過去に生きていた

過去に生きていた
背を向いた君、あなた、そして君
そのひとたちのそばを離れたくなくて
過去を生きてきた

ただひとりで抱えていた苦しみを
捨てることができなくて
過去を歩いていた

通り過ぎていったひとたちを
留められなくて この場所に残ったわたし
いつか戻ってくるなんて
信じて待っていたこともあった

でも約束してくれたひとさえ
戻ってはくれなかった

過去に生きていた
きっと わたしは過去の私が好きだった
かわいそうで 不器用で 孤独に怯えていて
そんな自分を 離したくはなかった

靴の底がすり減るくらい
歩いていた あなたや君といた場所を
そのときの記憶で今の景色を消したかった

ずっとずっとずっと

でも消すことはできない
「今」のほうが圧倒的に強かった

いなくなったひとたちを愛したのは
失ってからだ
風の温度が変わった
でもわたしは留まったまま

まだわたしは 過去を捨てることはできない

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