見出し画像

有馬記念(G1)タイトルホルダー「大外不利」は重大な誤認識?むしろチャンスが増えるこれだけの理由

 今週末26日に中山競馬場で行われる有馬記念(G1)は、実質今年最後の大一番。28日の2歳G1・ホールフルSが控えているとはいえ、ファンの多くは暮れのグランプリの興味が最優先だろう。

 1年を締めくくるレースとしては有馬が相応しいという声も根強いが、こちらについては当方も同じ意見だ。売上げやTV中継他、大人の事情が絡んでいるのはやむを得ないが、力を持たない外野にはどうすることもできないため、提示された条件に従うのみ。

 話を有馬記念に戻すと、毎年大きな注目を集めるのがその枠順。出走各馬の脚質、馬場状態も含め、内外どこの枠を引くかによって、レース展開に影響を与えるため、枠順は予想をするにあたっても非常に重要なファクターとなる。

 まずはエフフォーリアが5枠10番、引退レースのクロノジェネシスが4枠7番、ステラヴェローチェもまた5枠9番と上位人気の予想される馬が、無難に好枠を引き当てた。ここまでは大きな割引とはならなさそうだ。

 そんなライバルに対し、8枠16番という大外を引いてしまった今年の菊花賞馬タイトルホルダーは不利とされる外枠。そのため、主戦である横山武史からの乗り替わりも含めて、泣きっ面に蜂のような苦境に立たされたイメージがある。

 枠順決定前にも進行役のアナウンサーから、8枠16番はどの馬になってしまうのかといった不安を煽る言葉が出ていたように、多くのファンもまた、狙いたい馬が外枠に入るという最悪の事態だけは避けたかったに違いない。

 小生も当時はそんな先入観を持っていたこともあり、「よりによって大外か……」と思ったことは否定しない。

 しかし、枠を知らされた横山和生の「僕は嫌いじゃないです。いい枠だと思います。有馬記念初騎乗? とてもうれしいですね、はい。ありがとうございます。素晴らしく順調に来ているので不安なく向かえます」というコメントを聞いたときに違和感を覚えたのである。

 メディアが煽るように有馬記念の外枠が不利という情報は、おそらく騎手や関係者の耳にも入っていることは想像に難くない。

 にもかかわらず、このような風評を知っているはずの当事者が、まるで意にも介さないような言葉を発したのは不思議に思えたのだ。

 そこでふと思ったのが、有馬記念の8枠はメディアがいう通り、本当に大きな割引なのかということ。勿論、これほど声を大に報じられているのだから、根も葉もない噂レベルではないのだろう。

 物は試しにと調べてみたのが以下。

過去20年の有馬記念で8枠に入った馬の成績

 注目すべきは全体的に人気馬の数が少ない点だ。力が抜けていたシンボリクリスエス、ダイワスカーレットは圧勝しているのも分かる。1番人気で敗れたテイエムオペラオー、ゴールドシップもいるが、このときすでにピークを過ぎていたのも確か。

 冷静に見てみると、影響があったとしてもせいぜい着順が前後する程度だったと理解できる顔触れといえる。

 これを根拠に比較したいのが、同じく中山芝2500mで同日に開催されるグッドラックハンデ(2勝クラス)の成績である。

 以下をご覧いただきたい。

過去20年、グッドラックHで8枠に入った馬の成績
同他の枠も含めた成績

 ふむ、おかしいな、、、外枠は不利じゃなかったのか?メディアのいう話は嘘だったのかー(棒読み)

 人気馬が勝利している上に、穴馬も馬券に絡んでいる。おいおい、これは池上彰ですかと。。。

 クラスは違えど同じ条件でここまで成績が真逆になるのだから、有馬記念はともかく、中山芝2500mの「大外は不利」という情報は信用してはいけないということになる。

 では次にコースではなく武史から乗り替わる和生についての材料を加筆したい。まず和生がデビュー以来、中山芝1800m以上のレースに騎乗した際の成績から。

集計期間:2012. 1. 9 ~ 2021.12.19
横山和生 11- 4- 6-122/143
勝率7.7%、連対率10.5%、複勝率14.7%

 しかもこれ、単勝回収率144、平均9.0着、平均10.2人気で単勝平均配当も1878円なのだから優秀以外の何物でもない。

 タイトルホルダーは逃げ先行タイプだが、中山の芝中距離で最も好結果を残している作戦でもある。

脚質、着別度数、勝率、連対率、複勝率
逃げ 4- 1- 2- 12/ 19 21.1% 26.3% 36.8%
先行 6- 2- 2- 23/ 33 18.2% 24.2% 30.3%
中団 1- 1- 2- 33/ 37 2.7% 5.4% 10.8%
後方 0- 0- 0- 52/ 52 0.0% 0.0% 0.0%
マクリ 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0%

 では次にタイトルホルダーについての情報。同馬の父ドゥラメンテの初G1勝利の産駒でもあるが、菊花賞の開催された阪神よりも中山が得意。最多勝、かつ勝率もトップクラスだ。

2021年、中山芝1800m以上、2歳、3歳、3歳上(4歳世代は不在のため省略)

 ここまでの情報で、有馬の外枠が不利ではないこと、和生にコース適性があること、ドゥラメンテ産駒も中山芝の中距離が得意だということがハッキリした。

 では次に、今秋の中山開催における見逃せない傾向にも触れておきたい。

 ダメ押しになりそうなのが以下のデータ。こちらは12月の中山開催における芝1800以上条件で、勝ち馬の脚質。

◆脚質上り別集計
集計期間:2021.12. 4 ~ 2021.12.19
脚質、着別度数、勝率、連対率、複勝率
逃げ 7- 1- 2- 7/ 17 41.2% 47.1% 58.8%
先行 5- 8- 10- 41/ 64 7.8% 20.3% 35.9%
中団 4- 8- 4- 64/ 80 5.0% 15.0% 20.0%
後方 1- 0- 1- 69/ 71 1.4% 1.4% 2.8%
マクリ 0- 0- 0- 1/ 1 0.0% 0.0% 0.0%

 対象17レースのうち、7頭が逃げ切りを決めており、その勝率は41.2%と驚異の好成績なのである。つまり、冬の中山開催では「前残りが多発」しているということだ。

 そして、当然ながら有馬記念で前走菊花賞組が好成績を収めている事実も後押しする。

◆前走レース名別集計
集計期間:2011.12.25 ~ 2020.12.27
前走レース名、着別度数、勝率、連対率、複勝率
菊花賞G1 4- 1- 2- 4/11 36.4% 45.5% 63.6%
JCG1 2- 3- 6-48/59 3.4% 8.5% 18.6%
天皇賞秋G1 1- 2- 1-13/17 5.9% 17.6% 23.5%
凱旋門G1 1- 0- 1- 4/ 6 16.7% 16.7% 33.3%
アルゼンHG2 1- 0- 0- 5/ 6 16.7% 16.7% 16.7%
コックG1 1- 0- 0- 0/ 1 100.0% 100.0% 100.0%
エリザベG1 0- 2- 0-16/18 0.0% 11.1% 11.1%
金鯱賞G2 0- 2- 0-13/15 0.0% 13.3% 13.3%

 このデータをなぜ過去20年ではなく、10年にしているかというと、某ノーザンファームによる使い分けの弊害で、秋に天皇賞、JC、有馬の3連戦が減ったことによるものだ。

 20年前まで含めればJC組が最多勝となるが、10年前でデータが直近なら整合性も高まる。

 最後に触れておきたいのは同型であるパンサラッサの存在。こちらはスローで前残りを狙うせこいタイプではなく、「肉を切らせて骨を切る」ハイの逃げが持ち味。もしこちらが外枠でタイトルホルダーが内なら、是が非でもハナを奪うために多少強引でも競り掛けていったはず。

 だが、内枠を引いたことで行くしかないパンサラッサはすんなり先手を取れ、タイトルホルダーは競られることなく2番手で落ち着けるのではないか。

 タイトルホルダーについても、岡田スタッド代表・岡田牧雄氏が、非常に興味深い話をしていた。

 氏によると、武史が騎乗ミスをしたそのセントライト記念の時も「1000mを1分で行って、4コーナーで5馬身離してほしい。そしたら負けないだろうし、最下位になったら私が責任を取る」と考えていたらしい。

 そして、菊花賞でも同じように伝えていたら、今度は注文通りに武史が騎乗して5馬身差の圧勝をした訳だ。ノリのセイウンスカイ同様、見事なラップだったとはいえ、武史がオリジナルで考えたのではなく、陣営からの指示通りに乗った結果である。

 騎手が重複してしまうため、あくまで仮の話となるが、あのレースにエフフォーリアが出走して本当に勝てたのかという疑問は残る。

 当時、セイウンスカイに千切られたスペシャルウィークとて、レコード走の前に完敗しているのだから……。

 また、今回の和生と武史にとっては両者の精神的な余裕に大きな開きがある。

 和生の場合は元々代打的な意味合いもあった上で、リクエスト通りに乗って負けても岡田代表は叱責しないはず。

 対する武史は一歩間違えればルメールに乗り替わりの噂もあったノーザンファームの生産馬。クロノジェネシスの出方を警戒する必要もあれば、意識はそちらに向く。

 そして何よりの怖さは、タイトルホルダーとエフフォーリアのどちらにも騎乗したことだろう。弥生賞でタイトルホルダーが快勝しても、武史の中では完全にエフフォーリア>>>タイトルホルダーであることに変わりはない。

 それは天皇賞・秋(G1)の勝利でも確信に変わったはず。だからこそそこに油断が生まれてもおかしくない。皐月賞でも負かしたように、いつでも交わせる相手と侮っていたら、捕まえられない可能性も十分に出てくる。

 個人的にエフフォーリアの菊花賞回避は怠慢だと考えるが、これがもし陣営の危惧する通り、本当に「距離不安」があったなら、ペースが流れるメンバー構成でガス欠を起こすこともありそう。

 この馬が世代トップの能力の持ち主ということに異論はないが、この有馬記念に関しては、大外でもタイトルホルダーに条件が向くと考えたのが結論である。

※個人の見解のため、馬券は自己責任で(笑)








 

最後までお読みいただきありがとうございます。 このコラムが面白かったり、役に立ったなって 感じたらポチっとしてもらえると それはとっても嬉しいなって。 |д゚)チラッ