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B2C向けの銀行オペレーション業務を簡素化するクラウド型プラットフォームを提供。Salesforceが出資した業界注目のFinTech企業nCino(NCNO)が6月22日にNASDAQにてIPO申請。世界をリードするFinTech企業になり得るのか?


1. 会社概要

HQ:  アメリカ合衆国、ノースカロライナ州ウィルミントン
CEO: ピエール・ノーデ
現在は世界ににロンドン, メルボルン, ソルトレイクシティ, シドニー, さらに東京に拠点を持つ。

主な事業は単一のクラウドベースの銀行オペレーティングシステムを提供することであり、ローン申請や口座開設に至るまでプラットフォームを通じてエンド・トゥ・エンドでサービスできる。同企業はとりわけそのプラットフォームによってもたらされる効率性、透明性、収益性、および規制コンプライアンスの向上などを推している。nCinoは以上の特徴を含む6つの強みがある。

• 収益性: 融資契約の締結時間を短縮し、スタッフが顧客関係やその他収益拡大につながる業務に専念するのを手助けする。さらに、営業費用17%削減、収益の19%増大、顧客関係の強化などが期待できる。                            
効率化: 手間のかかるデータ入力をなくし、ペーパーレスを推進、またスタッフ同士やステークホルダー間の情報の明確化や連携強化に貢献する。                                 
安全性、健全性: 監視ツールやレポーティングツールを通じて初期段階で問題を感知、警告することでリスクの軽減に貢献し、また全事業部門での透明性を向上することで規制コンプライアンスを確保する。                            
デジタル・エンゲージメント: 単一のクラウド型業務プラットフォームを通じて、スタッフと顧客によるデジタル・エンゲージメントを実現する。いつでもどこでも、デバイスを問わずシステムにアクセスでき、全ユーザーに一体的なサービスを提供する。                                                                       
データアナリシス: 金融機関の勘定システムやその他のポイントシステムと連携することで、データの集中管理を実現、詳細なダッシュボードとレポートを作成。一目で分かるパイプライン分析を通じて、事業部門全体にまたがるデータインテリジェンスを提供する。これにより、業務の状態をリアルタイムで把握、管理できる。                                                                           
•** 統合性**:勘定システムや既存のシステムに影響を与えず、簡単に連携できる。複数のシステムを一つプラットフォームに統合し、各銀行の作業方法に見合ったソフトウェアインターフェースを提供する。

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ローン申請や口座開設など、顧客からスタッフ、第三者までが単一のプラットフォームで取引を行うためシンプルで混乱が起きづらい。(図上部) また、データインテリジェンス用いることによってリアルタイムで業務状況を把握、管理することが可能。(図下部)

                       (nCinoホームページ

2. ビジネスモデル

サブスク・ベースでのシステムアクセス販売から主な収益を得ており、売上の約70~75%を占める。また、一旦契約が履行されると3~5年はキャンセル不可となる。残りは追加オプションとしてのシステムの設定や、トレーニング、アドバイザリーサービスからの料金で収益を出している。


3. 資金調達額

2020年現在で主な資金提供者には資産運用会社のWellington Management Company、Insight Venture Partners、Salesforce Ventures、さらに2019年にはT. Rowe Priceが加わりその総資金額は2.13億ドルとなった。

4. 財務

nCino 財務

                                    (nCino s-1)


5. 競合他社

nCinoの競合すると思われるのは以下の企業である。TemenosAG, Finastra, Avaloq。

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• TemenosAG

TemenosAGはスイスのジュネーブに本部を置く、金融サービス向けソフトウェアシステムの開発、マーケティング、販売を行うFinTech企業であり、その事業は主にSOA型のプラットフォームをコーポレート・バンキングやリテール・バンキング、ユニバーサル・バンキング、プライベート・バンキングに提供すること。さらに決済システムの開発、リスクやコンプライアンス管理など多岐に及ぶ。同社曰く世界の上位50の銀行のうち41行がTemenosのサービスに加入しているとのこと。
また最近ではGoogle cloudと提携し、Google cloud上でTemenosのサービスを受けられるようになるプラットフォーム開発を進めている。

HQ: ジュネーブ、スイス
CEO:  マックス・チャード
総売上:  9.81億ドル(2019)
上場: 1993年SWXにて上場
時価総額: 約104.2憶ドル

• Finastra
イギリス、ロンドンに拠点を構えるFinastraは2012年にベンチャーキャピタルのVista Equity Partnersが金融ポートフォリオ作成を手掛けるMisysを買収し、その後2017年に多数の金融機関への融資プロセスを手助けするD + Hを買収し同年設立された。
主に一般的な商業融資からシンジケートローン等を含む多様な融資取引について、エンド・トゥ・エンドでオペレーション及びリスク等の一元的な管理をサポートするソフトウェア会社。
またnCinoのような様々なデバイスからアクセス可能な単一のデジタルバンキング・プラットフォームも提供している。
また今年に入り、資産管理をサポートするパーソナルファイナンスアプリであるHoneyfiと、AIを活用し消費パターンを分析した上で最適な消費行動を提案するFinGoalなど4つのテールバンキングアプリを追加するなど更なる顧客利用の拡大が期待できる。
HQ: ロンドン、イギリス 
現在トロント、ニューヨーク、シンガポール、ドバイ、フロリダにも拠点を持つ。
CEO: サイモン・パリス
総売上: 約19億ドル
上場: 非上場 

• Avaloq
Avaloqは銀行や資産運用向けのSaaS型のプラットフォームの提供を主な事業としている。特筆すべきは利用しやすいSaaSのほかに追加オプションとしてBPaas (Business Process as a Service)を導入することが出来、業務のほとんどを完全なオートメーション化することが出来る点だ。それによって全体の効率を高め、顧客関係の強化などに貢献できる。また、さらなる追加オプションでBankletsというAIによるアドバイザリー・サービスや自社のソーシャルメディアを統合、管理する新機能が付けられる。
HQ:  チューリッヒ、スイス
CEO:   ユルグ・フンジカー
総売上: 6.42憶ドル(2019)
上場: 非上場
総資金調達額: 3.53憶ドル

6. 市場環境

ロンドンに拠点を置くThe Business Research CompanyによるとFinTech市場は2018年までで1276憶ドルの価値があると言われており、2022年までに年24%の成長率で3100憶ドルまで成長という。

                       (PR Newwire)    

以下はAccenture Researchによる2018年までのCAGRであるがその伸びは右肩上がりである。

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                       (Accenture  Research

インターネットバンキングのリサーチをしているsalecycleの調べによると、インターネットバンキングの需要は年々増してきており、アメリカ国内でのインターネットバンキング使用者数は2014年から2018年までで64.5%~70%まで上がっている。

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7. 提携パートナー・業績

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