氷の偶像

僕にとって君は小さな悪魔

そしてそれが救いだった

ずっと君は嘘をつかなかった

みんなのように、嘘をつけなかった

君は怖がられていたね

ひとと違うからといって

だけど僕にはわかるんだ

誰ともそんなに違わないということ

他の子たちは必死に隠して

上手に生きていたこと

言葉を持たない僕と

嘘のつけない君は

そういう真似はできなかった

頬についた赤い傷

腕につけられた青い痣

痛くない、と君はそこで

初めて嘘をついた

誰かをかばうために嘘をついた

抱きしめることもできず

小さな手をつなぐことしかできず

いつまでも君は小さな悪魔で

そして僕の救いだった

ただしいふりをする大人や

その大人に刃向かわない子供や

うんざりしていたんだ

口を閉ざしたまま心のなかで

毒を吐いていた

いつのまにか君は偶像に

僕のなかの氷の偶像になった

抱きしめていたのなら

あのとき君は 傷ついている君は

嘘をついていたのかな


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?