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なぜ法改正が必要なのか?

2021年4月1日 

選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会事務局

2020年10月、早稲田大学法学部・棚村政行研究室と選択的夫婦別姓・全国陳情アクションによる47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査(2020年10月、全国7000名、通称使用という回答枠を設けない調査)では、夫婦同姓・別姓選択制に賛成70.6%、反対14.4%でした。同年の新聞社等マスコミ調査でも、賛成は70~80%です(朝日新聞社69%西日本新聞社約80%日経新聞74%JNN72%TOKYOFM82.9%等)。全国の地方議会で選択的夫婦別姓制度の導入あるいは国会での議論を求める趣旨の意見書を可決した件数は、2018年15件、19年47件、20年60件、21年に入り3月末日に判明しているだけでもすでに17件と急増しています。

多くの国民が切実な思いで法改正を待つ中、2020年12月25日に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、「選択的夫婦別姓」の文言が削除され、「旧姓使用」の拡大の方針が示されました。世論の強い要望があり、また世界的なジェンダー平等の潮流に反しているにもかかわらず、夫婦のどちらかが改姓をしなければ婚姻できない現制度は非合理といえます。
法的行為、海外渡航、登記、投資、保険、納税、各種資格、特許、学会での論文発表などにおいて、法的根拠のない旧姓の通称使用は不可の場面が多く、企業実務の現場に使用許可を義務付けたとしても、2つ以上の氏名を使い分けることにより、以下のような混乱が生じます。

① 平均初婚年齢が30歳前後となっている現在では、男女とも婚姻前に個人としての信用・実績・資産を積んでいる場合が多い。そのため、改姓には煩雑かつ膨大な事務手続き、出費を強いられる。


② 産まれてからその名前で名乗り、周囲からも呼ばれ、社会的な信用・実績を築いてきた人が婚姻により改姓すると、個人的な信用やネットワークの一部が引き継がれず、不利益を被る場合がある。また社会的圧力から96%は女性が改姓しており、男女間で平等な状態にない。


③ 改姓すると同一人物とみなされず社会的信用・実績が断絶されるケースが見られる。特に戸籍姓の使用が必須となる研究者や特許保持者、人命に関わる医療職、公文書を扱う法律職などは自己同一性の証明に多大な手間が必要になる。それは国際的に活躍する人にはより顕著に表れる。旧姓と新姓の連続性を国際的に証明する手段は事実上存在しない。


④ 旧姓の通称使用を認める企業は内閣府2016年(平成28年)調べで半数以下。認める範囲も限定されており、各種免許証や健康保険証、登記簿、一部国家資格などでは旧姓の使用が認められていない。


⑤ 法的根拠のない旧姓と、戸籍姓との煩雑な使い分け、いわゆる二重氏使いは本人のみならず、人事・法務・経理・総務などにおける手間とコストの増大を招いている。内閣府2016年(平成28年)調べで常用雇用者の旧姓使用を認めていない理由をみると、「要望がないから」(61.0%)、「検討したことがないから」(53.6%)に次いで多いのは、 「人事関連の手続きが煩雑になるため」(24.7%)、「給与等の支払関連の社内手続きが煩雑になるため」(23.0%)である。

旧姓使用を認めていない理由


⑥ 改姓した側だけが、仕事先など必要のない範囲にまで婚姻状態を知らしめることになる旧姓の通称使用および旧姓併記は、プライバシーの侵害となり、苦痛を感じる人が少なくない。


⑦ 互いの姓の維持のための事実婚が増え、婚姻制度の形骸化が進んでいる。事実婚では正式な配偶者とみなされず、共同名義の不動産が持てない、パートナーの入院・手術・死亡時の手続きができない、生命保険の受取人になれないといった不利益が生じる可能性がある。さらに子どもの共同親権がない、財産を相続できない、配偶者控除や相続税非課税枠、配偶者ビザの対象外であるなど、法律婚に比べて圧倒的に保護が薄い、もしくは除外されている。企業としても独自にパートナーシップ制度などで対応しているが、本来名字を変えずに結婚できる制度があれば、企業が独自対応をする必要はない。


⑧ 子連れ再婚が増える中、同氏同戸籍の原則により、本人のみならず家族まで望まない改姓による苦痛を強いられる場合が多い。企業における扶養家族の手続きにおいても望まない改姓をする従業員とその家族の社会保険変更手続きなどに対応せざるを得ない。

「慣習」という名の社会的圧力により、改姓するのは96%が女性という圧倒的な不均等が続いている点について、国連女性差別撤廃委員会は日本政府に対し、2003年、2009年、2016年と繰り返し民法改正を勧告しています。
以上の観点から、キャリアや企業実務における負担、混乱をこれ以上広げないため、また、日本が真の意味でジェンダー平等の実現された多様性に富む社会に生まれ変わり、日本企業ひいては日本社会の国際的な信用性や競争力を高めるためにも、選択的夫婦別姓の導入は急務といえます。


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