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ユートピアギャルとラジオ

 土曜の夜というのは1週間の中でも、特に羽を休めることができる最も自由な時間だと考えております。平日の疲れも土曜の半日で癒され、次の日も休みであるという最高の条件ということもあり、友達とお酒を交わしたり、クラブでミラーボールが回る中フィーバーしたりと平日の鬱憤を晴らすかのように多くの人は夜の街に繰り出すことでしょう。しかし、人間誰しもがそういった夜遊びを楽しめる人ばかりではございません。せっかくの休みだからこそ一人で自由になりたいそう思う人も少なからずいるはずです。私もそういった部類の人間でごいます。

 そんな一人の時間にこそ家で是非とも聞いてほしいラジオがございます。それは『アットホームpresents藤田ニコルのあしたはにちようび』です。このラジオはTBSラジオで土曜日の19時から1時間放送しているのですが、これがまたとてもいいラジオなんです。にこるんの喋りは声質も雰囲気も全てがちょうどよく心地よく耳に入ってきます。また、会話では手綱を完璧握っているように思え、それはアシスタントのタイムマシーン3号さんとの会話でもそうですし、メールに答えている時、一回しかありませんがリスナーと電話を繋いだ時、全てがにこるんの手のひらで心地よく踊らされている感じです。癒しも笑いもにこるんが思うがままにリスナーに届けてくれます。だからこそ、このラジオは特に一人であまり刺激のない家で聞くことこそが100%楽しめる拝聴方法だと思っております。
 番組冒頭の一人喋りや会話の中で出てくる天然ないわゆる「お馬鹿タレント」のような所は藤田ニコルという素材自体の面白さを再確認させられ、そのほかのお悩み相談や時事のコーナーでは22歳という若さにして芸能界の階段を何段も飛ばして駆け上がってきたにこるんの世間や他人への少し冷めた目線、一歩引いた達観したようにも見える目線から相当鋭いとてつもない正論を振りかざしてきます。このギャップや二面性によってパーソナリティーとしての藤田ニコルや番組自体の奥行きと底知れなさが出ており、そこにどんどん惹きこまれてします。凡な言葉ではございますが、テレビでは確実に見せてくれないようなパーソナルな部分が溢れ出ては止まらないトークばかりで、むしろ「藤田ニコルってこういうやつなんだろ」と思っている人ほど楽しめることばかりです。なめてかかればかかるほど面白いラジオだと思っております。
 そんな強烈なカウンターを持っている番組ということもあってか、リスナー層がとてつもなく幅が広いんです。これは持論ですが、ラジオパーソナリティーとそのリスナーというのは「コンプレックスの共有」によって結ばれているものだと考えております。ですので、リスナーというのは当然年齢層や男女比に偏りが多く見られがちなのです。しかし、この番組はほかの番組でも活躍するようなハガキ職人から元々にこるんのファンである10代女子というこの対極にいるかのような二者が複雑に交わって、ハガキを読む時にはにこるんが「このハガキは本当に10代女子かな」などと疑ってしまうほどのものです。10代女子の淡い恋愛相談のメールから30代男性のモテない嘆きのメールまでにこるんがズバズバと斬っていく様は、聴いていてとても爽快この上ないです。

 今までテレビを見ていて、一度でもにこるんを可愛いと思ってしまった人、そして、にこるんをなめてかかっている人これらに当てはまる人は確実に惹かれて、最終的にはにこるんのことを好きになってしまうことでしょう。オタクや童貞がこれまで空想上の生物として思い描いていた「優しいギャル」はパーソナリティー藤田ニコルとして、ラジオという媒介を通してきちんとそこに存在しているのです。この番組自体も今年から始まったばかりで、新規として入れるならこの自粛期間はとてももってこいな時期です。ぜひどこにも行けない今土曜日の夜はラジオに集まってみてはいかがでしょうか。

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