柔術同窓会

管理職なる前に地方の現場を経験してこい。
上司に言われて 嫁と息子を残して地方に単身赴任したあの日。
サプライズは帯昇格だけにしてほしかったぜ。

趣味のブラジリアン柔術のおかけで誰も知り合いのいない田舎でも家と会社の往復にはならなかった。
ブラジリアン柔術を通してでできた地方の友人は生活を楽しくさせてくれた。何もない田舎だったが、本当にいい時間を過ごせた。
仕事にもいい影響があったのか、成績はとてもよかった。
おかけで無事管理職に昇進。これは 3年の単身赴任の孤独を支えてくれた柔術仲間たちのおかげだね。
都帰りになるときには、仲間と今度試合会場で会う時は俺たち黒帯かなって笑って話しをして数年の時日が過ぎました。

まさか、数年後にまた出張でここに来るなんて。
代表に久しぶりに練習に行かしてくれって連絡したら
「もちろんだよ。出稽古料？トーキョーの道場じゃねーんだからそんなのいらねーぞ笑」
先生の変わらない感じ、あの頃にタイムスリップした気がした。
離れる前と何も変わらない町。懐かしい町。
「トーキョーに行って偉くなったんだな笑お金あるならshoyorollくらい奢ってくれよ笑」
迎えに来てくれた仲間は出世争いをしている職場の人間とは違い、本当に嬉しそうに言ってくれた。
久しぶりだけど以前と何も変わってないよなー。

道場では先生が笑顔で 「トーキョーから帰ってくるっていうからみんな楽しみにしてたよ！スパーするの久しぶりだから楽しみだね。」 何年も前にいたのに覚えていてくれて嬉しかった。
メンツもあの時とほとんど増えてもないし変わってないよなー。

よーし、じゃあ準備運動。列になってエビして、マット運動ね。
え？なんでわざわざ壁にみんな溜まって他の人がやるの待ってるの？
その場でやればいいじゃん。
あの頃と変わらず非効率で何も変わってないよなー。

はい次はクローズ入れてから左右の腕十字10回ずつ。
最後ゆっくり極めるね。その次は左右のオモプラッタ。三角絞め。
それいまだにやってるの？ 何も変わってないなよなー。

じゃあ今日は巻きスパイダーやるか！ 巻きスパイダーからの逆さスイープね。 この辺りから柔術博物館にでもきたのかと思った。
いつまでも古い同じ技をやってる。 何も変わってないよなー。

久しぶりのスパーはみんなから指名されて休む間もなかった。
そういえば昔から出稽古にきた奴にガチスパーを仕掛けてたよな。
トーキョーの黒帯のあいつをスイープしたとかパスされなかったとか事後のピロートークに花咲かせてたの思い出したよ。
まさか俺にもガチスパーしてくるなんて。
全員弱いけど笑 何も変わってないよなー。

練習終わりの雑談も懐かしい。 「トーキョーで別人みたいに変わったね。テクニックも増えてすごく上手くなってびっくりしたよ。」
教則でも買えばいいのに。あんた達の柔術は 何も変わってないよなー。

変わったこともあるみたいだ。
いないと思ったＮｏ．2の人は黒帯になった途端、独立して隣町に道場を出したらしい。

練習が終わり、ホテルに帰る車の中であいつが羨ましそうに 「お前はいいよなトーキョーで黒帯なって。先生が独立の事件以来、黒帯出さないようにしてるんだよ。」
そういえばお前の帯の色は、、 何も変わってないよなー笑

ビジネスホテルに戻り、もやもやした気持ちをかき消すようにビールを飲み窓の外をみた。
昔と変わらないこの町、そして変わらない人たち。 俺は何を期待して、この町にわざわざ道着を持参してきたのだろう？
懐かしの道場でノスタルジックな気持ちになりたかったのか？ 東京で練習し黒帯になった自分を自慢したい下心があったのか？
私は なぜ思い出の道場を見下してしまったのか？
コインランドリーで洗濯するためにカバンから出した黒帯を服の上から腹に巻いてみた。 成長した証の黒帯。
成長しない。何も変わらないあいつら。
変わった帯は黒色だった、、心も、腹も黒色になったのだろうか？
洗濯が終わるまでに結論はでないだろう。 汚れた道着と心を洗うのには時間がかかりそうだな。
ということで考えるのをやめて、とりあえず出張のお楽しみ。
デリヘルを呼ぶことにしました。