパの音色を出すなら、マイクを近くに持つことは必須なのではないか。実際上村さんも、リサイタル等では、マイクは口に付くぐらいの位置で持っている。
 しかしこの動画において、マイクは一体どこにあるのか。少なくとも画面に映っていないのだから、相当離れた位置にあることになる。そんな距離で、まともにボイパの音が拾えるものなのか。
 我が家のiPhoneくんに搭載されたボイスレコーダーを使って試したところ、それなりに離れた位置に置いても音そのものは思いのほか良く拾うので、少なくとも息をはっきり使う音に関しては、聞こえるかどうかという点では問題なさそうではある。しかし、「ただの雑音」ではなく「ボイパ」として聴かせるために必要な音の要素をすべて拾えるとは思えない。だからこそ、ボイパ奏者の方はマイクを近い位置で持つのだろうし。うーん…。
 筆者の頭では、「高性能なマイクを使用している」「物理的に非常に強く(大きく)演奏している」という答えしか出てこないのだが…真相は如何に。
 似たようなことは大西さんにも言える。ボイパと違って声ではあるので多少マシなイメージはあるが、低音であるがゆえにマイクは高めの音より拾いにくいはずで、かといって無理に音量を出そうとしたらベース(楽器)らしさが損なわれてしまいそうだ。むむむ…。確かに、この曲以降のほうが大西さんの低音に深みが出るので、影響はあったということなのだろうか。だとしても、これほどマイクを離して、ベース…???
 考えても埒が明かないのであきらめるしかないのだが、まあ要するに、「リストラーズのリズム隊はすごい」ということなのだ。うん、知ってた。

 続いて、コーラス。大島さんによるMIXが入っていないせいか、野村さんと澤田さんの歌声はかなりはっきり聞き取れるのだが、草野さんだけ、声を拾うのに苦労する。
 カラオケ風楽譜動画という反則技を使っても、楽譜に書かれたその音が確かにある(そういう和音になっている)ことは分かるのに、それを草野さんの声として聴き取ることが難しい。よくよく聴くと、部分部分で澤田さんに寄せたり野村さんに寄せたり、音色を調整されているような気がする。内声担当として、本当に繊細な技術を発揮されている…。
 野村さんは野村さんで、伴奏のメロディを歌っている時と加藤さんの上ハモリに入る時とで音色が違うのが良く分かる。メロディの部分では輪郭のくっきりした歌声なのに対し、上ハモリの時は少し柔らかくぼかしてあるような印象だ。
 そして、澤田さん。加藤さんの下ハモリに入る部分が多くあるのだが、この加藤・澤田コンビの破壊力たるや。
 何しろ、お二人とも声に色気が出る、アルコール度数高めなタイプ。そのお二人がハモって歌うのだ。何事も起きないはずはなく…。幸福な急性中毒症状をたちどころに発症してしまう。こうして焼野原が生成されるわけである。
 澤田さんに関して言うと、高音質かつ笑い要素抜きの歌唱というのが案外少ない。この曲でのいわゆる「字ハモ」部分は、そんな要素の貴重な供給源だったりする。楽譜動画が出た時に一番盛り上がったのが澤田さん推し界隈だったことは事実である。

おわりに

 いや、まさかですよ。前回の記事から今回までの間に何が起きたか、お分かりでしょうか。
 そう、「ギンギラギン」の在宅勤務動画。あんな特大の爆弾が投下されるなんて思ってもいなかったんです。リサイタル版の記事を1月に書いたばかりでは、在宅勤務版の記事を書くのもためらわれるし。でも脳内では、赤と黄色のポンポンがぐるぐる回っている…。
 さすがに今回ばかりは、おとなしく波が落ち着くのを待ちました。周りが盛り上がってるというだけならともかく、自分の脳内もギンギラしてたので…。
 それでも出てきたのが加藤さんリード曲だったあたり、まだまだ後遺症が抜けていないのかもしれません。恐るべし。