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昨日の敵は今日の友でも明日は敵

「恨みっこなしでお互いベストを尽くしましょう!」
準決勝を終えて汗だくになった俺に爽やかな笑顔で話しかけてきたのはいつも練習している人でした。

「うちは同門対決を推奨してるからね~。嫌ならやらなくていいけど。基本帯が上がるのは優勝したやつだから。」
以前先生が話していたことを思い出した。

これは譲るとかできないのかな、、、。
昨日まで一緒に練習した人とみんなの前で試合。
正直そこまで乗り気にはなれなかった。

あの二人どっちが勝つかなー?練習だといつも同じくらいの強さじゃない?
同門対決が行われるのが分かるとさっきまでセコンドをしてくれた仲間達が少し遠巻きにニヤニヤしながら試合の予想をしていました。

決勝までの時間、対戦相手の元にはいつもプラレをしている若手の雇われインストラクターが駆け寄り、こちらを見ながら何やらコソコソ耳打ちしていました。
元々道場でも明るく人気のある彼の元には何人かの会員たちと若手の雇われインストラクターが集まり体をマッサージしたりリラックスした雰囲気です。
とてもその場に行く気になれず、私は1人でアップスペースに待機していました。

試合が始まると、どっちも頑張れー。無責任な応援が会場に響いていました。

よろしくお願いします〜。
笑顔で差し出して来た手と握手をした瞬間、オラ!という掛け声とともに飛びつきクローズドをやられました。
急にやられて膝が斜めに曲がるのが分かりました。
そのままクローズドの中に入れられた時には膝が激痛で立つこともできません。

下から何度も十時締めをする振りをして拳で鼻をゴリゴリやられ鼻血が出て嫌になり顔を上げました。
「そこチャンス!ナイススイープ。計算通り!!2の4で6点だよ!」
若手の雇われインストラクターが叫んだのと私がヒップスローでマウントを取られた時はほぼ同時でした。

最後はマウントからの十時締め。ニヤリと笑って見下ろす同門の相手の顔を見ながらタップしました。
これでようやく試合は終わった。少しほっとして立とうとした時です。
足が曲がらない、、力が入らない。立てない、、。
見下ろして笑ってきた対戦相手が肩をかしてきてなんとかマットから降りることが出来ました。
さすが紳士的〜。試合がおわったらノーサイドだよね!
また道場の仲間たちが口々に感想を言ってます。

でも、この試合ウチらしか見てないし同門対決って身内ノリでなんかほかの道場の人に申し訳ないよねー。わざわざここでやる必要なくね?
他の会員が我に返って覚めた表情で感想を言うなか試合は終わりました。

氷で膝を冷やしながら出た表彰式は地獄でした。
優勝おめでとう!!サプライズ昇帯〜!から2人でチームの旗を持って記念撮影までしました。

銀メダルを首に下げてみんなのところに戻ると
「何してるの?怪我なんかしたらダメじゃん。同門対決で無理しないでよ。怪我させた方も悪いなって気持ちにもなるし、そこ競うところじゃないからね。あくまで推奨してるだけで、この試合も強制でやらせたわけじゃないよ。
全く、他の人に悪影響が出ないようにSNSでも注意喚起しないとな。」
先生に怒られ、力なく、すみませんと謝ることしかできませんでした。

そういえばあの試合の時、3つの笑顔があった。
上から見下ろして首を絞めてきた対戦相手の笑顔。
同門対決を茶化して見ていた仲間の笑顔。
他の道場の先生に今俺の生徒の同門対決中だよ。すごいでしょって言ってたあいつのドヤ顔の笑顔。

あの日の同門対決ってどんな意味があったんだろう。

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