見出し画像

魅力を伝える、だけじゃ足りない。

今回は、bizjapanのプロジェクトの1つである「縁、紡ぐ。」について紹介させていただきます。このプロジェクトでは、「若者がお金をためて伝統工芸品を買う社会にしたい!」という思いをもとに、現在、京都での伝統工芸品作成体験ツアーを企画しています。プロジェクト名には、「参加する学生、職人の方、そして一生ものの作品との縁を紡ぐ」という想いを込めています。

この記事では、主にプロジェクトの背景にある想いについて書いていこうと思います。

お金を払うことにこだわる

 なぜ日本人はヨーロピアンブランドには大金を出すのに、伝統工芸品にお金を出そうという気持ちにならないのでしょうか。この理由が、伝統工芸品のわかりにくさ、価格設定の高さにあることはよく言われます。
 では、なぜ伝統工芸品はわかりにくいのでしょうか。そして、どうすれば伝統工芸品が「わかる」ようになるのでしょう。伝統工芸品のわかりにくさは、言うまでもなく私たちの知識・経験不足からくるものでしょう。これを乗り越えるには、まず、現代風の色使いがなされた南部鉄器に見られるような伝統工芸品をわかりやすく身近なものにするというアプローチが考えられます。
 一方で、私たちが知識や経験を身につけて審美眼を養うというアプローチももちろん考えられるのです。良い作品を見極め、お金を払う人がいる。だからこそ、より良い作品が作られ続けていくのではないでしょうか。職人の方からの歩み寄りが進められることと同時に、私たち側も作品に向き合う姿勢を持つことが必要なのです。
 では、その審美眼はどのようにして養われていくのでしょうか。このプロジェクトでは、その鍵が伝統工芸品の購入にあるとしています。何かしらの作品にお金を払う、これがゴールとして設定されていることで、より真摯に作品と向き合い、知識を身につけることができる。このスタンスを持って、私たちはプロジェクトを運営しています。

私たちの問題意識

 伝統工芸品というと、高級志向で実用品というよりも鑑賞物というイメージを抱いている方も少なくないかもしれませんが、実は伝統工芸品は日常雑貨という位置づけで、生活に根付いた物が多く、高い機能性を有しています。また、日本人は古くから倹約を美徳として一つのものを長く使い続けてきました。伝統工芸品はそんな民族性も反映されており、長く、どんな状況でも使えるように素朴で地味なデザインのものが多いです。一方で、長く使っていく事で独特の味を醸しだし、世界に一つだけの一品へと変化していくところもまた魅力といえます。
 しかしながら、伝統工芸品産業において、需要低下が大きな問題となっているのもまた事実です。それに伴い従事者数も減少しており、伝統文化産業の規模は徐々に縮小しています。需要低下は伝統文化衰退に直結した重大な問題であり、伝統文化保護にあたって最も早急に解決すべき問題の一つであるのです。
 もちろん、需要をただ増やすことには原料の枯渇など産業の保護に悪影響を与えてしまう可能性もあります。だからこそ、自分の使用能力を適切に判断し、自分に合わせた楽しみ方を見極める力を身につけることが大切になると考えています。
 若者の伝統工芸品に対しての興味関心は他の年齢層と比べても高いと言われているものの、使い方や楽しみ方の知識不足が購買意欲を低下させる一因となっているのは先に述べた通りです。伝統工芸品の需要低下を引き起こした本質的な原因は、生活スタイルの変化及び上記でも述べたような伝統工芸品に関する知識不足にあります。つまり、伝統工芸品の「本物の良さ」や、日常生活での使用法等についての情報や理解が不足しているということです。
 これらの実情を鑑み、その解決に向けて、「現在の大量消費社会において伝統工芸品にはどのような価値があるのか」について発信していくことや、特に次世代の社会を作る若者に向けて、伝統工芸品に関する知識を広めていくことが必要になると考えています。

具体的なプロジェクト内容

 11月の22、23日に和紙を使った伝統工芸品の一閑張の家元・尾上瑞宝さんの工房での一閑張製作体験を初めとした様々な日本の伝統文化に触れ、日本の伝統文化を紐解く手助けをするツアーを京都にて実施する予定です。
 このツアーの開催を目標として、これまで「縁、紡ぐ。」チームは上記のコンセプトに基づき様々な活動を行ってきました。具体的には、尾上先生と親交のある茶道家の太城先生との伝統文化についての勉強会や、参加者向けの事前学習素材の作成などです。直近では、ツアーにてより有意義な経験をしていただくため、参加者を対象とした座談会を実施し、伝統文化をテーマに太城先生と意見交流をしました。
 こうした小さな経験の積み重ねが、将来の持続的な購買活動につながると信じて、私たちは活動を続けていきます。その機会ごとのご縁を大事にしながら、「伝統工芸品に興味がある」と口にだけ出すwannabeな状態から抜け出すお手伝いができれば、と願っております。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?