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暦について調べてみた

 2月が始まって、中国・台湾系の方とつながっている方が、2月1日を新年始まりだと言っていて、それが旧暦だとおっしゃっていて、でも、2月3日節分で、2月4日から新年という話もあって、どういうこと?となった、というプチ事件がありました。

 2月1日は新月で、太陰暦であるところの始まりだとか、実は今年は2月7日が立春なんだけど調整しているとか、いろいろなところからいろいろな話が出てきて、謎はますます深まるばかり。

 そもそも、旧暦ってなんだ?

 そんなことを思ったので、暦に関する本をランダムにいくつか買ってみました。

 で、私は知らなかったのですが、こんなこと常識なのかもしれないけれども、旧暦ってのは明治時代までだった、ということがわかりました。

 中牧弘允『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト新書Q)によると、明治5年12月3日に旧暦が新暦に切り替わったらしく、その理由として、大隈重信が書いたものが残っているそうです。そしてその理由というのが、明治4年に官公吏の給料が年俸制から月俸制に変わったことらしいのです。

 旧暦のままだと、明治5年にはうるう月があって、ということは、一ヶ月分余計に給料を支払わなくてはならない。

 じゃあ、もともと西洋の暦に合わせようという話もあったので、この際、切り替えてしまえ、ということで、切り替えることになったらしい、とのこと。

 っていうか、月俸制にしたときに気づけよ!ってやつですね。明治からいかに政府が縦割りでダメダメになっていたかがよくわかるエピソードだと思います。

 ちなみに、この時まで、日本の暦では昼と夜で1時間の時間が違う不定時法で、この時に、定時法に切り替わったのだと。それまで日本に機械時計が無かったってこと? すごい話。

 岡田芳朗『明治改暦 「時の文明開化」』(大修館書店)によると、江戸時代にも改暦の話はいくつかあったらしく、土御門家の介入の話も出てきます。古来、暦は陰陽道とつながっていたのです。

 林淳『天文方と陰陽道』(山川出版社)によると、日本でも律令国家時代には、暦は天皇から下賜されるものであったようです。ところが暦のニーズが拡大していくにつれて生産が追い付かなくなり、10世紀頃には暦家の加茂氏が配布するようになったそうです。それを鎌倉室町時代には、庶民が利用するために仮名文字に直したりしたものが出来、それが例えば三嶋大社が発行する三島歴のようなものが出てきた。これを地方暦というようです。

 この本に紹介されているだけでも、三島暦の他、大宮暦、大経師暦、院経師暦、丹生暦、南都暦、泉州暦、伊勢暦、会津暦、薩摩暦、仙台暦、南部暦などがあるらしい。まったく知らなかった。

 暦には天文学に基づいた、いわゆる農耕や狩猟に役立つ自然界の動きを予測し対応する機能と、儀式儀礼に代表される統制というか、物騒な言い方をすれば「支配」とか「統制」とかの機能があるかと思います。

 中国などは王朝が変わるたびに暦も変えていたりとか、イスラム暦が敢えて太陰暦を採用していたりとか、暦には非常に政治的な意味があるということもよくわかりました。

 ちなみに冒頭の疑問ですが、日本の旧暦はどうも太陰暦ではなかったようですね。太陽暦と太陰暦のハイブリッドで、太陰太陽暦というようなものだったようです。日本の古典を紐解けば、天照大神以降、天皇が太陽観測をしていたという話もあり、純粋な月の暦ではなかったのもうなづけます。

 もっとも、ときどき出てくる「皇紀」ってのがあり、神武天皇即位からの年号なんてのもありますが、これも旧暦から新暦に切り替えた明治5年に制定されたものということで、ぜんぜん、昔からあるものではないんですね。人は権力を持つと歴史を作り出そうとするので、古そうなものが古くなかったりして、油断できませんね。困ったものです。

 で、我々は、祝日が増えたりくっついたりすると喜んだり、時計を見てもう時間がないとか焦ったり、かなり自分の体内の感覚ではない、外からの基準にコントロールされているのが現状です。いや、これはもう、支配されていると言ってもいいのではないか?とも思ったりします。

 ちなみに、一週間が7日とか、一日が24時間というのは、これは昔から西洋東洋問わず一致しているらしい。こういうのは人類と地球のリズムに沿っているんでしょうかね?

 誰かが何かの意図を持って作った暦。コロナになって、ほぼほぼ人と人が世界どこからでもオンラインでつながれるようになった時代には、もっと時計や暦といった制約から、人は自由になってもいいのかもしれません。

 例えば、コロナがピークになったら、連休にしちゃってもいいのではないか。大雪が降ったらその地域だけ祝日にしちゃっていいのではないか。

 その方が自然な生き方ができると思うのは、私だけでしょうか?

初出:[本]のメルマガ vol.815

現場からは以上です。

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