PSM(プレシーズンマッチ) サンフレ-ガンバを観て今季期待したい選手

 2024年2月10日、エディオンピースウイングスタジアムのこけら落としとして、サンフレッチェ広島はガンバ大阪を迎えてプレシーズンマッチ(以下PSM)を行いました。
 結果はサンフレの敗戦。内容的にも基本的にはガンバ優勢の試合となりました。ベテラン勢の先発起用やキーパー含めての9人交代という公式戦とはまた違う状況だったとはいえ、ピッチに立った選手たちの熱量を見てもお互い試合の中では勝ちに行ったはずで、そんな中負けたというところでサンフレファンの私としてはやや不安な気持ちも芽生えた一日となりました。
 しかしまだ開幕まで2週間弱。チーム全体の仕上がりとして十分なものを見せられずとも仕方ありません。そんな中、新戦力をはじめ期待を抱かせるパフォーマンスをした選手もちらほらと見受けられました。
 そこで、今季の活躍を期待させるものを見せてくれた両チームの選手について書いてみようと思います。PSMを観戦していない方が読む意義のある記事になるように、10日のパフォーマンスを中心に昨季のプレーぶりにも触れながら書こうと思います。ではどうぞ!

サンフレッチェ広島

柏好文

 長くチームに在籍し活躍していることを加味し、先発機会を「与えられた」形だったと思われる柏。東が大きな成長を見せ新戦力の志知も台頭した昨季は出番を大幅に減らしましたが、PSMでは躍動しました。対面の相手をかわしてクロスやシュートをやりきることができていましたし、ガンバは岸本が大外に張ってWBをピン留め+半田がそれにより空いたスペースを内側に寄って使うという、WBに難しい判断を強いるやり方でしたが、必要に応じて前に出てアプローチしつつ、裏に抜けられる決定的なプレーも見られなかったと思います。45分のみのプレーで、シーズン本番でもフルタイムでやりきることは体力的にも難しいのかもしれませんが、左利きの東や志知とは明確に違う強みを出せますし、相手やコンディションに応じてある程度のプレータイムは確保してほしいですね。この日もありましたが、高さと思い切りのある中野への外→外という形も見たいです。

山﨑大地

 後半から荒木に代わり3バックの中央で出場。持ち味のキックで得点の起点になったほか、終盤にはジェバリというリーグ屈指のFWを相手にしましたが我慢強く対応し強さも見せました。何度も言及していますが、荒木とは違う持ち味があるのでオプションとしてかかる期待は大きいです。頭を打った影響もあったのか荒木が前半フワフワしたプレーに終始していたこともあり、相手のポストプレイヤーの監視を専任する3バック中央という大事なポジションが穴とならないよう奮起してほしいですね。
 これから期待したいのはDFリーダーとしての役割ですね。大きな責任はないと思われますが、CBに入った東の空中戦や裏が狙われピンチになるシーンがPSMでは散見されました。ラインの上げ下げを中心に、リスクコントロールと相手への圧力をチームとしてどちらも遂行できるように、指示など行っていってほしいですね。キャラ的にも喋れるタイプだと思うので。

大橋祐紀

 今季の新戦力の目玉。後半から出場しましたが、ポジションは最前線ではなくシャドーとなりました。彼の持ち味の一つとして相手に向かっていくドリブルがあると思います。単純なスピードの問題もありますが、ヴィエイラとソティリウはどちらも主にカウンター時に相手に向かってドリブルができません。すぐにボールを離したがり、「爆弾ゲーム」のような感じになっているシーンは昨季も散見されました。相手を引きつけてからパスを出さなければ、苦労するのは次にパスを貰った選手。あと単純な問題として、自分より前に味方がいない最前線にいる選手がすぐに味方を探していては、他の選手が挙がる時間は作られませんしボールも前に進みません。アジアカップのバーレーン戦では浅野がカウンターで3対1となった直後に南野にパスを出しそれが流れる…というシーンがありましたが、あれもパスの質が問題なのではなく相手を引きつけることなくボールという「爆弾」を素早く渡したという判断が問題です。
 試合をフルで観て大橋がどうこうというイメージが正直ないのでプレー集を見ての感想になりますが、大橋はこれができますし加えて普通にスピードもあります。この試合でも相手に向かってドリブルをしようというシーンが数多く見られましたが、中谷や三浦の強さもあってロストしてしまうことが大半。エリア内へと進入したシーンも上手くシュートまでつなげるには至りませんでした。
 しかし、このプレー選択自体が悪いものであるとは思いません。大橋はシュートについても大きな持ち味だと思いますが、そこが発揮されるシーンはありませんでしたし、まだまだ本領発揮とはいかないと思います。PSMの出来についてはあまり気にせず、自分の良さを最大限発揮できるような心構えでシーズンを戦ってほしいですね。
 懸念点はポジション。後半はソティリウを最前線に、大橋と加藤が2シャドーという3人のストライカーが並ぶ形でした。ソティリウは言うまでもありませんが加藤も最も輝くのは最前線でしょう。昨季の加入後はほぼ常にシャドーでプレーしたことで観る側も麻痺していると思いますが、前を向いてボールを持つ時間が長いポジションに加藤を置くことは、彼の魅力を減らしているようにしか正直思えません。昨季の京都戦のみならずPSMでも爆誕した加藤ボランチなど正直論外です。背中を消しつつプレスしてもらい、ボールを収めて味方に前を向かせ、カウンターなどの機会では相手に向かってドリブルしつつ味方を活かし、常にフィニッシュワークには絡む。加藤の最適な起用法はこれでしょう。
 話が逸れましたが、大橋も同様に最前線が持ち場となるのが理想でしょう(加藤よりはシャドー向きな気もしますが…)。後半は常に3人とも裏を狙うような感じになっていて、一つ下のスペースが上手く使われていませんでした(満田がシャドーだった前半もここは同様。みんなゴールへの欲が出たんでしょうか)。フィニッシュワークが上手い選手を多く並べれば得点の期待値が上がるわけではありません。フィニッシュする選手に時間と空間をいかに持っていくかというところが最も重要なはずです。ここはスキッベとは認識を異にする点だと思われます。よって、大橋や加藤を無理にシャドーで起用するくらいなら、より前を向いたプレーやスモールエリアでのプレーが上手い選手を起用した方がいいのでは?というのが私の考えになります。例えば満田と森島はどちらもそういうプレーが上手いコンビでしたし、今いる選手ならマルコスとかエゼキエウとか。
 マルコスが負傷している現状は加味する必要がありますが、大橋の最適な使い方は?というところは思考停止せずに色々考えてほしいですね。まあ、ソティリウよりボールが収まる代わりにハイクロスや鋭いアーリークロスのターゲットとしては質が落ちるヴィエイラを頂点にシャドーに大橋…であれば、ソティリウと組むよりは持ち味が活きるかもしれません。大橋は最前線で長い時間観たい選手、というのが一番言いたいところですね。そういう選手が多いチーム編成が歪というのが最大の問題ですが。
 グダグダ愚痴みたいに書いちゃいましたが、大橋に広く期待されているのはやはりゴールでしょう。安定して2桁取れる日本人は、サンフレだと寿人まで遡る必要があるので。かなり高い期待がかかり本人もプレッシャーかもしれませんが、マイペースな感じなのであまり気にせずに、徐々にチームに馴染んでいってポジションを掴んでほしいですね。

川村拓夢

 ボランチとしては、PSMでも普通にプレーを見せてくれました。昨季終盤成長を見せてくれたので、チームの核となれるよう引き続きレベルアップしてほしいです。
 ここで書くのは左WBとしてのプレー。PSMでも短い時間ですがプレーしました。ストライカータイプが多い編成上の理由で、満田がボランチでプレーする機会が昨季に引き続き増えることが予想されます。スキッベは川村にとてつもなく大きな信頼を置いているため、満田のポジション変更により割を食うのは野津田や松本泰志というボランチ陣。そしてボランチには、青山や松本大弥、そして今季加入した細谷という選手もいます。要するに、人が余っているのです。
 昨季~今季のサンフレの大きな弱点の一つとして、WBの推進力不足というのは挙げられるでしょう。志知や越道はコンビネーションで推進力を出すことはできますが、独力で…というのは得意なタイプとは言えません。
 そこで川村です。川村はボランチでプレーするときに、比較的広いエリアがプレーに必要という弱点を抱えています。大橋のところで書いたことと重なりますが、川村も相手に向かってプレーすることはあまりせず、スペースに向かってプレーしに行きます。そのため狭いエリアだと効果的に次につなげることはあまりできず、必然的に流れたり降りたりしながら受けることとなり、結果的にチームの前進に大きく寄与することはできないということが散見されます。そういった弱点があまり問題視されず、逆に彼の最大の持ち味である推進力を活かせるのがWBというポジションでしょう。クロスやシュートも志知や東のそれとはまた違った鋭さをもっており、クロスに合わせるだけでなく入り込んでいってゴールという一昨季に見られた形の再現も期待できます。
 もっとも、志知や東に加え、柏やキャンプでやってた小原と、左WBの人数も多めです。なので常に左で使え!という提言がしたいわけではないのですが、彼の持ち味をより大きく活かせるポジションもあるのでは?ということです。
 まあ、本人も中央でのプレーにこだわりは持ってると思うので、ボランチとしての弱点をカバーして成長できるように頑張ってほしいという方がむしろ大きいですけどね。代表にもまだまだ行けると思うので、成長していってほしいです。

ガンバ大阪

ファン・アラーノ

 昨季も主力級の出場時間を確保したアラーノ。左ウイングで出場しましたが、よい仕掛けをしたり機を見て中外を変えてポジションを取ったりと、チームの攻撃を活性化させる役割を果たしていました。すごく賢い選手というわけではなく、加えて決定的なところでも課題を残していると思いますが、宇佐美を始めPSMでリザーブに回ったが攻撃的な役割を果たせる選手が複数いる中、スタートで出て持ち味の献身性を活かしつつリザーブの選手につなぐ…という役割は大いに期待できるところですね。

鈴木徳真

 今季セレッソから加入した選手。非常に高いインテリジェンスとセットプレーの質が武器のボランチですが、香川がアンカーポジションに収まったことで昨季は出場時間を大きく減らしていました。真ん中のポジションを守れるボランチが不在のサンフレにぜひ…と思っていましたが、山本が抜けたガンバがその穴埋め的に獲得することに。
 今季から4‐4‐2のような形でいこうとしているらしいガンバ。2人の横並びのボランチでどちらかといえば引き目の役割をこなすのかと思いきや、パートナーのダワンと同じように役割を分担している印象でしたね。外を広く張らせるのがポヤトスガンバのスタイルだと思うので、状況に応じて間を埋める必要があると思いますが、その役割もきちんと遂行しようとしにいっていました。サンフレがクリーンにボールを前に進めるシーンが少なかったため非保持についてはあまりよく見れていませんが、大きな不安がある選手ではないでしょう。キックの質はやはり良かったですね。得点にも繋がりました。
 後述しますが、中盤の舵取り役として突出したものを持っているネタ・ラヴィが万全であれば、彼を外す選択をポヤトスが取るとは思えません。中盤の底を1人でこなせるのはラヴィの他には鈴木しかいないでしょうから、そこの控えの役割をこなしつつボランチの相方やインサイドハーフの一員として活躍してほしいですね。キッカーをこなしていたこともあり、山本の後任としてピタリとはまってくれるのではないでしょうか。

中谷進之介

 名古屋から移籍してきた代表歴のあるCBは、いきなりキャプテンマークを巻いてプレー。主に対人の強さを中心に、圧巻のパフォーマンスを見せてくれました。見せてくれましたというか、サンフレを応援した筆者からすると最悪の相手でしたね。ドグとソティリウではまるでボールが収まりませんでした。余談ですが、(丸山もですが)中谷と藤井が同時に抜けた名古屋についてはびっくりしましたね。同ポジションに近い選手が複数抜ける、しかもこれだけのレベルの選手で…となると、降格チームやJ2からの引き抜きを除くと過去に例を見ないのではないでしょうか。
 ガンバで昨季CBを務めたのは、三浦ディエゴ(退団)福岡佐藤(退団)江川…という面々だったかと思いますが、やや強度というところで不安の残るメンバーのプレータイムが長かった印象です。佐藤ほどできるかはわかりませんが、中谷も足元に不安のある選手ではないですし、弱点をカバーしつつガンバのスタイルにも適合していけるでしょう。とにかく失点が多かったことは本当に苦労の原因だったと思うので、一プレイヤーとしてもチームリーダーとしても失点を減らす立役者になってくると思います。

ネタ・ラヴィ

 背番号を6番に変え、残留したスーパーピボーテ。彼の不在時にピボーテを務めた山本が抜け、ラヴィ次第でチームの出来が大きく左右されそうだと思っていたら鈴木が来ました。しかし、変わらずチームの最重要人物の一人であることは間違いないでしょう。
 PSMでも、勢いを重視して人に当たるサンフレのプレスを上手くいなしていましたが、ワンタッチではたいていなすのではなく、しっかりとボールをキープして引きつけた上でリリースしていました。これをやられるとプレスの強度は落とさざるを得ませんし、チームにとって非常に貴重な存在ですね。余談ですがこれができる選手がいないのがサンフレ。野津田か泰志か、誰か頑張って…
 2人が横並びのシステムでどう役割分担していくのかはまだ不透明。特に、相方候補一番手のダワンは動き回ることで良さを出せる選手ですし、ラヴィとは何もかも違うタイプ。ダワンのようなタイプの相方をどのように使うのか、昨季とはまた違った形でラヴィの活躍が見られそうですね。

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