2022シーズンサンフレッチェ広島全選手レビュー前編 GK&DF&WB

 ここ数年では一番のシーズンを送りましたサンフレッチェ広島。前年から監督もチームのスタイルも変わり、選手たちの立ち位置にも少なくない変化が見られました。チームが充実してたからといって全ての選手が充実したシーズンを送ったわけではありません、当たり前ですが。ともに戦った選手たちを振り返っていきましょう!

 ポジション分けは主観に即した適当なものです。ポジションごとの順番は背番号順です!それではいってみよう!

GK

林卓人

 広島帰還以降長くゴールを守ってくれている大ベテランは40歳を迎えました。今季は開幕からレギュラーを務めるも、ハイライン・ハイプレスを志向するチームスタイルに適応するには守備範囲の広さやディストリビューションの質が不足しており、大迫にスタメンを譲ることに。林が出た数試合で勝てず大迫に代わってからチームが上昇気流に乗ったのも、少なからずGKの変更がチームに影響を及ぼしているのは間違いないとはいえややアンラッキーでしたね。中盤以降はケガもして大迫不在時に役割を果たせず、セカンドキーパーの座も川浪に譲ってしまいました。2019年の大迫の台頭後も林がゴールを守る時期が毎年あり、「まだまだ健在じゃ」という感じでしたが、流石に今季で主力の座は奪われてしまいましたね。来季以降も同じスタイルを継続するのであれば、スタメン奪還は困難を極めそうです。本人的にはプレイヤーとしてまだまだ価値を示したいでしょうが、大迫含め若い選手やチーム全体を支える役割に期待したいところ。

川浪吾郎

 試合に絡めないGKってチーム内でもトップレベルに存在感は薄くなりがちですが、川浪の存在感はチームトップレベル。試合中はベンチから、試合が終われば選手たちの真ん中で、試合に出れば最後尾から、とにかくチームを盛り上げるムードメーカーとして価値を示した1年になりました。めちゃくちゃうるさいですが、若い選手も増えた中でこういう役回りをやってくれる存在は貴重です。今季のチームは1年間通して雰囲気よくやれてたように思いますが、その雰囲気づくりへの川浪の貢献度は計り知れません。大迫が代表に行き林が出場できなかったルヴァンプレーオフでは好セーブを連発し優勝の隠れた立役者になったほか、大敗したもののターンオーバーした神戸戦でも良いプレーを見せ、「本業」でもセカンドキーパーとして素晴らしい仕事をしてくれました。アウェイで相手選手に野次るサンフレサポをなだめていたのは面白かった&素晴らしい。

大迫敬介

 今季大きく飛躍した選手の一人。開幕はベンチスタートでしたが、出番を掴むとチーム戦術に適応し活躍。積極的な飛び出しやチーム内で相対的に優れた足元の技術やキック、スローイングの質といった持ち味が活きやすいスタイルでチームが戦ったことは追い風でしたが、加えて今季はシュートストップの頼もしさが格段に増しました。「止められなくても仕方ないけどできれば止めてほしいな」みたいなシュートを止めてくれる機会が今季は多かったです。特に試合の最初のピンチはほぼ決められた記憶がなく、数字以上にチームの躍進に与えた影響は大きいはず。彼の課題の一つである判断ミスの多さやPKストップについては今季も露呈しましたが、大迫ならこれからも成長して一つずつ課題と向き合ってくれるはず。ユース同期の3人が同時にチームに加わり、自身やチームのSNSで楽しそうな姿が見られる機会も増えた気がします。パフォーマンス向上にももしかしたら影響を与えているかもしれませんね。

DF

野上結貴

 ボールに触ることも守備も全方位的にそつなくこなせる野上は、序盤こそいつものように右CBのレギュラーでしたが、塩谷がCBに回ってからは控えに。そつなくこなせると書きましたが、明確な強みになる部分も特になく、低い位置でのビルドアップへの関わりには不安も残していたため、とりわけその部分で違いを生み出せる塩谷にスタメンを奪われたのはチームスタイル的にも仕方ありません。相手が悪すぎます。野上がバックアップというJ1では贅沢極まりない状況が続くと思いきや、夏場以降はまさかのWBで出番を掴みます。撤退時の守備固めではなく最前線にまでプレスをかける役割も担い、不安もありましたが、むしろDFの選手らしく堅実にプレスをこなし機能。元々高い位置で攻撃に絡むシーンでは崩しに寄与する回数も多かったため、期待を大幅に上回るハイパフォーマンスを見せてくれました。来季は名古屋へ移籍。緊急時に近い状況ではボランチもこなすなど「便利屋」的に起用しており彼の移籍のダメージはかなり大きくなりそう。戦力的にダウンというだけでなく、森保後のサンフレを支えてくれた一人が抜けるのは悲しいですね。名古屋でもがんばれ!

塩谷司

 元日本代表の肩書は伊達じゃありません。歳を重ねても、塩谷はあの頃と同じようにスーパーでした。序盤はボランチで起用され、突撃プレスで空洞化する中盤の掃除屋兼縦パス差すマンとしてチームを支えました。キャラクター的にかなり歪ですし開幕前は予想にもしなかったですが、野津田とのドイスボランチは普通に名コンビでしたね。H鹿島戦以降は主に右CB、流石に強い対人で相手を潰し、安定した保持とロングボールでチームのビルドアップの核の一人としても機能しました。試合終盤や連戦時のコンディション低下は顕著で流石に衰えも感じさせますが、そこを管理さえすればまだまだJ1有数の選手でしょう。来季は弾丸FKをゴールに突き刺すことにも期待します。

荒木隼人

 頼もしくなりましたねえ。元々の強みである空中戦もさらに成長し、もはやJ1トップのエアバトラーと言ってしまってもいいでしょう。ディエゴオリベイラやダミアン、フアンマといった屈強な外国人相手に何もさせない試合も少なくなく、やや不安でしたがハイライン戦術にも適応し裏のカバーもそつなくこなしていました。ビルドアップにはまだまだ課題を残しますが、3枚の中央というポジションのバランスをあまり崩さないチームスタイルや両CBの上手さにも助けられ及第点以上の仕事はしてくれました。運び出しや長いボールに関してはもっと成長しないとチームの保持の弱点とさえなりそうですが、サイドを変えるボールへのチャレンジも年々増えているように感じますし、これから成長してくれるでしょう。あとは動き回る系のFWの捕まえ方。機動力のある相手には苦戦してポストプレーを難なく許していました。特徴がハッキリしていますが、その強みは現代表選手と比べても強みと呼べるレベルなので、弱点から目を背けなければ4年後も普通に狙えるはずです。

佐々木翔

 頼れるキャプテンは自身ベストのシーズンだったといえるのではないでしょうか。マンマークの機会が増えましたが流石の圧倒的な対人で相手を潰しまくり、保持では運び出しや左足の正確なキックでチームの前進を助けたほか、隙を見たオーバー&インナーラップで攻撃に厚みを生み出しました。代表活動にも絡みつつ新体制でも主力の座を譲らないのは当然のように思えて当然でも何でもない、とんでもないことです。ワールドカップメンバーには落選し、4年後を見据えると今後代表メンバーに選ばれる可能性は低そうですが、その豊富な経験を未来の代表選手たちに伝えていってほしいです。キャプテンには畜生みがある選手が就くことも少なくなく、佐々木ほど爽やかなキャプテンはなかなかいないでしょう。その点でライバルの谷口彰悟も移籍しますし。この爽やかキャプテンがいてくれる間にリーグを獲りたいですね。

住吉ジェラニレショーン

 フィジカルが武器の脳筋ロマン系DFかと思ったら全然違いました。空中戦も強くて足も速く、フィジカルに優れるのは言わずもがななのですが、ボールを運び長いボールを入れるというところも積極的にこなし、普通に現代型のCB。荒木が苦手なところを質はともかくやりたがるタイプなので、チームのやり方によっては荒木からスタメンを奪うことも現実的なはず。真ん中だけでなくもちろん左右のCBもこなすほか、右WBとしてプレーもしました。元々FWということもあってかダイナミックなドリブルでファンを沸かせるシーンもあり、現状のスカッドだとやや心許ない右WBでのプレーが増えるかもしれませんね。

今津佑太

 苦しいシーズンになりました。DFの控えの座を住吉に譲り、出番が非常に限られる中で出場した神戸戦では最序盤で一発退場。見せ場はほとんどなくシーズンを終えました。フィジカルでは住吉に劣る上ビルドアップへの貢献度でも住吉が大器の片りんを見せ、そもそものレギュラー陣の佐々木や塩谷はその部分がリーグ屈指なレベルなので、他の選手に比べた強みが見出せません。野上が移籍しましたが今度は大卒ルーキー組との競争が待ち、来季も明るい見通しは持てませんがどうなるでしょうか。鄭大世が動画でネタにし、昨季はエヴェラウドにオラつくなどキャラクターは独特です。

WB

野上結貴はDF編で!

藤井智也

 序盤は主役の一人。スプリント数、ドリブル数、クロス数といったスタッツでJ1トップレベルに躍り出て、速い攻撃を志向するチームを引っ張りました。が、夏場以降一気にベンチ外に。そのままレギュラー奪還は叶わずシーズンを終えました。何がダメなのか、ハッキリとはわかりませんが、プレスの判断や精度、撤退時の安定感といった非保持部分は弱みとも言えますし、低い位置でのビルドアップでもチームに貢献できず、大外からクロスにフィニッシャーとして入ってくる動きもあまり見せず得意そうでもありません。スピードと姿勢の愚直さという超明確なストロングでチームを引っ張りましたが、その間にプレー選択の基準や全方位的なプレーの精度といった、チームの成熟とともに各選手が身につけていった部分の獲得が遅れたことも明白ではあります。ジョーカー的に使ってその弱点には目を瞑るという判断もアリでしょうが、首脳陣はそこをせずにもう一つレベルアップしてほしかったんでしょうね。去就は注目されましたが鹿島へ移籍。試合に絡めない選手へのアプローチの仕方として、チームに残すことを前提にするなら失敗例の一つになるでしょう。正直もう一年は残るべきだと思いますし、サンフレ的にも残る前提みたいなところはあったでしょうが、この歳の選手が試合に絡めないこととそこへの感情、他チームのオファーを舐めてましたかね。とにかく岩政大樹のチームでどんな役目を担うのかはめちゃくちゃに注目です。藤井にぶち抜かれないようにみんなで頑張ろう。

浅野雄也はシャドー編で!

柏好文

 もはやドリブラーではないですが、素晴らしい唯一無二の存在であることは変わりません。保持の安定感を作るのには欠かせない存在ですし、低い位置→前線へというダイレクトなボールを送る機会は増え、プレスからの脱出策の一つとして機能しました。相手をかわしてクロスというのはもはやお家芸ですし、ドリブルやワンツーなどで踏み込むという本来の持ち味も忘れることなく見せチームに貢献しました。ハイプレス戦術は流石にしんどそうで穴としてねらわれる試合もありましたが、東の手術もあり人がいない夏場も当然のようにフル稼働し頑張ってくれました。来季で10年目らしいです。柏のように「よそから来た」感が強い選手が10年もチームにいると考えると、私も歳を取りました。次の兎年くらいまでいてくれてもいいんですよと言いたいですがそういうわけにはいかないので、彼とももう一度優勝したい!

東俊希

 良い精度の左足で、特にクロッサーとして前半戦の左WBを主に務めました。サイズ含めたフィジカル的な部分で守備が信頼できるのが良いですね。ボールも普通に触れるのですが、相手のプレスラインを見て適切にポジションを取れないのと左足にボールを置きまくるので、ビルドアップでの貢献度は限定的。かといって高い位置での怖さもなく、決定力に至っては弱点と言えるレベルなので、使い方がめちゃくちゃ難しい。手術明けの来季はまた一からという気持ちで頑張ってほしいですね、志知という素晴らしい左サイドのプレイヤーも何故か加入したので。個人的には、左足にボールを置くことをやめるにしてもやめないにしても、右サイドで使ってみるのは本人のためにもチームのためにもありだと思います。柏と志知含め左のスターターで行けそうな選手が3人もいますし、どうでしょうか。彼はイケメンですね。女の子の東ユニ率は異常です(偏見)

茶島雄介

 アタッカーですが、藤井が起用されなくなった後に右WBのレギュラーを掴みました。流石に敵陣深くではセンスを見せ攻撃に大きく貢献、さらに終盤にかけて重要性が強調された逆サイドからのクロスのフィニッシャー役としてのチャレンジもこなしました。低い位置のビルドアップも守備もそつなくこなし、サイズの問題を除けばオールラウンドに優秀なWBだと思います。個人的にはもっとボールを持った時に魔法が使える選手だと思うので、サイドは違いますがこれから柏的になってほしいですね。サイドでボールが落ち着くと時間の作られ方が全然違い、めちゃくちゃ助かります。今のやり方だとセンターポジションは結構きついと思うので、サイドのスペシャリストとしての役割を期待します。前半戦は本当に使われませんでしたが、全然試合に絡めてなかった選手が突如出てきてちゃんとやれるのはチームとして良いことだし、腐らずやり続けた茶島もリスペクトしたいですね。

川村拓夢はボランチ編で!

満田誠はシャドー編で!

 以上になります!後編も近いうちに!

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